刻むべき時

文字数 8,001文字

「では、今回の学年レクのルールと、今日みんなで作っていく事項について説明します」
学級委員の清瀬くん主導のもと、二組のみんなにレクリエーションの説明を学活の時間で行っている。
最初の会議が4月7日にあって、そこから一か月がすぎた。今日は5月4日月曜日。
清瀬くん、同じく学級委員の中崎さんとうちのクラスの業務委員、私と浜村くんが前にたって説明をしていた。
「まず、みんなにプリントを配ります。ルールは結構複雑なので、このプリントを見ながら説明を聞いてください。適宜メモをとってくれるとなお良いです」
中崎さんと私とでプリントを前の席の人に配り、後ろに回してもらう。列の人の分プリントを数えて渡すので、数え間違えないよう気をつける。
「はーい。プリント足りなーい」
後ろの列の山田くんがぶっきらぼうに言う。私はしまった!と思ったが、よく考えるとそっちは中崎さんが配った列だ。
「あ、ごめんごめーん」
中崎さんは几帳面というタイプではないようだ。私が気にしすぎかも。
プリントに書かれた内容を黒板に写しながら、説明が展開されていく。黒板の浜村くんの文字は意外と綺麗だった。浜村くんが次のようなことを書いていく。

競技名 クラス対抗サバイバル

ルール 
・移動可能範囲
校舎内を除く学校の敷地内全体。武道館裏の竹やぶや中庭も可能。
・ポイント制
クラスごとに幾つかの獲得方法を駆使してポイントを得て競う。
(獲得方法は多数あるので、順番に記していく)

ポイント獲得方法
・命綱
各自が細長いタオルをズボンの腰裏にはさみ、これを他クラスと奪い合う。
奪ったタオルは腰裏に追加で挟む。タオルが一枚も無くなっても相手のタオルを奪っていい。
一つのタオルにつき5ポイントがクラスに入る。

浜村くんが書きながら、清瀬くんが適宜説明をしていく。
「要するに尻尾鬼ってことだね。やったことがある人も多いと思います。ここまで何か質問ある人ー?」
すると、杉田が手を上げた。
珍しいことだった。杉田は滅多に目立つ事はしない。
「はい、杉田くん」
「自分が得た尻尾は必ず腰裏に挟まなきゃダメか?どこかに隠しておくとかはやっぱなしかな」
それはダメだ。ルール上、腰裏に挟むと明記されている以上、それ以外のことをしたら不正になる。
「それはなしだね。必ず腰裏に挟んでほしい」
「分かった」
杉田にしては的を得ない質問だった。だが、質問をしやすい空気を作る事はできた。杉田の狙いはそこにあるかもしれない。……いや、考えすぎか。
「他に質問が無ければ続けます」
清瀬くんは続けた。浜村くんは次のようなことを書き続けていた。

ポイント獲得方法
・拠点の破壊・防衛
各クラスに一つずつ、自立する棒を与える。他クラスの棒を倒せば80ポイントを得、自分のクラスの棒を倒されれば80ポイントを失う。最後まで自クラスの棒が立っていれば80ポイントを得る。なお、異なる複数クラスの生徒が協力して棒を倒した場合、そのクラスの数と反比例した得点を得る。例えば、二クラスの生徒が同時に倒した場合は2分の1の40ポイントをそれぞれのクラスが得る。なお、倒されたクラスのポイントが80減るのは変わらない。

「これも要するに棒倒しだね。問題なのは次かな」
清瀬くんが目配せして、浜村くんは更に書き進める。

・拠点の位置
はじめ、拠点はそれぞれ指定した位置に存在する。位置の発表は当日になるまで行わない。当日は各クラスごと拠点の位置に集合してから競技を開始する。ただし、拠点の位置は他クラスと充分に離して設定するため懸念は不要。

・拠点の移動
拠点は倒されにくい場所や見つかりにくい場所に移動させることができる。ただし、移動に同伴できるのは三名以下、その中に必ずリーダーを同伴させること。移動中の棒を倒すことはできない。

