第1話 殺し屋と不眠症

文字数 572文字

 ここ数日、レッドは十分に寝ることができない。毎晩寝床に『幽霊』が出て安眠を妨げるからだ。

 目の疲れかと目薬を差し、幻覚に惑わされてるのかと安定剤をもらったりするも、一向に改善されず、毎晩、毎晩、必ず出てくる。
 電気を消して布団に入る。暗闇に目が慣れてくると、淡い人影が立っているのに気づく。急いで電気を点けるとそこには誰もいない。しかし、また電気を消すとやはり誰かが立っている。
 今度は暗い状態で立ち上がる。すると消えはしないが、近くで見ても肝心の目鼻立ちはぼんやりしてる。思わずスマホで照らすもとたんに消えるし、撮影しても心霊写真は出てこない。
 実害があるかと言うと何もない。なのでそのまま寝てしまえばいいだが、どうしても気になってしまう。それはなにか不思議な力が働いているとかではなく、単にこいつは誰なのかが気になるのだ。

 殺し屋チームの一員であるレッドだが、心当たりがみつからない。

 『殺し』のターゲットは基本的にその筋の者たちで、こいつらは化けて出るようなタイプに思えない。枕元に立ってのぞき込むなんて遠回りな方法はとりそうになく、恨みを晴らすなら直ちに首に手をかけるだろう。
 じゃあ、この何もしない『幽霊』は誰なのか、こんな奴いたっけか、などと考え込むうちに頭がこんがらがってくる。

 そうするうちに夜は更けて、眠れぬ日々が続いてく。
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