高貴なる客人《まろうど》 ――日の面《おもて》

文字数 14,911文字



 初夏のまばゆい日がやや西へと傾き、山からは涼風が吹き下ろしてきていた。
 九十九折りの山道は、あるところは日に焼けて乾き、あるところは木々の陰になって、数日前の雨で出来た水たまりが光っている。
「ちっ、また水が跳ねた。もっと静かに歩けよ麻呂女(まろめ)
 私の馬の口を取って歩いていた来椋(こむく)が、馬を詰っている。
「馬にそんなことを言っても仕方がないでしょう」
 傍らを歩いている乳母(めのと)小染(こそめ)が呆れたように言った。
 来椋は、口を尖らせて小染を見上げる。
「だって袴に染みが出来るじゃないか。今夜は宴があるんだぞ」
「帰ってからお着替えなさいまし」
「館の女衆は宴の支度で手一杯で、おれの着替えのことなんかきっと忘れてるよ」
 小染はため息を吐き、私を見上げた。
告茱(つぐみ)さま、何か言ってさし上げてくださいまし」
 私は苦笑いしながら、年下の従弟に言葉をかけた。
「お前ももう十四なんでしょう。一人前の男ではないの。自分の衣のことぐらい自分でおやりなさい」
 言いながら、私は来椋の小さな背中を見、「とてもそうは見えないけれど」という言葉を飲みこんだ。
 十四ならもう妻をとってもいいような年ではあるが、幼い頃病がちだったせいなのか、まるで童児のような体格で、男たちの力仕事や狩りにつきあえないため、半年ほど前から、形だけの私の護衛役をさせられているのだ。
「そりゃあ告茱姉(つぐみねえ)には、宴なんて最初から関係ない話だろうけどね――せっかく王族の姫に生まれたのに、巫女(かんなぎ)だなんて、つまらない運命だね」
 来椋は意地悪そうに言う。
「別に――私は宴なんて興味はないから」
 それは本心だったのだが、来椋には強がりに聞こえたらしく、私を見上げてにやにやと笑った。私は生意気ざかりの従弟を、もう相手にせず口を閉ざす。
 そう――私は巫女だった。
 私の父は、この辺りの山々とその合間の狭い盆地を領地(たどころ)とする小豪族――「山の一族(やから)」と呼び習わされる氏族(うじびと)首長(かみ)だ。
 やまとの国を領有(うしは)大王(おおきみ)家に恭順し、年々の(みつき)を納めて、このわずかばかりの土地を許されている、小さな――取るに足らぬ鄙の民の長。
 私はその一の姫として生まれ、そのために幼い頃から巫女になるものとして、一族の男たちとは離して育てられた。首長の血縁の娘を一人、神々の妻に擬して巫女とするのは、何処の民でも普通に行う古いしきたりだった。
 だから、私は数え十七のこの年で、まだ夫を持たない。それどころか、年頃の男と近く話をしたことすらない。この道程(みちのり)の守り役に来椋が任ぜられたと聞いた時も最初は嫌だったのだが、実際に会ってみれば童児にしか見えず、少しほっとしたものだ。
「この『一の社』への道が一番嫌いだ。今日は本当なら『三の社』に参る日なのに――宴に間に合うかなあ」
 来椋は、まだぶつぶつと呟いている。
「大切な日だからこそ『一の社』に行かねばならないのですよ。早くしないと本当に日が暮れてしまいます」
「そんなことは分かってるよ。せめて同じ遠くても『二の社』ならなあ。あそこなら、待っている間も楽しいのに」
 山道は次第に傾斜を増していく。風が木立を通りぬけ、私の結髪からこぼれた後れ毛をなびかせる。
「今ごろ王子(みこ)さまは、どの辺りにおいでなんだろう」
 来椋がまた口を開く。本当によく喋る若者だった。しかし、叱るかと思いきや、小染は嬉しそうに返事をしている。
「さあ――蚕飼(こが)いをお見せするとは聞きましたけれどね」
「それから棚田の田植えと、鮎の追い込み漁だったっけ」
「もう館の方へ向かっておられるかもしれませんねえ――ねえ告茱さま、小鷹王子(おだかのみこ)ってどんな方なのでしょう。本当に『男も見とれるほどにお美しい』のでしょうか? 『神の(めぐ)()』とまで言われているとお聞きしましたわ」
 私が返事をする前に、来椋が笑い出した。
「そんなはずがないだろう。そんな男がいたら見てみたいよ。伯父上はこの頃大げさなんだよ」
「王子の御一行は、男ばかり二百人余りもおいでなんですってねえ」
 小染は、来椋の言葉などまるで聞いていないようだった。
