傾斜地

傾斜地に立つと足首から頭の位置まで整えながら転ばないように真っ直ぐに立とうとするけど、間違いなく真っ直ぐではないのだが、所謂真っ直ぐに立とうとすれば、間違いなく転ぶだろう　こことそことでは定義が違うのだ　傾斜地で暮らす人々は見事に傾斜地に対応しており、平地に行けば僕よりも苦労するかもしれない　傾斜地では杖をついた老婆よりも僕は覚束ない　いつ転ぶのか、怖くて立つこと歩くことに精一杯で、転ばないことばかり考えているから、老婆に追い越される　僕が時々傾斜地を訪れるのは体の歪みと心の歪みを整えるためだ　平地で真っ直ぐ立とうとすればするほど何故か歪むから、傾斜地に立つと全てリセットされて、平地に戻ると何も考えなくても真っ直ぐに立てるのだ　老婆に聞いたら歪んだら直ぐに転ぶから傾斜地での歪みは命取りだと笑われた