第1話 祖父母

文字数 451文字

祖父母は共に明治生まれでお見合い結婚です。祖父は一代で貿易の会社を立ち上げて、あの時代にしては珍しく英語を話し、会社と家へはハイヤーの送り迎えでという成功者でした。一方祖母は東京近郊の村長の娘として生まれた、上品できれいな人でした。おそらく祖父と結婚するまでは、何の苦労もなく過ごしてきたのではないかと思われます。祖父は歌舞伎役者のようないい男で、経営者として又成功者として当時の日本としては珍しくもなく、外にお妾さんを囲っていました。

祖父母には私の母、弟と妹の3人の子供がいました。夫婦仲は特別悪くはなくても、とても愛し合っているようには見えませんでした。祖父はお金も稼いでいたし、あの時代の家長として強い権力を持ち、祖母は外に出ることもなく家の中のことを切り盛りしていました。祖父母は、喧嘩したりすることもなく、表向きはうまく機能していたごく普通の夫婦だったと思います。けれど普段から血圧の高かった祖母は50代で脳溢血に倒れその後10年以上、半身不随でほとんど寝たきり状態が続くまま亡くなりました。
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