恋の惑星

いつかのバレンタインデー特集で、惑星をデザインした素敵なチョコレートが紹介されていた。

私は一目でそのチョコレートに惚れ込んでしまった。

あぁ、なんて素敵なチョコレートだろう？
ぜひ！これをバレンタインデーに贈りたい！！

贈りたい……のだが、相手がいない。

家族？？
いや、家族にあげるチョコじゃない。
職場の人？？
いや、職場の人にあげるチョコじゃない。
友達？？
いや〜？？友達にあげるチョコじゃない……。

……え？？誰にあげる？？

私は困惑した。
一目惚れしたチョコレート。
それを贈る相手がいないのだ。

いや、チョコを贈る相手がいないんじゃない。
一目惚れした惑星チョコレートを贈る相手がいないのだ。

本当に一目惚れだった。

惑星チョコレート。
水･金･地･火･木･土･天･海の八個。

冥は残念ながら準惑星になってしまった。
惑星水準を満たさないのだから致し方ないが、水金地火木土天海冥の語呂合わせで覚えてきた私としてはちょっと寂しい。

宇宙に浮かぶ宝石のようなチョコレート。

甘く夢見る宇宙の輝き。
星々の魅惑的な神秘。

そんな想いの詰まったチョコレート。

キラキラと光沢を纏って箱に並ぶその姿はとても重厚感があって美しい。

一目惚れしたのだ。
この惑星チョコレートに。

これを贈るなら、それ相応の相手がいい。
これを贈るにふさわしい相手がいい。

星が好きな人もいい。
宇宙の神秘のようなミステリアスな相手もいい。
惑星たちの過ごしてきた永遠を感じさせるような、重く、しかし何も語らぬ時の重みを持つ人でもいい。

このチョコレートにふさわしい相手に贈りたいのだ。


「……ねぇ、今年のバレンタインは何くれるの？？」

「ヒロトは質より量じゃない。」

「そんな事ないよ〜。バレンタインぐらいじゃん！高いチョコを食べれるのは〜。」

「……どんなチョコがいいのよ？」

「そりゃゴデ○バとかさぁ〜！普段食べれない高級なヤツ！！」

「……………………。」

要するに、食べれればいいんだ。
普段食べれないような贅沢なチョコレートが。
私はため息をついた。

「わかった。ゴデ○バね。」

「やった！！ありがとう！！」


私はそう答えて遠くを見つめる。

ヒロトに不満がある訳じゃない。
ちゃんと好きだ。
何でも文句言わず美味しく食べる所は私と一緒だし、そんなところが一緒にいて楽だし、好ましいと思う。

でも……。


キラキラと輝く、惑星チョコレート。

一目惚れしたのだ。
この想いは恋に似ている。

私はあの惑星チョコレートに恋をしている。

だからそう簡単に誰かに贈る訳にはいかない。
私のこのチョコレートへの恋心を満足させられる相手でなければならない。


私は小さくため息をつく。


私は今年も一人。

恋する惑星チョコレートを胸に、広大な宇宙空間を彷徨っている。