「しつもーん。リーダーってなに?」
後ろから二列目に座った男子が質問する。たしか加藤くんだ。
「これから説明するよ。浜村が書いていきます。プリントにも書いてあるので良ければ見て欲しい」
「あ。書いてあるのね。読みまーす」
清瀬くんとのやりとりのお陰で、他の生徒たちも熱心にプリントに目を通し始めた。

・リーダーについて
各クラス一人、リーダーを決めてもらう。リーダーは他クラスの作ったミッション(後述・ミッションを参照)を遂行する際や先述の通り拠点を移動する際などに活動してもらう。ただし、当日他クラスのミッションが発表されゲームが開始する直前までにリーダーを申告すれば良い。また、正当な理由なしに途中でリーダーを変えることはできない。

ポイント獲得方法
・リーダーの詮索
他クラスの誰がリーダーなのかを当てる事で100ポイントを得る。複数クラスのリーダーを当てれば数に比例して得るポイントも増える。リーダーが誰かはゲームが全て終了した時点で運営に報告できる。しなくとも良い。ただし、外した場合はマイナス100ポイントとなる。また、自クラスのリーダーが当てられてもマイナス100ポイントとなる。複数クラスに当てられた場合、数に比例して失点も増える。

「ここまではどうかな」
「質問いいか」
松本万太郎くんが手を挙げる。印象の強い名前なので覚えていた。
「どうぞ」
「リーダーが拠点の移動に必ず同伴するのは分かったけど、それだけでリーダーは当てられないだろ?最大3人で拠点を動かせるなら、毎回同じメンツで動かしときゃいいし」
「その疑問は当然だね。だからこそ、これからみんなで考えるミッションが大事になってくるんだ」
「それはなんとなく噂で聞いてるんだ。他クラスに挑ませるミッションを作るんだよな?それがどう関係するんだ?」
「他クラスのリーダーがあぶりだせるミッションを作るってことだろ」
またもや珍しいことが起こった。杉田が全体の会話に割って入ったのだ。
「その通りだよ杉田くん。よく分かったね」
「このプリントにざっと目を通せばある程度はな」
「浜村。続けてくれ。」
清瀬くんが指示する。浜村くんは書き続けた。

ポイント獲得方法
・ミッション攻略
各クラス3つずつミッションを作成し、他クラスの作った合計9つのミッションに挑む。どのミッションにいくつ挑戦するかは自由だ。ミッション一つにつき10ポイント。最大90ポイント得られる。

「さて、このミッションを決めるのが一番大変なんだ。まずは実行委員が例として作った次のミッションを見てほしい」
清瀬くんはプリントの裏を見るようにジェスチャーで伝えながら、例を紹介する。
プリントの裏には次のような内容が書かれている。業務委員の、主に私が書いた文面だ。