「身の回りの世話と直接の警護にあたる舎人(とねり)、道程を守る兵士(つわもの)、荷運びの賎奴(やっこ)――兵士と賎奴の殆どは、館ではなく領民(べのたみ)たちの村に泊まるんだそうですね」
「ということは、館に入るのは近侍の舎人と残りの兵士で五十人ぐらいかなあ――おれ、そんなにたくさんの客人を見るのは初めてだ。館に入り切るんだろうか」
「そのために、敷地内に幾つも小屋を建てたのでございますよ」
 小染は、まるで自分の手柄でもあるように胸をはった。
「今日は雨など降らないでしょう。小屋に入り切らなくても、もうそれほど寒くもないのだし、篝火を幾つも焚けば庭でだって眠れましょう――王子とその身近な方々さえ館内に眠っていただければそれでいいのですよ。兵士たちは野宿に慣れているのでしょうし」
「今夜は宴だ。嬉しいなあ! どんな珍しい話が聞けるんだろう!」
 来椋と小染の奇妙に弾んだ声に、私は少しうんざりとした。
「王子はもう半年もの間、あちこちの豪族の領地を巡っておられて、ここが最後だというではないの。長い旅でお疲れでしょうし、こちらがいくら宴の支度をして歓迎しようと思っても、すぐお休みになってしまうかもしれないわよ」
 そう、我々の山は、実は首都(みやこ)とはさほど遠くはないのだ。北の湿地を越えた向こうはすぐに、大王家の直轄領(みやけ)だった。けれどその道程はなかなかに険しいため、年に幾度か、納税と交易の隊列が行き来する他は、首都との縁は薄い。
 例え旅の帰りに少し立ち寄るだけとはいえ、大王の王子の来訪に館中が浮き足立つのは仕方のないことではあるのだが。
「王子が、大王の密かな御命を帯びておられるっていうのは本当なのかな?」
 来椋は勝手に話し続ける。
「ただ見聞を広めたいというのは建前で、本当はあちこちの豪族たちが、大王に逆らう心がないか、税をごまかしていないか、分不相応な暮らしをしてはいないか調べて回っているって」
 その話は私も、小染や父の妻たちから嫌になるほど聞いた。男たちは毎晩のように館の広間に集まり、王子をお迎えする日のことを話し合っていたらしい。
 失礼にもならず、かと言って不相応な華美にも走らぬもてなしとはどんなものか。領地をご案内するとしたら何をどのようにお見せすればよいのか。領民たちにはどのように振る舞わせればよいのかと。
 一方の女たちは、宴の支度で大わらわだった。床を拭き草の円座を編み、川魚をさばいて塩に漬け込み。
「もしそうだとしても、私たちに出来ることは、ただ誠実であることだけだわ」
 私は呟いた。
「私たちは遙か昔からこの山で慎ましく生きてきた――大王家の祖先神(みおや)が高天原から天降(あも)りたまうその前から。私たちは税をごまかしたりしていないし、不相応な暮らしもしていないわ。そうでしょう? だから、繕わなければならないことなど何もないはずよ」
「それはそうかもしれないけどね」
 来椋は、いかにも訳知りのような口調で言った。
「小鷹王子っていうのは、大王の末王子(すえのみこ)で、大后(おおきさき)さまに溺愛されているという話だよ。その上、女に見まごうほどの美貌とくれば、とてつもなく傲慢でわがままな男かもしれないじゃないか。つまらないことで機嫌を損ねて、あることないこと大王に奏上されないとも限らないよ」
「そんなことがないようにと、告茱さまはこの幾月もの間、祈っておいでなのですよ」
 小染は急に厳しい声で言った。
 不吉な言葉を咎めたというより、憧れの王子を悪く言われたことに腹を立てたように聞こえて、私はまた苦笑する。
「そうよ――今日もこれから一の社に最後の祈りに行くのだから、お前も無駄口を叩いていないで歩いてちょうだいね」
「ふん、神々が祈りを聞いてくださればいいけれどね」
 来椋の声には嘲笑が混じっていた。それは私の胸をちくりと刺す。
 私は形ばかりの巫女なのだ。
 私の前の前の巫女――私の祖母は、祈りの時しばしば神懸かりとなって、不思議な言葉を吐いたという。
 二十年ばかりも前に、深刻な日照りを預言し、それを信じた当時の首長が溜め池を掘り、あらかじめ倉に雑穀を蓄えたために被害が最小限に済んだという話など、生まれてから何度聞かされたか分からない。
 けれど、私にはそんな力はないらしい。
 私は――三年前の秋の大嵐も、去年の流行病(はやりやまい)も、察することすら出来なかった。
『それが当たり前ですよ。祖母上(ばばうえ)さまが特別だったのです』
 小染はそう言って私をなぐさめた。父も、そのことで私を責めたりはしなかった。
