第2話 100番目の女

文字数 997文字

「どーぞ。」
四つに折られたメモ帳が渡された。
「探してくれたのか。」
「お前の100人目に相応しいと思うぞ。」
100人目に?それって……。
「金か?」
「ご名答。」
そいつは手で数字を作った。ん?
「おい、それ」
「月収だぜ。」
「嘘だろ!!」
月収でその金額。年収にしたら……。頭の中で計算機が動いた。やばいぞ。過去一の大物だ。
「しかも!」
そいつは身を乗り出して付け加えた。
「マッチングアプリに2日前に登録したんだ。」
「2日だと!?」
マッチングアプリに登録するっていう事は、出会いを探してるってことだ。登録して2日で誰かとマッチングするなんてこと、早々ない。ってことは、今は完全にフリー!!
「腕が鳴るぜ。」
「上手くやれよ。」
俺らは拳を付き合わせた。

『こんにちは。菊川さえです。突然連絡してすみません。あなたのことが気になり、メッセージを送ってしまいました。少しお話しませんか?』
こんな事ってあるか!?あっちから寄ってくるなんて!ここはスピード返信。最初は押すのが大事だ。
『こんにちは。竹下翔です。実は俺もあなたのこと気になってました。そんなことあるんですかね笑ぜひ話してみたいです。なんてお呼びしたらいいですか?』
『なんでも良いですよ。竹川さん。』
自分から連絡してきたくせに奥手だな。
「じゃあさえさん。俺のことは下の名前で呼んでくださいよ笑』
『そうですか。では翔さん。』
やべ!話題は絶対に止めるな!こういう時は情報戦!趣味は……。
『さえさんの趣味って読書なんですよね?俺も好きです。好きな作者さんとか居るんですか?』
『特にいません。本なら何でも読みますね。』
大丈夫だ。年収を思い浮かべたらやる気出る!!
『そうなんですか笑またおすすめの小説教えてください。』
それから俺は死ぬ程話題を振った。それからちょうどいいかなって時に、話題を変えた。
『あの、また「デート」しませんか?俺、さえさんのこともっと知りたいです。』
「あの」で恋愛慣れてない感を、「デート」に「」をつけることで強調、「知りたい」で一気に落とす。この短い文にも俺の戦略が含まれているのだ。
『良いですね。ぜひ私も会いたいです。』
落ちた!
『じゃあ行き先少し考えます。』
『私も考えますね。』
『では、また話しましょう。』
しかも、俺で終わらせられた!俺の恋愛観では、俺でいつも終わらせることで、自分から終わらせることに慣れず、会話を続けやすくなる、ということだ。
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登場人物紹介

菊川さえ

トールトのスパイ。竹下翔を殺すよう命令される。

完璧主義で、何でもできる。恋愛に興味が無い。

竹下翔

詐欺師。菊川さえを騙そうとする。

明るい性格で、誰とでも仲良くできる。

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