後悔の味(2024.3.15)

文字数 322文字

久しぶりに
訪れた店は
消えていた

更地になって
跡形もなく

電話せずに
驚かせようと
思っていたら
輪をかけて
驚かされた夕暮れに
ひとり佇む

どうして
報せてくれなかったのか
と思ったけれど
足が遠退いたのは私なのだ

大将と女将さんは
どうしているのだろう

大切なものを
失くした後悔は
心の奥を抉る

人生で
はじめて
頬を抓ってみる

痛みを
感じない
ふりをする

夢だと
思いたいのだ

何も知らず
手土産を持って
出向いた私は
呆けている

 お客様の
 お掛けになった
 電話番号は
 使われておりません

最後の望みが
断ち切られて
頬に痛みを感じる

ここに
店があったことも
大将と女将さんがいたことも
自信がなくなる

来た道を
俯いて
戻る

すっかり
陽が沈み
暗くなってしまった

今頃は
ビールを飲み終え
冷酒を頼んでいたはずなのだが
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