『告茱さまがお気になさることではありませんよ』
 そうだろうか。そうなのかもしれない。
 それは――私には分からない。
「それでも――私は祈るしかないんだわ」
 私は誰にも聞こえないよう、口の中で呟いた。
 例え、神々にその声が届いていなかったとしても。
 私に出来ることはただ、祈ることだけなのだから。



 「一の社」の憑り代は、山頂近くにある灰色の巨岩(おおいわ)である。回りの木の枝を少し払い、岩の手前の地面を均してある他は自然のままにしてある。
 ここまで登るのは巫女である私だけだった。来椋と小染は、ここに続く急坂の下で、馬の麻呂女と一緒に待っている。
 縒り合わせた白い布の帯が巻き付けられた岩。その前に設えられた小さな木の祭壇の上に塩と米と日干しの川魚を捧げ、私はぴったりと平伏し、額を土につけて祈りの言葉を唱えた。
(母なる山の我らが祖先神よ、今日もまた、我らが何事もなく過ごせましたことを感謝いたします――――)
 風が周囲の木々を揺らして過ぎていく。 
(生まれ出でた新たな命と、黄泉に還った祖先(みおや)の魂に安らぎのあらんことを――――)
 唱えながら再び立ち、また座る。幾度も幾度も。
(雨が地を湿らせ、日が緑を育て、風が病を吹き散らし、我らの明日が平穏でありますように――――)
 神々の古き名と、わが父に連なる祖先の名を暗唱し終わって、私は静かに顔を上げ、息を整える。
 ここに登る途中で折採った常磐木の枝を、甕に入れて運び上げてきた酒に浸して、その雫を憑り代に振りかけた。
「天津神の末裔(すえ)たる大王の末王子(すえのみこ)小鷹尊(おだかのみこと)道程(みちのり)に神々の御恵みのあらんことを、山直(やまのあたい)八瓜(やつり)(むすめ)、告茱の名において、重ねてお祈り奉ります――――」
 私の打ち振る常磐木の枝から、酒の雫がきらきらと飛び散る。肩から斜めに掛けている赤い襷もそれに従って揺れた。
「――かしこみ、かしこみて申し上げまする――――」
 雫を振り切った枝を、恭しく額の前に押し頂き、憑り代の前に設えられた簡素な白木の台の上に捧げて置く。
 と、その時。
 やや後ろの右の方で、藪が動く音がした。
 木の枝を何かが踏みしめる音。
 私ははっとして振り返った。
「あっ――!」
 藪の中で、黄ばんだ牙がぎらりと光った。土に汚れた鼻面が飛び出す。
「――――!」
 それは、大きな(しし)だった。荒い鼻息を吹きながら私を睨みつけている。
「――や――!」
 その凶暴な目と向き合って、私は硬直した。
 どうすればいいか分からない。来椋を呼ぼうにも、声が――声が出ない!
「動くな!」
 突然後方から鋭い声が飛んだ。
(来椋!?
 猪は声の方に一瞬顔を向けた。と、その次の瞬間にはもう、太い矢が猪の肩に突き立っていた。猪は跳ね上がった。
 こちらに来る、と分かっても、私にはどうすることも出来なかった。猛り狂った猪が突っ込んでくる。あの牙に裂かれて殺される!
「何をしている!」
 誰かが突然、私の腰を抱え上げ、乱暴に放り投げた。たった今まで私が座っていた場所に、その人が躍り出た。
 ぎらり、と何かが光った。そして血飛沫。
 悲鳴をあげることすら出来ぬ間に、それは終わった。
 猪がどっと倒れた。その人は、まだ足をばたつかせる猪の傍らにしゃがみ込み、太刀でその喉を突いてとどめを刺した。
「あ――あ――」
 私は――ただ口を開けて、その後ろ姿を見た。
 来椋ではない。
 では――これは誰だ。
「大丈夫か?」
 男はゆっくりと立ち上がり、私を振り返った。
「あ――あなたは、あなたは――――」
 目の前にいるのは、私と同じ年頃の、見たこともない若者だった。
 切れ長の目、すらりと通った鼻筋、ほっそりとしたあご――息を呑むほど整った顔立ち。
 白絹の衣の襟は珍しい水色に染めてある。耳連に巻いたつやつやとした髪。
 体のあちこちがきらきらと光っている。風が吹くたび、彼が身動きするたびに。
「あ――――」
 私はうち続く驚きに言葉を失い、ただそこにへたり込んでいた。
「危なかったな。怪我はないか」
「は――はい」
 男は上衣の裾で太刀を無造作に拭くと腰の鞘に収めた。その太刀の柄も鞘も、金と銀の細かい細工で飾られている。肩に掛けた矢筒の皮帯の留め金も金色だ。
 見れば彼の髪束の下にも金の耳飾りが揺れている。胸には三連の珠が下がり、両腕には幾重もの腕輪。