ミッションの例
・クラス全員で大縄跳びを連続15回跳ぶ。ただし、二人の縄の回し手のうち一人はリーダーが担うこと。

・クラス代表者3人がフラフープを30秒間腰でまわす。ただし、3人のうち一人はリーダーを含めること。

・2回、一人をクラス全員で胴上げする。ただし2回のうち1回はリーダーを胴上げすること。

この文面に目を通して、生徒たちはどんなミッションを作ればいいか自然と考え始めたのだろう。その考えを共有したいのか、段々と教室がざわざわとした空気に包まれていった。
この空気を有効活用するのが得策だ。清瀬くんもそう思ったのか、口を開く。一度静かにして、考えの方針を示すのだろう。
「みんな一度静かになってくれるかな」
しかし、このクラスはけじめがつかないのが始業式の日に分かっている。すぐに静かにはならなかった。私がため息をついた、次の瞬間だった。
「はーい。お喋りやめてー。おーい」
よく通る声だった。中崎さんはやや高めの声をよく使い分ける。こういうザワザワした環境でどういう声が一番通るか、理解しているようだった。
中崎さんの声のおかげで、教室に再び静寂が訪れた。
「中崎さん、ありがとう」
清瀬くんはそう言って、続けた。
「この例を見ると分かると思うんだけど、さっき杉田くんが言ってくれたように、他クラスがそのミッションに挑むことで、リーダーを特定出来るようなヒントを得られるのが理想なんだ」
すると、中崎さんが清瀬くんの方を向いて口を開いた。
「発言いい?」
「どうぞ」
「みんなにこれからミッションを考えてもらうわけだけど、考えるにあたってどういう点に気をつけるといいか、まずは全体で意見を求めたいの」
それに同調して、清瀬くんが続けた。
「──といってもいきなりだとアレだから、まずは実行委員で考えたポイントを紹介するね。でも多分もっと気をつけるべき点はあるだろうから、気付いたら躊躇わず発言して欲しい」
そう言うと、清瀬くんは私に視線を向けてきた。そう、このポイントは大半は私が考えたものなのだ。従って、私が発表するのがいいということになった。私はこういうのが苦手なのだが、勇気を振り絞って説明を始めた。
「まずは難易度と選ばれ易さの話かな。他クラスも全てのミッションに挑戦出来るわけじゃない。ある程度絞って、ポイントが取れそうなミッションを選ぶ筈だよ。」
そして私は、黒板の方を向いて次のような内容を書いていった。
「そこで、私たちが差を離された時に何ポイント必要で、いくつミッションをクリアしなきゃならないか考えてみた」

2クラス間のシミュレーション
二組
・命綱
→クラス内で平均して始めから20%少なくなると仮定:5×40×0.8
=160ポイント
・拠点
→倒しもせず倒されもしなかった場合
=80ポイント
計240ポイント

敵対xクラス
・命綱
→クラス内で平均して始めから20%増えると仮定:5×40×1.2
=240ポイント
・拠点
→倒しもせず倒されもしなかった場合
=80ポイント
計320ポイント

二組とxクラスの差:80ポイント

「ここまではいいかな。どんなに尻尾鬼の差が開いたとしても、この程度で済むと思うの。拠点は守れる前提で行くよ。すると……」

ミッションにおける最大獲得ポイント
=90ポイント

二組
最大240+90=330

xクラスが勝つために必要なポイントa
a>330-320=10
つまりxクラスは最低2つのミッションで二組に勝つ。

「私たちが簡単なミッションを2つ用意すれば、確実にxクラスはそれに挑んで、勝ちに来ると思わない?」
しかし、ここまで来て大事な事に言及されていないのを、気付いているか。
そう。リーダーを当てればこちらは100ポイントを得る。当てられたxクラスは100ポイントを失うだろう。
それに気付いていない男子が声を上げる。
「これじゃ勝てっこないじゃん。拠点を倒すか、もっと尻尾鬼を頑張らないとー!」
そう言って落ち込む。確か相良くん。
「大丈夫だよ。これは狙ってこういう状況を作ったの」
「ええ?どゆこと?」
「最後のルールを思い出して。xクラスのリーダーをこちらが当てれば、二組は100ポイントを得る。xクラスは100ポイントを失うよね。つまり200ポイント差が生まれる。xクラスが9つのミッションをクリアして90ポイント得たとしても、リーダーさえ当ててしまえば……」
私は書き進める。

xクラス
9つのミッションをクリア(+90)
+リーダーを当てられる(-100)
320+90-100
=310ポイント

二組
一つもミッションをクリアしない(0)
+リーダーを当てる(+100)
240+100
=340ポイント

「ね?勝てるでしょ?」
「おおー!すげえ!!」
「つまりね、いかにリーダーを当てるかがこのゲームの要点になってくるの。だからそのためには、相手クラスのリーダーをしっかりあぶりだせて、かつ、簡単で選ばれ易いミッションを作る必要がある」
「なるほどお」
ここまでは順調に話を運べた。私は小さく胸を撫で下ろす。
「次はリーダーを特定するためのポイントかな」
私はそう言うと、プリントの裏を再度見てもらうよう手振りで伝える。
「そもそもリーダーは、拠点を運ぶ時に必ず同伴する、ってのが決まってるだけなんだよね。だから、どんな人がリーダーとして選ばれやすいかは、はっきり言って掴めない。強いて言うなら……」
私はそう言いながら書き進める。

