デート@映画館
文字数 1,890文字
「わぁー、色んな映画やってるんですね。どれも面白そうで迷っちゃいます」
ウキウキした様子で唯奈は言う。
場所は駅から近いとある映画館。この映画館は設備が充実してるとか、清潔感があって綺麗だとか、スクリーンが大きくて観やすいとか、そんな感じでネットでの評価が良かったから、とりあえずここを選んだ。
今は、チケット購入のために列に並んでいる最中だ。
「米谷さんが見てみたいなぁって思う映画とかないんですか?」
「そうだな……」
僕はチケットカウンターの上にあるモニターを見る。
どうだろう。最近、仕事が忙しすぎて全然映画を見に行く機会がないんだよな。正直、今何の映画が上映されてるかほとんど知らない。
上映中の映画の一覧を見てみると、彼女の言う通り、面白そうな映画が結構ある。どれを見ようか迷ってしまうのにも納得がいく。
返答に迷っている僕を見て彼女は少し恥ずかしそうに言う。
「あの……アニメ、興味あります?」
「アニメ?」
「はい、あれです」
そう言いながら指さしたのはライトノベル原作のアニメ映画だった。ポスターの下に書かれたあらすじを簡単にまとめるとこんな感じだ。
「高校に入学してからでずっとぼっちだった主人公は二年の春、担任教師にとある部活に入部させられた。その名も『恋愛相談部』。生徒の恋愛に関する相談を受ける部活だった。嫌々ながらも相談に来た生徒達の恋愛を成就させる主人公だったが、文化祭で最高難易度の相談が持ち掛けられる……」
アニメか……。大学生まではよく見たものだけど、社会人になってからは全然見なくなったなぁ。
それにしても何だこのアニメ。ポスターにメイド服を着た3人の女子高生のキャラが書かれている。作中にメイド喫茶に行くシーンでもあるのか? それにしても、ポスターにまでしなくていいだろ、これ。
「僕は別に大丈夫だけど……君は知っているのか? このアニメ?」
「はい! 実は私、この作品の大ファンなんです! 原作も何回も読み直してて! ほらこれ、このアニメのキャラクターのストラップです」
彼女はそう言って自分のショルダーバッグを突き出してくる。そこには、黒みがかったSDキャラのストラップがぶら下げられていた。
「ボロボロじゃないか。新しいの、買わないのか?」
「実はこれ、私がまだ小さかった頃にお父さんからもらったもので。すごく大切にしてるんです」
きっとたくさんの思い出が詰まっているんだろう。彼女の話し方からもそれが感じ取れる。
彼女にとってこの作品は他の作品とは違って、思い入れがあるんだろうな。
原作を全く知らないけど、彼女の意思を尊重して……
「じゃあ、この映画を見るか」
「はい!」
チケット売り場でチケットを購入した僕らは、今度は上映中に飲み食いするものを買うため、売店の列に並んでいた。
「何か食べたいものとかあるか?」
「そうですね……」
メニュー表を見ながら唯奈はうーんと唸る。
「ポップコーンのLサイズをお願いします。米谷さんはどうするんですか?」
「僕はドリンクだけでいいや」
「えー。ポップコーン、買わないんですか?」
「観終わったらもう昼だろ? 昼飯を食べることを考えるとポップコーンはちょっとな」
「そうですか……」
唯奈は少し残念そうにして言う。
まあ、別に良いか。僕には関係ないし。彼女が腹いっぱいで昼ご飯を食べられなくなったら、飯を抜けばいいだけだ。
「じゃあ、ポップコーンな。飲み物はどうする?」
「そうですね……オレンジジュースのLサイズで」
ジュースも沢山飲むのね……もう突っ込まないけど。
「わかった。一応確認取るぞ。ポップコーンL、オレンジジュースLでいいな?」
「はい、それでお願いします!」
元気のいいお返事ですこと……
「いやー、面白かったですねー!」
映画を見終わり、映画館からでた唯奈は言った。
実際、本当に面白かった。作品を見たことが無くても十分楽しめる内容になっていた。唯奈も大興奮。上映中にポップコーンをむしゃむしゃ頬張り、ジュースをがぶがぶ飲みながら、画面に夢中だった。
さてさて、映画が終わり、もう昼ごはんの時間だ。どこにしようか、まだ決まっていない。
「どこでご飯を食べたい、とかあるか?」
その問いに対し、唯奈はどや顔で答える。
「実は行ってみたいところがあったんですよねぇ」
行きましょう行きましょう、と言いながら唯奈は僕の手を取る。