 それらの全てが、彼の動きに従って日の光をはね返し、まるで彼自身が光っているかのようにきらめいているのだった。
「あ――あなたは――――」
「お前はさっき、おれの名を呼んだぞ」
 男は薄く笑いながら言った。その言葉付きも物言いも、まるで山の民とは異なっている。
「おれの名を唱え、道程の無事を祈っていたではないか」
小鷹(おだかの)――王子(みこ)――――!」
 私はやっと気を取り戻し。額を地面にこすりつけた。
 この方が――大王の末王子。
 大后が溺愛してやまぬと言う小鷹王子なのか。
『ねえ告茱さま、小鷹王子ってどんな方なのでしょう。本当に『男も見とれるほどにお美しい』のでしょうか?』
 私の頭の中に、ついさっきの小染の言葉が甦った。
『そんなはずがないだろう。そんな男がいたら見てみたいよ』
 来椋はそう言って笑ったけれども。
 違う。決して大げさではない――こんなに美しい人が本当にいるなんて。
「いかにも。おれが小鷹だ。お前は山直八瓜の姫だな――顔を上げろ。そんなにされていては話にならん」
 私はおそるおそる顔を上げた。
 また小染の言葉を思い出す。
『“神の愛し児”とまで言われているとお聞きしましたわ――――』
 王子は手を腰に当て面白そうに祈り場を見回すと、祭壇の上にある捧げ物に目を留めた。
「なるほど、こいつはあれを目当てにやってきたのだろうな。これまでもずっとここを餌場にしていたに違いない――出くわしたのは今日が初めてではないだろう?」
「い、いえ――は、初めてです」
 私は震える声で言った。
「確かに、捧げ物はよく荒らされていました……足跡も見かけましたが……」
「ふうん……これまでは運が良かったのか。いや、待てよ」
 小鷹王子は顎に手を当てて少し考えていた。
「お前、ここには毎日来るのか」
「い、いえ……普段は五日ごとに参ります」
「普段は?」
「は、はい。今日は特別な祈りの日で、前のお参りからは二日しか」
「そうか。こいつの方も、まさか今日お前がいるとは思ってもいなかったのだろうよ」
 私は改めて、その場に倒れている大きな猪を見た。目を見開き口からは泡を吹いているが、もう事切れていた。傷口からあふれた血が落ち葉と土に染みこんでいる。
 それを見て、急に私は恐ろしくなった。
「どうしよう……」
 私は呟いた。
「何がだ?」
「祈り場が血で(けが)れて……それに、こんな大きな猪……山の神のお使いだったのでは――――」
 口にしてからはっとした。これでは小鷹王子を非難しているようではないか。
 思わず王子を見上げると、案の定、むっとして唇を歪めている。
「助けてやったのに随分な言いぐさだな」
「あ――申し訳、申し訳ございません! でも、あの、ああ――――」
 私はもうどうしていいか分からなかった。
「王子、どうか、あの、お許しください。あの――――」
 王子は、地面に投げてあった弓を拾い上げて背に挿すと、大股に私に歩みよってきた。そして、いきなり乱暴に私の腕を捕らえた。
「ちょっと来い」
「きゃあっ!」
 突然体に触れられ、悲鳴をあげた私にまるで構うことなく、王子はぐいぐいとその手を引いて急な坂を下りていく。
「お、お待ちください、どうかお手を、お手をお離しに――――!」
 しかし王子は振り返ることもしなかった。すでに崩れていた私の結髪が、坂を転げるように下るうち、ばらばらとほどけて肩に落ちていく。
 坂の下は小さな広場になっている。そこに来椋と小染が怯えたように立っていた。小鷹王子に手を引かれて下りてきた私を見て、二人とも目を丸くしている。
 二人の傍らには私の馬の麻呂女と、そして、もう一頭、目を見張るほどに美しい馬がいた。混じりけなしの白馬である。馬具のあちこちに金がきらめき、鞍には錦の布が貼られていた。
「お、小鷹王子」
「告茱姉……」
 二人はやっとのことで声を出した。しかし王子は二人に目もくれず、私を引きずるようにして、その白馬の元へと歩みよっていく。
「お、王子、お離しください……」
 私の懇願を王子は聞き入れない。それどころか、私の体をぐいと引き寄せると、いきなり抱き上げて馬の背中へと押し上げる。
「きゃ――や、やめてください!」
「何だ、案外重いな。鄙の女はがっしりしている」
 王子は無遠慮にいい、あっというまに自分も馬にまたがった。私は彼の腕の中にすっぽりと収まってしまう。
「み――王子!!
