心のすき間〜『行列のできるリモコン』

文字数 406文字

リモコンはリモートコントロールの略だ。
リモートコントロール。
つまり遠隔操作だ。

「やだ、もうこんな時間。」

彼女はそう言った。
嫌味っぽさはない。
だって慣れているのだ。

「ごめんね、そろそろ落ちないと。」

「いやいいよ。話、聞いてくれてありがとう。」

「少しでも力に慣れていれば嬉しい。受験、頑張ってね!」

受験。
30分間すっかり頭から抜けていた2文字がリアリティを持って重くのしかかる。

「明日も相談できる?」

往生際悪く口にすると、モニターの中の彼女は一瞬だけ真顔になった後、とても綺麗に微笑んだ。

「一番早くて、明後日のAM1時半かな?」

「そこでも大丈夫?」

「ええ。じゃあ、またね。」

「うん。」

ビデオチャットが切れる。
僕は息を吐く。
きっと30分後には同じようにため息をつくヤツがいるのだろう。

『受験のお悩み聴きます!』

そんな見出しに踊らされた。
軽い息抜きのつもりだった僕らは、彼女の意のまま、指定された時間にPC前に座るのだ。
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