僕の人形

文字数 360文字

怒りが
満ちて
怒りが
溢れて

壁に
穴が

怒りの捌け口で
始めたダンベルを
投げつけたのだ

意味のない
トレーニングは
やはり
意味がない

意味がない
と分かっていて
意味を探すから
怒りが逃げない


部屋の片隅で
僕に似た人形が
静かに笑う


痩せこけ
髪は伸び放題で
クマができている

僕は
人形に
ダンベルを
投げつける

見事に
的中し
鏡は割れた

やはり
トレーニングは
意味がないのだ

隆々の筋肉も
鏡に写せば
痩せこけた実相が
現れる


僕も
消えた僕の人形に
つられて
笑い始める

笑ったのは
何年ぶりだろうか


内鍵を
開けて
部屋を
出ると
父母が

二人の顔を
観たのは
何年ぶりだろう

父は
バットを
母は
包丁を
手にしている

 ごめん
 なさい

僕は
二人の前を
通り抜けて
風呂場に向かう

シャワーを
久しく浴びていない

階段を
降りながら
背後から
殴られても
刺されても
仕方ないと
思う


父母は
動かない


僕の人形が
全て
持って行ってくれた
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