 背中に触れそうになる王子の胸、手綱を取る手、すぐ後ろで聞こえる息づかい。
 私は――急に生々しい羞恥を感じ、足が震え始めた。
 若い男とこんなに身を寄せ合うのが初めてだということに、突然気が付いたのだ。
 普通の娘であるならば、十七にもなって未婚などあり得ない。初めての月のものを見れば、すでに大人とみなされて、男たちの妻問いを受けるようになるものだ。私と同じ年でもう幾たりも子を産んでいる女も珍しくない。
 だが――私は巫女なのだ。
 男と共寝したことはおろか、手を握りあったことさえないのである。
 王子は、さほど背は高くなかった。体つきもほっそりとしていたが、それは来椋のようにただ貧弱なのではない。
 岩場を跳ねていく若い鹿のような、熱っぽいしなやかな体。
「お願いです、下ろしてください!」
 体を縮こまらせ、悲鳴のように叫びながら、私は来椋と小染をすがる思いで見た。
 やっと我に返った小染が、慌てて駆け寄ってくる。
「お、お待ちください小鷹王子、告茱さまを何処へ――姫が何かいたしましたか!」
 王子はにやりと笑った。
「心配せずともよい。夜までには山の館へ戻る。姫はしばらくおれが借り受けた。お前たちは、祈り場の猪の霊鎮めを行った後、館へ戻るがいい」
「ええっ! 猪? 待って、待ってください王子!」
 叫ぶ小染にもう目もくれず、小鷹王子は白馬の腹を蹴り、手綱を翻した。



 馬は軽やかに山道を駆けぬけていく。
 だが私はただ恐ろしく、目を固く閉じて、馬のたてがみにしがみついていた。
「おい、そんなに掴んでやるな。白鳥(くぐい)が走りにくいではないか」
 白鳥とはこの馬の名前だろうか。
「それに、目をしっかり開けていないと振り落とされるぞ」
 私はおそるおそる目を開けた。王子の声には怒りの色はなく、むしろ笑いを含んでいた。
「お、小鷹王子――どうか、どうかお許しください――――」
 私は震える声で言った。一体何処に連れて行かれるのだろうか。
「いや、許さぬ」
 肩越しに振り返ると、王子はにやりと笑った。
「無礼を詫びる気があるなら、おれの案内(あない)をせよ」
「あ――案内?」
 私は意味が分からず聞きかえした。
「そうだ。この山の領地の案内だ」
「それは――父や、一族の男衆がもう――――」
 私が言いかけると、王子は舌打ちをして顔を歪めた。 
「あらかじめ見目良く整えたものばかり見せられてもつまらぬのだ。道は何処も奇妙に整地され、鮎漁の漁師も田の民も、染み一つない揃いの衣を着ておった。おれが見たいのはそんなものではない。そこで普通に生きている人々の普通の暮らしだ」
 そうだ。父たちはそうすると言っていた。小鷹王子に見目悪しきものをお見せすることは出来ぬ、と。それが王子の不興を買ったのか。
「ど、どうか、どうかお許しください――父は、父はただ良かれと思ってそうしただけのことなのです。けして、けして大王家に二心あってことではありません」
 私は必死に言った。しかし王子は逆にむっとしたようだった。
「誰もそんなことは言っておらぬわ。怒ってもおらぬ」
「え――でも」
 王子はため息を吐いた。
「ふん。お前も、おれが父王の密命を受けて、豪族の領地を偵察して回っていると思っているのだな」
「それは……」
「ばかばかしい。父王や大臣(おおおみ)どもがそうしたいなら、こんな目に立つことをするものか。誰にも知られず間諜を放つことなどあやつらには容易なことだというのに」
 それは――その通りかもしれなかった。
「おれは末王子で、(まつりごと)からは切り離されている――そうであるべきと父王も首都の豪族たちも思っているし、おれ自身も中央のどろどろした思惑に興味はない」
「それでは――どうして、王子はこんな旅をなさっているのですか」
 私は思わず尋ねていた。
「もう半年余りも鄙を巡っておられると聞きました。こんなところに、王子に喜んでいただける何があるというのでしょう」
「何もかもだ、告茱」
 告茱、と呼ばれて、私の胸が絞られるように痛んだ。
「おれは、ただいろいろなところを見たいだけなのだ。雲より高い山々や、外つ国まで続くという海原や、色鮮やかな鳥や、島のように大きいという勇魚を――何故それを誰も信じようとせぬのか――見よ」
 白馬の歩みが止まった。
 顔を上げると、左手の木立の切れ間から、我々山の一族の領地である狭い盆地が見渡せた。
 風が吹きすぎていく。陽は西の山の端に迫り、その光で、盆地の中を分けて流れていく大川が、銀色の帯のように見えた。
「美しいではないか」
 王子は愉快そうに言った。
「幾重にも重なった山々の色合いや、棚田の縞模様。初めて見るものだ」
「そう――ですね」
