蝕まれたる月
文字数 726文字
教えてくれ、誰か。
何百回、何千回、何万回と繰り返した問い。
俺は、勝ったのか。
誰か教えてくれ、俺は負けたのだろうか。
分からぬ。何故こんなことになってしまったのか。
これが本当に、俺が望んだことだったのか。
俺は、その真っ白な髑髏を胸に抱え込み、眼窩の縁へ指をすべらせる。
全ての歯が欠けることなく揃っている。顎の付け根も擦り減ってはいない。ごくごく若い時に死んだ者の白骨。
枕上の燈台に揺れる細い炎だけが、俺を照らしていた。
もはや抗うこともなく、ただ俺の胸に抱かれたままの白い骨。
そのなめらかな額に唇を押し当てる。
どんなに悔いても、涙をこぼしても、もうお前は蘇りはしない。
俺は――お前の死の上に、俺の治世を築かねばならぬ。
お前を愛していたのか、憎んでいたのか、それすらももう俺には分からぬ。
この世はもはや色を失い、ただ薄闇に煙るばかりだ。
それでも俺は生き続けねばならぬ。
お前は、今どこを駆けているのか。
今もなお、明るく笑っているのだろうか。
お前が夢見た、海の彼方の見知らぬ国へ、もう旅立ってしまったのか。
魂さえ、俺の傍らにはとどまってはくれぬのか。
教えてくれ、誰か。
俺は、どうすればよかったのだ。
どこからやり直せばよいのだ。
誰か教えてくれ。償う術を。
俺の涙が、白骨の額を濡らす。
遠くお前の笑う声が聞こえる。
俺は闇に沈みながら、お前の名を呼び続ける。
笑っているか。今もお前は笑っているのか。
あのよく通る声で、くったくもなく。
教えてくれ、誰か。
俺は、どうすればよかったのだ。
誰か教えてくれ。あれの魂の行方を――――