第4話

文字数 888文字

元々私は、大先生の古本を目当てに来てるので、あんまりこのあたりは見るものがなさそうだ。
ご夫妻か、ご両親の衣装部屋だったらしい。
古い服ばっかりだ。
全部、タンスにゴンの匂いがする。臭い。

早々にクローゼットから出ると、まだ奥様は箪笥をいじっていた。
既にだいぶアクロバティックないじり方になっており、2段目左の引き出しと4段目の幅広の引き出しを2つ同時に閉めていた。
その時、パスっと空気が抜けたような音がする。
その音とともに箪笥の右下隅にある小さなはめ込みの装飾が板ごと抜けた。

「あら、なんかあいたわ」

さっきまでの訳のわからない必死さはどこへやら、勝手に外れたとでも言いたげな言い方をして、おもむろに空いた部分を覗き込んだ。
その体勢のまま奥様が動かなくなる。

「奥様、どうされました?」

さすがに声をかける。
ハッと奥様が我に返り、なにかを手に乗せてこちらへ持ってきた。

「ねぇ、変なものを見つけたわ。」

奥様が手に持っていたのは、桐箱だった。両手に収まるくらいの大きさで、紫の紐で縛ってある。ちょうど、書付も何もない茶碗の箱のようだ。

「何か、宝物ですかねえ」

隠すようにしまってあったものだ。何かしら大事なものには違いない。
それこそお義母さまの……何かとか?

「何か、ご存じですか?」

 私が話しかけるが、奥様は何も言わない。
それどころか箱の紐をスルスルと解いてしまった。
そして、迷うことなく蓋を外す。

中に入っていたのは、皿だった。どうもまだ下には何か入っており、一番上にあるものが皿といったようだ。
皿は釉薬はかけてあるものの何の模様もなく、白くつるりとした表面を覗かせている。

「あら、ただの皿じゃない。」

奥様はようやく喋った。そして、何気なく皿を取り出す。
そして皿の下にあったものを見て二人とも仰け反ってしまった。そこには、動物の頭骨が置いてあった。

小さな頭骨だ。ヒトっぽいが、かなり小さいような……

「何、これ……?」

奥様が皿をつまんだまま呟く。

「骨、ですね…」

わかりきったことしか言えない。
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