どこで食べようとか決めてはいなかったから、別にどこでもいいけど。高級料理店以外なら。
ウキウキした様子で唯奈は言う。
場所は駅から近いとある映画館。この映画館は設備が充実してるとか、清潔感があって綺麗だとか、スクリーンが大きくて観やすいとか、そんな感じでネットでの評価が良かったから、とりあえずここを選んだ。
今は、チケット購入のために列に並んでいる最中だ。
「米谷さんが見てみたいなぁって思う映画とかないんですか?」
「そうだな……」
僕はチケットカウンターの上にあるモニターを見る。
どうだろう。最近、仕事が忙しすぎて全然映画を見に行く機会がないんだよな。正直、今何の映画が上映されてるかほとんど知らない。
上映中の映画の一覧を見てみると、彼女の言う通り、面白そうな映画が結構ある。どれを見ようか迷ってしまうのにも納得がいく。
返答に迷っている僕を見て彼女は少し恥ずかしそうに言う。
「あの……アニメ、興味あります?」
「アニメ?」
「はい、あれです」
そう言いながら指さしたのはライトノベル原作のアニメ映画だった。ポスターの下に書かれたあらすじを簡単にまとめるとこんな感じだ。
「高校に入学してからでずっとぼっちだった主人公は二年の春、担任教師にとある部活に入部させられた。その名も『恋愛相談部』。生徒の恋愛に関する相談を受ける部活だった。嫌々ながらも相談に来た生徒達の恋愛を成就させる主人公だったが、文化祭で最高難易度の相談が持ち掛けられる……」
アニメか……。大学生まではよく見たものだけど、社会人になってからは全然見なくなったなぁ。
それにしても何だこのアニメ。ポスターにメイド服を着た3人の女子高生のキャラが書かれている。作中にメイド喫茶に行くシーンでもあるのか? それにしても、ポスターにまでしなくていいだろ、これ。
「僕は別に大丈夫だけど……君は知っているのか? このアニメ?」
「はい! 実は私、この作品の大ファンなんです! 原作も何回も読み直してて! ほらこれ、このアニメのキャラクターのストラップです」
彼女はそう言って自分のショルダーバッグを突き出してくる。そこには、黒みがかったSDキャラのストラップがぶら下げられていた。
「ボロボロじゃないか。新しいの、買わないのか?」
「実はこれ、私がまだ小さかった頃にお父さんからもらったもので。すごく大切にしてるんです」
きっとたくさんの思い出が詰まっているんだろう。彼女の話し方からもそれが感じ取れる。
彼女にとってこの作品は他の作品とは違って、思い入れがあるんだろうな。
原作を全く知らないけど、彼女の意思を尊重して……
「じゃあ、この映画を見るか」
「はい!」
チケット売り場でチケットを購入した僕らは、今度は上映中に飲み食いするものを買うため、売店の列に並んでいた。
「何か食べたいものとかあるか?」
「そうですね……」
メニュー表を見ながら唯奈はうーんと唸る。
「ポップコーンのLサイズをお願いします。米谷さんはどうするんですか?」
「僕はドリンクだけでいいや」
「えー。ポップコーン、買わないんですか?」
「観終わったらもう昼だろ? 昼飯を食べることを考えるとポップコーンはちょっとな」
「そうですか……」
唯奈は少し残念そうにして言う。
まあ、別に良いか。僕には関係ないし。彼女が腹いっぱいで昼ご飯を食べられなくなったら、飯を抜けばいいだけだ。
「じゃあ、ポップコーンな。飲み物はどうする?」
「そうですね……オレンジジュースのLサイズで」
ジュースも沢山飲むのね……もう突っ込まないけど。
「わかった。一応確認取るぞ。ポップコーンL、オレンジジュースLでいいな?」
「はい、それでお願いします!」
元気のいいお返事ですこと……
「いやー、面白かったですねー!」
映画を見終わり、映画館からでた唯奈は言った。
実際、本当に面白かった。作品を見たことが無くても十分楽しめる内容になっていた。唯奈も大興奮。上映中にポップコーンをむしゃむしゃ頬張り、ジュースをがぶがぶ飲みながら、画面に夢中だった。
さてさて、映画が終わり、もう昼ごはんの時間だ。どこにしようか、まだ決まっていない。
「どこでご飯を食べたい、とかあるか?」
その問いに対し、唯奈はどや顔で答える。
「実は行ってみたいところがあったんですよねぇ」
行きましょう行きましょう、と言いながら唯奈は僕の手を取る。
どこで食べようとか決めてはいなかったから、別にどこでもいいけど。高級料理店以外なら。