それはどんな花よりも美しく

「桜、終わっちゃいましたね！」

散ってしまった桜を悲しんでいると、そう声をかけられた。
彼女はとても嬉しそうに見えた。
僕はムッとして冷たい眼差しで嫌味を込めて言った。

「桜が散って嬉しそうだね。」

「はい！！」

彼女は元気よく答えた。
僕は面食らってしまった。
まさか本当に桜が散って嬉しいとは思わなかったし、たとえ嬉しくてもそんな風に答えられるとは思わなかったからだ。

「……へぇ〜。」

何とも間抜けな返事しか出来ない。
でも彼女は本当に楽しそうにしている。
そして言ったのだ。

「次に咲く花は、何が好きですか？！」

僕の目から鱗が落ちた。
彼女は散った桜を悲しむのではなく、次に咲く花々を楽しみにしているのだ。

「私は牡丹です！白いのが好きです！！」

完敗だ。
僕はそう思って彼女に笑いかける。

「……なら、一緒に見に行こうか？」

彼女は笑った。
花のような笑顔だった。