何故ウラシマ効果を知っていた?

文字数 647文字

 私の名は、浦島太郎左衛門頼々
(うらしまたろうざえもんよりより)と言う。
何とも長い名前だが。これは幼名と言って、矢鱈と先祖やら何やらかんやら、名前を付ける風習による。私の先祖はどうやら平家の落人で。
 今はその面影も無いが、こんな辺鄙な辺境の田舎の村で、漁師などを生業としている。

 だが、私の親父は凄い!
村でも有数の、鰹の一本釣りの名人だ。人から尊敬され、褒め称えられるその姿は、私にはとても眩しい。
 そんな私が朝から漁に出たが、まったくの不漁で。しょうがなく釣竿を片手に海岸をパトロールしていた時の話だ。

 パトロールとは名ばかりで、実際は浜辺に打ち上げられた魚や昆布を持ち帰って食べるのだ。
 親父が、お前も良い年だから独立しろと、
家を追い出され。一人暮らしをさせられているが、いつもカツカツだ。
 チクショー親父め!
本当のところ、俺がモテるからって、家を追い出しやがったな。
 そりゃそうだ、親父に言い寄る町娘も。
俺の様な、若くてハンサムで格好良くて細マッチョな、浅黒く焼けたナイスガイに目が行くのは仕方のない事だ。
 そんなんだから、お袋に三行半を突き付けられて、実家に帰られたりするのだ。
などと、ボヤキながら私は浜辺を歩いていた。
 すると、前方で何やら町の若い衆と子供が騒いでいる。私は、なんだなんだと近寄った。

「おい!どうした」

と輪の中に入ると。その真ん中には、座り込み項垂れる緑色の物体が。

「ひっ!何だこりゃキモ!」

と言ってしまった。
 そこには緑色の体をした、人形(ひとがた)の物がいたのだ。
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