1-1 愛人事件

文字数 395文字

そんな祖母が半身不随でいても、自分が妻であることをあからさまに見せた事件がありました。倒れてからは家事が一切できないため、祖父は住み込みのお手伝いさんを雇っていました。そのお手伝いさんは30代半ば、田舎出のおとなしい女性です。会社もたたみ、東京を離れお妾さんとも関係を終わらせていて実質隠居生活だった祖父は、そのお手伝いさんに手をつけたのです。そしてある夜同衾していた現場を見つけた祖母が、不自由な身体で彼女を叩いて大騒ぎになりました。家族間で後々語り草になるような事件でした。

半身不随で満足に歩けない状態でいても、嫉妬の感情を抑えきれずに祖母は怒りを顕わにしたそうです。足を引きずりながら手をあげたという祖母の話を思い出すたびに、私は何ともやるせない思いがします。私にも経験がありますが、寝取られた女性の場合は浮気をした自分の夫でなく、相手の女性により強く憎悪の矛先が向けられるようです。
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