 私は改めて、その景色を見た。
 私にとっても、それは愛すべき景色だった。ここで生まれ、この道を通い、この地のために私は祈り続けてきた。私のふるさと。
 だが、それはごく平凡な鄙の光景でもあった。さっき王子が言ったような、雲より高い山も色鮮やかな鳥もここにはない。
 こんな当たり前の景色を美しいという人がいたなんて。
 私は思わず王子の顔を見上げた。彼はにっと笑った。
「さて、何処へ案内してくれる?」
「何処へ――って……で、でも、王子のお付きの方々はどうなさっているのですか。ご心配でお捜しになっているのでは――――」
「気にするな」
 王子は声を立てて笑った。
「奴らはもう慣れている。言っただろう。おれはいろいろなところが見たいのだ。首都にいては見られないものをな。何処でもいい、おれを連れて行け」
 私は困ってしまった。
「私は巫女として暮らして参りましたので、領内(ところうち)のことをよく知らないのです――知っているのは、館のうちと、五つの祈り場、そこへ行く道筋だけです」
「では、その祈り場とは、お前だけが知っている場所だということだな」
「え――そ、それはそうですが」
「だったらそこへ連れて行け。さっきのところ以外に、あと四つあるのだろう」
「祈り場に――ですか」
 私はうつむいて考え込み――ふと、往路(いきがけ)に来椋が呟いていたことを思い出した。
『せめて同じ遠くても『二の社』ならなあ。あそこなら、待っている間も楽しいのに』
 そうだ――あそこなら。
 もしかしたら王子もお気に召すかもしれない。
「それでは――北の外れにある『二の社』に」
 私が言うが早いか、王子は馬の腹を蹴った。
「北だな、よし」
 白馬は小さくいなないて、再び軽やかに走り出す。
 西日は木立に遮られ、まだらの飛沫となって道を彩っていた。
 馬の背で上下に揺さぶられるたび、王子の腕輪や首飾り、足結の鈴が、耳に心地よい音を響かせる。
 まるで雲の上を飛んでいるかのような心持ちだった。
 白馬は幾つかの分かれ道を、私が言う前に正しく選び取って、北へ北へと進んでいく。私は不思議に思い、王子に聞いた。
「どうして道が分かるのですか?」
「山の領地の絵図面なら頭に入っている」
「絵図面を――?」
「そうだ。おれは一度見ればすぐ覚えられる――だが絵図面にあった道しか分からぬぞ。祈り場はどんな場所だ。まさか街道沿いにはあるまい」
「は、はい」
 私たちは「一の社」のあった山を下り、北の湿地へと続く街道を進みかけていた。まだこの辺りは山道だが、もう少し行くと山裾が開けていき、領民たちの集落と田畑が見え始める。だがそこまで下ってはいけないのだった。
「今少し行きますと、右手に小径(こみち)が見えて参ります。そこへ入ってください」
「分かった」
 それはとても狭く、均されてもいない道である。やや山吹色が勝ちはじめた光の帯が幾重にも閃く杉木立の中を、白馬は私たちを乗せてゆっくりと登っていく。
 瀬音が聞こえ始める。何処で鳥が囀っている。
 曲がりくねる道には、次第に大きな黒い石が目立ち始める。見渡せば、木々の根に絡まれた地面も、土ではなく大小の黒い岩がちになっているのが分かる。
 そのごつごつした足下に、白馬が歩き悩み始めた。
「もう馬ではこれ以上無理です。この先に、いつも私たちが馬をつないでいる場所がありますので、そこからは歩いていただかなくてはなりません」
 私は少し不安になって王子を振り返った。だが彼はただ頷いただけだった。
 瀬音はいよいよ高まり始める。少し平らになっている馬止め場を過ぎると、道は下りに入った。黒いごつごつした石はますます多くなり、普通に歩くことも困難だ。
 もはや、それは道とは呼べないのかもしれない。ただ岩を抱き込んで盛りあがる木の根を伝い、急な斜面をようよう下りていくだけだ。五日ごとに訪れている私は、何処に足をかけて何処を掴めば下りやすいか知っているので、もうあまり苦ではないのだが。
「王子、お気を付けください」
 私は先に立っておりながら、王子を振り返った。
 王子は確かに足の置き場に悩んで、少し遅れてはいたが、それでも初めてにしては充分な速さで岩場を伝っていた。そして何より驚いたことは、彼の顔の楽しげなことだった。
 私は数瞬の間、その、笑いをこらえきれない童のような王子の顔に見とれてしまった。
 常磐木の森は深く、緑の濃い匂いと水の音が辺りを満たす。
 その下は小さな沢になっている。やはりごつごつした黒い岩があまた転がり、沢はその岩の間に美しい音を立て、ところどころで小さな滝を作りながら流れていた。
 私たちが下りてきた斜面伝いに少し歩いたところに、小さな洞窟が口を開けている。
