無意味な意地

文字数 1,653文字

電話の着信音が鳴る。












画面に 「和幸 」 の文字











亜希 「.......」












ここ半年の間、ずっと 10日間に1度くらいのペースで 和幸から電話がなる






ラインも来てるが、亜希は開いていないし、読んでいない





未読は 50件を超えた






電話の着信音が止まった















亜希は、半年前起きた 黒髪の女との出来事に ショックを受け それ以来 全て忘れて、仕事に没頭していた


亜希の仕事は、旅行会社のカウンター業務。
チケットの発券や 宿泊の予約のとり方など、専門の入力方法を先輩方から学んで、やっとお客様を待たせず、明るい接客できるようになってきたところだ。


新幹線のチケットをとるのに、指定席ではなく自由席で取ってしまったり、発車時刻の違う電車のチケットを取ってしまったり 宿泊先の予約も、早割りや特典などがついているのに、付けずに予約してしまったり、、 先輩に注意され、仕事帰りは 落ち込んで 家に帰ると泣いて過ごした日もよくあった。それでも、今の私に頑張れることはこれしかないと思って、仕事に集中した。




旅行会社の面接の時、ツアーコンダクターか英語を使って何か仕事をしたいと自分の出願理由を述べて、面接に通過した時はとても嬉しく、しかし業務に入ってみると、実際は 英語はほとんど使わないカウンター業務だった。それでも、海外や旅行好きな亜希にとって、魅力的な観光地の写真が載っているパンフレットをカウンターデスクに広げ、お客様とお話して、旅の準備のお手伝いをして お客様が喜ぶ顔を見ると、この会社に入ってよかったと感じていた。



一日 仕事が終わり、今日は亜紀は小さなミスを連発してしまい、落ち込んで、いまにも涙が出そうな 疲れた表情で、とぼとぼと 家路に向かっていた



亜希 (今日は失敗しちゃったけど、、毎日頑張ってるよ、私。落ち込まないで私。次は同じ失敗をしないように 気をつければ良い。 あんちょこノートに、今日の失敗を書いておこう。もう同じ事を繰り返さない様に 忘れない様に 時々そのノートを見返そう。そうしていれば 私だって 先輩達みたく きっと上手になってくるわ。神様も上から見ていてくれていて、いつかきっと私にご褒美をくれるわ)






「そうだよ、大丈夫だよ よくやってるよ 」って、
誰かに寄り添って欲しくて、だけど 誰もいなくって 、、
和幸の優しい笑った顔が、頭の中に 浮かんできてしまった..
目からこぼれる汗を、 亜紀は 他の通行人達に見られないように ハンドタオルでそっと拭った。








亜希が会社から歩いて、最寄り駅に着くと、








電話がなる








携帯の画面に「和幸」の文字







亜希は 電話に出てみた







和幸「もしもし、亜希ちゃん?」







懐かしい声
ほっとする声


もっと声が聞きたい
いますぐにでも しゃべりたい







亜希「..................」







和幸「亜希ちゃん?亜希ちゃん? 聞こえてる? ねぇ どうして 急に連絡してくれなくなっちゃったの.....電話をしてもずっと出ないし。何か亜希ちゃんにあったんじゃないかって...ずっと心配しているよ」




亜希(和幸さん、こんなにしゃべる人じゃないのに、、違う人が話してるみたいに聞こえる)







亜希「..................」






何を押しのけても、喋りたいはずなのに、
仕事の話もいっぱい、いっぱい、聞いて欲しいのに、
声が出ない。












長い沈黙が続く。










亜希は ずっと我慢していた心の線が プツッと切れて、和幸とすごく話したくて 今にも声が出そうだったが、




「意地」



というものが邪魔をして、



話すことはなかった。





玲が脳裏に浮かんだ
(、、あの黒髪の、、なんだっけ、、 玲とかって言う、、 またあの日のこと思い出したら、
やっぱりまだ普通になんて話せない




許せない気持ちがでてきた。





私ばかり浮かれてて、バカみたいだった。

彼女がいるならいると言って欲しかった。

嘘はついていないけど、真実を隠してることは、

嘘と同じではないか。)






_______________


亜希は 電話を切った ──────









それから 和幸から 連絡は全くこなくなった。



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