・拠点の移動のタイミングを見計らえるリーダーシップと判断力を持つ

・言動などでバレないよう気をつけられる

・目立たない

「このぐらいかな。このリーダーをどう炙り出すかだけどね。ミッションを遂行する上でリーダーに必要になってくる能力を、対極的に設定しておくのがポイントだと思う」
これだけ言っても何のことか分からないだろう。みなキョトンとしている。私は焦らないように、言葉を足していった。
「例えば実行委員で例として出したミッションだけど、例の一つ目は大縄の回し手のうち一人がリーダーってことになるよね。回し手はある程度背が高くて、長い縄を勢いよく回せる力を持っていないとできない。このミッションが当日にあったとして、もしそれに挑むならリーダーは背が高く力強い生徒を選ぶことになる」
そこで私は、先生に無理を言って頼み教えてもらった2学年の背の高い生徒を黒板に記した。

181cm 4組 百田春道

179cm 4組 橋川真二郎

176cm 1組 石田夢座季

174.5cm 2組 杉田仁

174cm 3組 児玉頼徒

書き終えると、杉田からの怒りの視線を感じた。明らかに機嫌が悪い。あとで謝っておこう。しかし、目立つのが嫌だと言う割に今日はよく喋るではないか。あとで言い返してやろう。
「で、ここからが大事。背の高い人が仮にリーダーだったとして、回し手は二人いるからそのうちのどちらかがリーダーってことになる。当然、もう一人もある程度背が高い人が回し手になるはず。そこで、それとは対極的に別で、背の低い人に有利なミッションを作る。例えば、こんなのはどうかな」