 王子は、その身の丈の半分ほどの高さの入り口を腰を屈めてのぞきこんだ。
「ここが『二の社』か?」
「いいえ違います。この辺りにはそんな洞はいくらでもあるのです」
「ほう――いくらでも?」
「はい。とてもたくさん。幾つあるかは誰も知りません。来椋――先ほど私と一緒にいた若者ですが、彼などは暇々にここへ来て、その洞にもぐって遊んでいるようです。でも王子にお見せしたいのはそれではないのです――こちらへおいでください」
 岩の上を渡るようにして、私は沢の上流へと歩いた。王子もついてくる。
 沢の流れの音に混じって、やがて、静かな夜に降る雨のような音が聞こえ始める。
「王子――ご覧ください」
 私は平たい大きな岩の上に立って、それを指し示した。
「おお――これは」
 それは――ささやかな滝だった。
 滝壺と呼ぶには小さすぎるような水たまりが黒っぽい岩に囲まれている。大人が四、五人いれば手をつなぎあって囲めるほどの大きさだ。正面は、私の身の丈の二倍ほどある岩の壁になっていて、滝はそこから滝壺に注いでいる。
 しかし、その滝は、岩壁の上から落ちているのではない。
 その壁は一枚岩ではなく、よく見ると幾つもの岩が重なりあって出来ている。滝の水はその岩のあまたのすき間から、一本一本が指の太さほどの水流となって吹き出しているのだ。だから、その水音は雨のように聞こえるのだった。
「この滝は、あの沢の源です」
 私は小さな声で言った。王子は滝から目を逸らせないようだった。
「地面の下を流れていた水が、ここで初めて地上に出てくるのです。そして他の沢と次々と合流し、北の湿地へと流れていきます」
「ここが――『二の社』なのだな」
 王子は滝を見つめたまま言った。
「そうです。私はいつも、この岩の上で祈りを捧げます。ここは水の神の社なので、水を汚さないために肉や魚の捧げ物はいたしません」
「美しいところだ」
 王子は呟き、岩の上に腰を下ろした。私も少し離れたところに座った。
 滝壺は浅く、底の岩とその間に溜まった白い砂がはっきりと見える。砂は落ちてくる水と、下からわき出る流れに絶えず揺らめいていた。小さな魚がたくさん泳いでいる。
 西に低く落ちていったはずの日は、もうここまでは届かなかった。滝壺の上の木々の切れ間にのぞく空はまだ青かったが、日陰の水縁はもう肌寒い。
「何という涼やかな風だろう」
 王子は独り言のように呟いた。
「首都は、この時分ならもう寝苦しい夜さえあるというのに――さして離れてもおらぬのに、山を越えればいろいろなことが変わる」
 木々は揺れてざわめき、遠く近く鳥が鳴き交わしている。
 静かだった。
 私は王子の横顔を、改めてゆっくりと見た。
 じっと滝壺を見つめている、その美しい顔。長い睫毛。形の良い唇。
 この人は、本当に現世(うつしよ)の人なのだろうか。
 私は、本当はあの時猪の牙に倒れ、今はもう夢の中にいるのではないだろうか。
 彼は、常世の国を支配するという月の神で、私を永遠の闇へと誘おうとしているのかもしれない。
 ああ――でもそんなはずはない。
 私はさっき王子と共に馬に揺られていた時の温もりを思い出して、一人で頬を赤らめた。
「――どうした」
 王子が私を振り返った。私は慌てて顔を逸らす。きっと耳まで赤くなっている。胸が痛いほどに脈打ち始めた。
「美しいな」
 王子は言った。私は頷いた。
「は、はい。私の知っている限りでは、これほど美しい場所はございません」
「そうではない」
 王子はくすくすと笑った。
「おれは、お前を誉めたのだ」
「わ――私を――?」
 何を言われているのか一瞬分からなかった。が、やっと気が付いて、体全体がかあっと熱くなった。
「お、お戯れを――――」
「年は十七と聞いたが――おれと同じだな」
「は、はい――恐れ多いことです」
 王子は面白そうに、私に体ごと向き直った。
「本当はな、告茱。さっき、猪のいた社でお前に会ったのは、偶然ではないのだ」
 私は驚いて王子の顔を見た。
「おれは、お前に会いに――いや、お前を見に行ったのだ」
「わ、私を――?」
 意味が分からない。
 と――王子の、金の腕輪に飾られた手が伸びて、私の腕を掴んだ。
「きゃ……!」
 私はとっさにそれを振りほどこうとした。だが王子の力は強く、私はあっというまに抱きすくめられた。
「み――王子、や、やめてください」
 声にならない声を、王子はまるで聞いていないように、私の耳元で囁く。
 甘い香りが漂った。王子の絹の上着に焚きしめられた香だ。
「お前の父が言ったのだ。巫女である一の姫は、それゆえにまだ未婚である、よければ差し上げましょう、とな」
 頭の中が一瞬で真っ白になった。
「父が――――!?
