第7話

文字数 927文字

話はすぐにまとまった。
私は仕事が立て込んでいたため、例のお孫さんが私の家まで取りに来てくれるという。

私は骨を元の通り箱に戻そうと手を伸ばした。
が、辞めた。
なんとなく、この正しい積み方のまま渡そうと思ったのだ。
夢で見ただけの積み方が本当に合っているのかは全く分からないのだけれど。


お孫さんは"すぐに伺う"という言葉通り、まもなく私の家のインターフォンをせっかちな調子で鳴らした。
彼本当に引き取りに来ただけ、という感じだった。
焦っているのか、早口で話し、その間中、奥様(彼のお祖母様)から預かったであろう私へのお詫びの品の袋をと握りしめていた。
慌ただしく部屋中に視線を巡らす彼を、寝室へ案内する。
そして相変わらずそこで呑気にしている骨と皿を見つけると彼はやっとホッとしたような顔をした。

彼は注意深く骨と皿を観察しだした。
話しかけることもはばかられる勢いだったため、私は台所でお茶を淹れた。
二人分のお茶をお盆に乗せて戻ってくると彼はもう落ち着いておりこれまでよりも遥かに丁寧な様子で話しだした。

お茶を飲みながら長々と話していたが、内容としては「大事に扱ってもらえていたようで安心した」と、「きちんと手順通りに組み立てられていて嬉しい」ということだった。
またあれは「骨の器」と言い、大先生にも詳細はわからないということだ。
お母さま(彼からするとひいおばあちゃん、奥様からすると義母様)の地元のものではないか
という話である。

「しかし、一つだけ違うところがあるんですよ。僕も理由は知りませんが、皿はひっくり返して骨はその上に載せるものだそうです。」

彼が笑いながらそう言った。
彼は帰り際思い出したようにこう言った。

「ここ2週間くらい、ずっと小さい猿が夢に出てきていて、怖い夢ではなかったんですけど。そういえばあの骨の器はどうなったかな、と思い出したんですよ!
今日は会えてよかったです。ありがとうございました。」

そうか、猿は君を呼びに行っていたのか。
彼を送り出して私も家へ入ろうと振り向いた瞬間、目の端に猿が彼にとても楽しそうにまとわりつく様子が、見えたような見えなかったような。

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