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文字数 680文字

 どうやら生き物の様だ。
 知らん!こんな物は。ひょとしたら、深海に住む何やら分からん生物か?私の第一印象はそれだった。
 その生き物は、身体中スベスベで緑色で、
そして結構デカかった。所謂デブだ。
私は亀の中身?甲羅を落としたの?と思ってしまった。
 すると、その生き物は私を見て涙を流していた。いかん!私はそう言う目で見られると、
ズキューンと来るのだ。
よし!仕留めるぞと思った魚が、あの目をしたら、私は銛を刺すのを躊躇う程だ。
私は漁師には向かない農家に行こうか?
いや町に出て商いでもするか?
その方がシティーボーイの私には、似合っている気がする。

 すると、私の頭の中で声が聞こえた。
こいつ他心通の心得があるな?
私はその怪しい物体に見入った。
この亀もどきはこう言った。

 『お願いです、助けて下さい』

 なんと!女の声ではないか?
いや待て、こいつは物の怪間違いなく、私を惑わす気だな。とは思ったが、可哀想になり根が優しい私は。

「おいおい!村の衆。ここは私に任せてくれないかな。悪い様にはしないから」

と袖の中にあった、親父の家から盗んだ鰹節と乾燥ワカメを皆に差し出した。すると、

「良かろう。わしらとて、無益な殺生をする気はない」

と鰹節とワカメを受け取ると。村の衆は三々五々去って行った。残った亀もどきは、

「ありがとう御座います。なんとお礼を言ったら良いのか」

と頭を下げた。私は腕を掴んで立ち上がらせると(ヌメっとした)、

「何処のどなたかは知らぬが。あなたの世界へお帰りなさい。では、これにて」

と関わらぬ様に立ち去ろうとした。すると、

「浦島太郎左衛門頼々様」

と心の声で呼ばれた。
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