 そんなはずは、そんなはずはない。
 私は一族の巫女だ。神々の妻なのだ。
 次の巫女の成人も待たず、代替わりの儀式もせずに、巫女を男に許すなどあり得ない。
 それは、神々への冒涜だ。
「おれは、巫女というものを間近に見たことがない。どんな娘かと興味が湧いたので、陰からこっそり見てやろうと思ったのだ――猪が出てきた時はさすがに驚いたが、あるいはそれも山の神の導きだったのかも知れぬな」
 王子の言葉が私の耳を通りぬけていく。
 その代わりに、父の声がありありと聞こえた気がした。
『神々への冒涜? そうとも言えまいよ』
 形ばかりの巫女。神の声を聞くことの出来ぬ巫女。
 そんなものは、いてもいなくても同じだ。
『神々もお怒りにはなるまい。王子は「神の愛し児」なのだから――次の巫女になるはずの真白(ましろ)も、もう十一、いくらもせずに成人するのだし』
「ああ――――」
 ふっと気が遠くなった。
 もう――何が何だか分からない。
「おれはお前が気に入った――おれと一緒に首都へ行かぬか」
 言いながら、王子は私の頬に唇を寄せた。息がかかった。
 硬い胸。髪から漂う椿の油の匂い。
 熱い。
 悔しい。
 恥ずかしい。
 恐ろしい。
 小鷹王子の手が、私の背中から腰へと動いた。私を抱き上げようとする。
「やめて……嫌っ!」
 私は、こみ上げてきた何かに耐えきれなかった。
 怖い!
 あっと思った時はもう遅かった。私は王子を突き飛ばし、振り払ってしまっていた。
 はっとして見ると、王子が頬を押さえている。
 やみくもに振り回した私の手が、王子の頬を撲ったのだ。
 最初は、何が起きたのか分からないかのように、ぽかんとしていた王子の顔が、みるみるうちに青ざめ、それから朱に染まった。
「お前――――!」
 私は、岩から転げ落ちるように逃げ出した。
「お許し、お許しください!」
 裳裾がもつれ、上手く走ることが出来ない。
 もう自分でも何が何だか分からなかった。どうしてこんなに恐ろしいのだ。私は何故逃げているのだ。
「待て!」
 王子の声がすぐ後ろでした。再び腕を掴まれる。
「何故逃げる!」
「やめて――離して、離してください! どうか――――」
 その時だった。
「王子」
 不意に低い声が降った。王子は驚いたように顔を上げた。私も振り返る。
 少し離れた岩の上に、大きな黒い影が立っていた。
「熊名――――」
「王子。お捜し申し上げた」
 熊名と呼ばれたその影は特に恐縮した風もなく、岩を軽々と飛びながら私たちに近づいてきた。二十代の半ばに見えるたくましい大男だ。その顔は穏やかで、男らしく整っていたが、左目が大きな傷でつぶれている。
 熊名は、なだめるように言った。
「王子。姫は嫌がっておられる。いかに父君の許しがあったとて、嫌がる女を無理に手込めにするのは、王子の名誉にも傷が付くことだ」
「偉そうなことを言うな!」
 王子は叫んだが、勢いがない。熊名は今度は私を見た。
「姫、姫のお迎えも来ておいでだ。乳母どのとお守りの若者だ」
「え……小染と来椋が」
 私は困惑した。どうすればいいのか分からなかった。
 王子は一瞬熊名と私を見比べたが、やがて舌打ちとともに私の体を突き放した。
「え……あの……」
「勝手にするがいい」
 王子はもう私の顔を見なかった。そのまま振り返りもせず岩を跳ねていく。
 私はおろおろしながら熊名を見上げた。熊名は小さく頷いた。
「後のことは心配なさらずともよい。けして悪いようにはせぬ」
 熊名は淡々と、けれども信頼出来そうな低い声で言った。
「さあ行こう。お一人でお歩きになれるか」
「は――はい――――」
 もう小鷹王子の姿は見えなかった。遠くから私を呼ぶ小染の声が聞こえてきた。
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登場人物紹介

小鷹王子(おだかのみこ)

やまとの大王の末王子。17歳(数え年)。美貌で素直な性格で、誰からも愛されるが、政治には興味がなく、自分の気の向くままに暮らしている。

告茱姫(つぐみのひめ)

首都の南に小さな領地を持つ豪族の娘。17歳(数え年)。幼いころから巫女として育てられたので、世の中のことをなにもしらない。

雄隼王子(おばやのみこ)

大王の長子。小鷹とは同母兄弟。25歳(数え年)。誰からも尊重される立派な日継王子(皇太子)だったが、なぜか小鷹に異様な嫉妬心を燃やす。

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