戯雨

文字数 381文字

狐の嫁入りをはじめ、神様の冠婚葬祭には何かと雨が関わる事が多い。

「これで五件目ですね。」
「ちょっとまって?!今、何月?!」
「六月ですね。」
「あああぁぁぁ!農作物が!雨が降らないと困る!」

神役場のチーフが頭を抱えて叫ぶ横で、部下は淡々と離婚届の処理を進める。

そう、神様の冠婚葬祭には雨がつきものなのだが、離婚となると話が変わる。二人の気持ちが冷めきってしまうせいか、雨が降らなくなるのだ。そして離婚が続くと相乗効果で干ばつになってしまう。

「何してんのよ?!神様?!」
「増えましたよねぇ。神様たちも意識が変わってきたんですかねぇ?」
「ああ!もう!この時期に雨が降らないと困るの!どの神様でも良いから!早く結婚して!」

困窮の余り、プロポーズのような事を言い出すチーフ。それに部下がきょとんとした顔で答えた。

「僕で良ければ。」
「……え?」
「忘れました?僕、稲荷ですよ?」
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