ミッション
・クラス代表者二人がリンボーダンスで70cmのバーをくぐる。ただし、二人のうち一人はリーダーが引き受けること。

「リンボーダンス?」
前列の池沢さんがつぶやく。この言葉自体、そう有名でもないかもしれない。私が補足しようとしたところで、隣に座っていた井伊田くんが口を開いた。
「ほら、バーの下を、膝と腰を曲げて後ろにのけぞりながらくぐるヤツ」
「ああー、あれね」
全体にも聞こえる程度に井伊田くんが補足してくれた。問題なさそうだったので、私は続けた。
「これなら、背が低い生徒が代表者になり易い。このミッションと、大縄のミッションにも挑戦するクラスがいれば、リーダーはある程度絞れる」
「なるほど!大縄の時に背が低い方で、リンボーダンスの時に背が高い方がリーダーってことか!」
「そう!そゆこと」
一番前に座る田淵くんが感心したように言った。
「私が思いつくのはこのぐらいかな」
「澄田さん、ありがとう」
私は清瀬くんにバトンをつなぐ。
「今からみんなで話し合って、ミッションを決める前に気をつけておきたいポイントを考えて欲しい。班ごとに話し合って、十分ぐらい後に班で発表してもらいます」
清瀬くんがそう言うなり話し合いが始まった。
「僕らも加わってこよう」
「そうだね」
私は自席に戻っていった。
「澄田!俺の背が!バレたじゃねえか!175cmいってないこと!」
「え?」
杉田はそれで怒ってたのか。
「そんなの、誰も気にしないよ」
「俺は気にするんだよ。ったく」
「それにしても今日、よく喋るね。杉田」
「まあそれに関しては訳ありだ。今後はなるべく、出来ることはやるようにする」
すると、白川くんが杉田の方を見て言った。
「へえ。珍しい。どんな心境の変化が?」
「心境が変化しない限り行動が変わらないなんて短絡的だな。俺が進歩したかのように感じてるんだろうが、成長とは常に退行を意味していてだな……」
「はいはい。杉田のひねくれ話には付き合わなくていいから。ポイント考えるよ」
私たちの班には巣鴨さんという女の子がいる。いつも静かで、あまり話しているのを見ない。敢えてそうしているのでなく単純に不器用な子に思えた。
私はとりあえず巣鴨さんに話しかけてみた。
「巣鴨さん、何か思いつきそう?」
「え、えと……」
私が声を掛けたので、杉田と白川くんも巣鴨さんの方を見る。それが良くなかったのか、巣鴨さんは萎縮していくばかりだ。
「あ、あの……その、」
「無理に話を合わせようとしなくていいぞ。誰も敵じゃないんだし」
杉田がぶっきらぼうにフォローする。
「う、うん。ありがと、その……」
まだ何か話しかけている。私は最後まで聞こうと思った。
「い、今は……思いつかない。けど、何かあったら、言う!」
「うん!分かった」
「澄田さん、ありがと」
「うん!」
「さて、本題に入るか。思いついたことを言わせて貰うぞ」
杉田が張り切っている。私たちは耳を傾けた。
「『自クラスのリーダーを暴露する』。このミッションで決まりだ」
私は白川くんと顔を見合わせると、2人で大きくため息をついた。
「あのね杉田。そんなミッション、誰が挑戦すると思って──」
「ウソウソ。ちょっとふざけただけ。まず最初に、一つ質問がある」
私は気を取り直して、杉田の方を向いた。
「何?質問?」
「このミッションなんだが、他クラスがうちの作ったミッションに挑戦するタイミングというか……時間は指定できるのか?」
「時間?」
考えてもみなかった。時間、か。
「間違いなくうちも他クラスのミッションに挑戦するわけだろ?そこでリーダーがバレちまえば、さっき澄田が言った状況に陥る」
「確かに。こっちが当てられてしまえば、向こうのリーダーを当てても差はなくなるね」
白川くんが頷く。
「だが、それを防ぐ方法がある」
杉田は得意げに言う。果たしてそんな秘策が本当にあるのか。
「まあ、これは運次第なんだが、他クラスの作るミッションの中で、全員でやらなくとも遂行できるミッションがあるとする。例で言うところの、大縄を全員で跳ぶ、以外のヤツだな」
「まあ、少なくないだろうね」
これは白川くんも私も同じ意見のようだ。もちろん杉田も。
「俺たちがいくらリーダーのバレやすいミッションに挑んだとしても、それを見ている他クラスがいなきゃ情報は伝わらない」
「そうだね。ルールには無いけど、戦略的に考えて当日は諜報員的な活動をする生徒が出てくるはず。主に他クラスのリーダーを当てるために」
私は実行委員の会議で出た意見を口にする。
「つまりうちのクラスが、時間を指定して全員参加の超簡単なミッションを作りゃいい。そこに他の全クラスが挑んでしまえば、その間にリーダーのバレやすそうなミッションにウチも挑戦できる。他クラスは全員がミッションをやっていて、諜報活動ができないからな」
「そうか。その間なら監視の目がないわけだ」
「うちが他クラスが作った、全員じゃなくともできるミッションに挑戦できれば、うちの諜報員は活動できるしな」
「問題は時間……なるべく長い時間のかかるミッションを作るといいね。それでいて簡単な……作業系ミッションがいいのかもしれない」
白川くんも思ったことを口にする。
「俺が思いついたのはそのぐらいだ」
さすが杉田、と言ったところか。目のつけどころが違う。
「時間指定は思いつかなかった」
「ていうか、俺なんも思いついてないんだけど。はは」
白川くんがやや自嘲気味に呟く。ふと他の班を見ると、どこもあまり意見が出ていないようだった。
その後、全体で意見が交わされたが、杉田のものほど有効な物は無く、主にミッション自体をどう難しくするか、という内容に偏っていた。
だが、ミッションは難しくすればいいという訳では無い。本来、私が説明したポイントや杉田の意見のように、敢えて簡単にして、そこをわざと狙わせる戦略を取るべきなのだ。
これについての議論がメインで展開され、余計な時間を取ることとなった。
結局、この学活の時間だけではミッションを決めるまでに至らなかった。各自次回の学活までに自分なりの案を作る事になった。
先行きが思いやられる展開に、私は少し不安を覚えていた。
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