第1話 ビターな過去

文字数 1,108文字

 何の不安もないはずなのに、

突然、心がざわめくことがある。

あの日もそうだった。何の変哲もない昼下がり。

私は、学校の中庭で、

その朝、コンビニで買ったおにぎりを食べていた。

ぼんやりと、どこまでも青い空を眺めていると、

心を持って行かれそうになった。

ドスン!

すぐ近くで、何かが、地面に落ちたみたいな物音が聞こえた。

「きゃああ!! 」

「わああ! 」

次の瞬間、悲鳴と絶叫が一色単に、

耳に飛び込んで来た。

私はおそるおそる声がした方向を見た。

すると、その場所には、

黒山の人だかりができていて

何が起きたのかわからなかった。

「何、ぼんやりしているの? 」

 背後から、誰かが背中をたたいた。

 ふり返ると、隣のクラスのジョシだった。

顔見知りだけど、1度も話したことがなかったため、

なぜ、声をかけられたのかわからず、

私が戸惑っていると、その子は、

私の腕をつかむと、

強引に現場まで連れて行った。

黒山の人だかりの向こうの光景を目にした途端、

私が、顔見知り程度のジョシに


強制連行された理由がわかった。

頭から血を流して地面に倒れていたのは、

クラスメイトのまなだった。

しかも、まなは、私の元親友だった。

元がつくのは、先日、あることが原因で、

友人関係を解消したからだ。

私は、まなとの友情を失うと同時に孤独になった。

まながいなければ、私には友人と呼べる人がおらず、

移動の時やお昼の時間は必然的に、

ひとりぼっちになる。

それでも、まなのことが許せなくて自分から離れたのだ。

「あれを見ても、何も感じないわけ? 」

 私を連れて来た隣のクラスのジョシが訊ねた。

「どういう意味? 」

 私は思わず訊き返した。

(まるで、まなが自殺したのが、

私のせいだと言われているみたいだ)

「あなたたち、前は仲良かったじゃん。

よく、つるんでいるところ見かけたけど‥‥ 」

 隣のクラスのジョシが言った。

「悪いけど、私‥‥ 」

 私はあとずさりすると言った。

 担架に乗せられて、

救急車へ運ばれて行くまなを横目で見ながら、

私は全力疾走した。

隣のクラスのジョシは追いかけて来なかった。

 あの日以来、学校でまなの姿を見なくなった。

あんなに、衝撃的なことが起きたにも関わらず、

誰も、まなのことを気にかけていなかった。

私は、まなの安否が気になりながらも

関わりたくないと思い黙認してしまった。

どうして、そんな冷たい仕打ちが

出来たのか今でも信じられない。

あの時、もっと、親身になっていれば良かった。

そうすれば、こうして、

苦々しく思い出すこともなかったのに‥‥ 。

まるで、「元親友を見捨てた」という

レッテルを貼られたみたいな気分で

中学校生活に幕を閉じて、私は逃げるように、

同じ中学校の人が少ない高校に進学した。

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