第2話 中学生になって

文字数 834文字

ふたりは中学生になった。同じ中学なのはいいけど、クラスは別々だ。原君は2組、あの子は1組。月に1度、体育館で全体集会がある。原君もあの子も背が低めなので、前から4番目同士。背の順に並んで隣になった。
「原君とクラス分かれちゃった。」
「うん、でも、小山さんは6年の時には全然泣かないようになったから、僕も安心だ。」
「いや、原君がいないから、自信ない。」
「えっ?どう言うこと?」
「泣きそうになったとき、原君を見るようにしてたら、だんだん泣かなくなってたの。でも、今のクラスに原君がいないから、ちょっと不安。」
(目が合うな。と思ってたのは、そういうときだったのか。)原君は、目が合ったときは、自分がずっと相手を見てるから、っていう話を思い出して、今さらながらちょっと恥ずかしかった。

原君は硬式テニス部に入った。運動場に出ると、あの子もジャージに着替えてボールを運んでる。あの子はやっぱりバレーボール部に入ってた。
目があったら、あの子が小さく手振ってくれた。原君も小さく手を上げる。ふたりの小さな合図になっていた。

全体集会で、
「原君、硬テに入ったんだね。吹奏楽とかは考えなかったの?」
「うん、迷ったけど、ピアノは習いに行ってるし。兄貴がテニスしてて、かっこ良くて。」
「えっ?原君、お兄さんがいるの?」
「兄貴がいるよ。」
「でも、名前、倫太郎だよね。」
「そう、兄貴は宗一郎。母親が好きなドラマの主人公が倫太郎で、どうしても子供につけたかったんだって。」
「へ~、そうなんだ。」
「おかけで同じ漢字だな。」
「うん、りんとのりだけど。私の周りでは原君だけ。」
女の子は、原君の好きな笑顔で言った。同じクラスになりたかったとしみじみ思う原君だった。

「原くん、ピアノ続けてるんだよね。いつか聴かせてよ。」
「もっと、上手になったらな。」
原君は、真面目にピアノに通い続けていて、ずいぶん上手になったけど、学校の友達に聞かせるのは恥ずかしかった。特に小山さんの前では、もっと上手に弾きたいと思っていた。
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