第9話 部活の終わり

文字数 1,102文字

3年生になっての1学期はとても早かった。3年生は受験の話を進めながら、でも、クラブもこれで最後だから、めいいっぱい頑張る。
運動部のふたりはそれぞれ総体を終え、もうすぐクラブを引退する。
原君は、クラブが始まる前にストレッチをしている時に、チョコの女子に話かけられた。
「原先輩!」
「お、宮野さん。」
「先輩、ちょっと聞いてもいいですか?」
「うん、なに?」
「原先輩は、小山さんと付き合ってるんですか?」
「いや、違うよ。」
冷静に答える原君。
「でも、図書室に行くのは、小山さんに会うためですよね。」
「うん。それは、正解です。」
またも、冷静な原君。
「私は、原先輩に振られてからも諦められなくて、もっと先輩の近くにいたくて、同じクラブに入部しました。でも、同じコートの中にいても、結局先輩とは、全然お近づきになれませんでした。」
「あ、えっと、そうだったんだ。ごめんね。基本的に女子は苦手だから。(なんか、ぐいぐいくるな。)」
「他の女子部員の先輩達とも、あまり話をしないですもんね。小山さんだけ、特別なんですね。」
「小学校の時から、小山さんだけなんだ。」
「私も原先輩だけです。でも、無理なんですよね~。」
「う、うん…。」
さすがに、冷静ではいられなくなってきたところに、皆集合!の合図。
なかなかに、原君を困らせる女子だった。

1学期も残り少ない、もうすぐ夏休みの水曜日の図書室で。
「引退する時、あの子に何か言われなかった?」
「うん、結局僕との距離は縮まらなかった、って、言ってたよ。」
「やっぱり、倫太郎君がいたから硬テに入ってたんだね。」
「…そうみたい。」
「断りかた、誠実だったもんね。倫太郎君らしくて。」
「皆、違うのかな?」
「断るにしても、チョコだけもらう人のほうが、多いんじゃない?」
「そうなのか。でも、答えられない気持ちのチョコは、貰えないから。」
「義理チョコは?」
「それは、貰う。」
「ハハハ。でも、次のバレンタインはあれだね。11日に入試で13日に発表だから。」
「ほんとだ。やれるだけやるしかないけど。」
「そうだね。」
「それと、小山さんは特別なんですね。って言われたから、そうです、って言っといた。」
「えっ?」
のりさんは、驚いて原君を見たけど、原君が、へへへ、と笑うので、一緒にハハハと笑っておいた。
ふたりは夏休みの間、それぞれの塾で集中して勉強し、一度も会わなかった。ラインはちょこちょこしてたけど。原君は、のりさんに学校以外で会ってしまうと、しばらくは、頭の中がのりさんだらけになってしまうことが経験済みだから我慢してた。チョコを渡しあった時も、ピアノの発表会に来てくれた時も、しばらく何も手に着かなかったから。

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