真夜中の逃亡劇

文字数 1,029文字

本来、得物を持った相手に対しての有効打は原則として、『相手に近付く事』である。
それも、徹底的に、キスするような距離に、である。
鉄剣の有効な間合いは腕を適度に曲げて振る必要性から、胴体から少し離れた場所から剣の切っ先までである。
要は、腕の分は隙があるという事。
これが達人ならばそこに入り込むまでに剣に切り刻まれるが、第二の刺客の腕はそうでも無い。

ナクッテ嬢<第二の刺客<脳筋教師

が戦力分析としては妥当だろう。
要は、大した事は無いから回避に専念して前に出て行けば最後には剣が振れなくなってこちらが勝てる………………………のだが。



「止めて下さーーーーーーーーーーーーーーい!来ないでーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
距離を詰めるどころか離れて行っている。
現在、シェリー君は校舎内に逃げ込み、廊下を全力疾走中。
逃げていた。
最初は勢いで鉄剣を躱していたのだが、途中から剣の空を切る音が恐怖心を引き起こしたようで、逃走を始めた。
相手が覆面をして視界が悪い事、鉄剣が重量的負担になって速度が遅いことから一定以上の距離を保てて入るが、これでは埒が明かない。
ここから教員の棟に行く?一番の悪手だ。それは。
「やれやれ全く、少し任せてみようと思った矢先にこれだ。」
「教授!助けて下さい!」
一応、第二の刺客も倒す術はちゃんと用意してある。
が……………まぁ良い。
今回からそこまで急に出来るようなら私は必要ない。
ゆっくりいこう。
「シェリー君?」
「何ですか⁉教授!」
パニックで呼吸は安定していないが、それでもフォームとスピードは一定状態をキープしている。
「君の今居る場所、出来る事、そして持っている物は何かね?」
「今は学校で、走れて、で、持っている物は……香水で、す。
でも、これではどうにも出来ないですよ!」
「『基本その10:無理・不可能は可能性や可能を殺す凶器である。』
不可能や無理は不要な言葉だ。先ずは『可能である事前提で思考を行う』。これが大事だ。」
「で、如何すれば………」
「今度から、私の真似をして、超せるように精進したまえ。
では先ず、これから後ろの剣嬢との距離を少し離して階段を上がるんだ。」
「え?あれはミス=エスパダなのですか⁉」
「それは後で説明しよう。で、……………する。それから…………………して、……………を……………して………………。」
「…………………解りました。やってみます……。」
そう言ってスピードアップした。
例え彼女は泥棒になっても将来有望だろう。
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登場人物紹介

本作主人公にして最凶の悪役、モリアーティー教授。

異世界に飛ばされ、自分の正体を知らない幽霊となっているものの、類稀なる非道な知識の数々で未知の魔法世界でシェリー嬢をバックアップする。

チートこそ無いが、それに匹敵する頭脳を持つ知性の怪物。


魔法とて所詮は手段の一つ。今更一つ増えた程度で私の数式は揺らがない。

本作もう一人の主人公にしてヒロイン、シェリー=モリアーティー。

いじめを苦に自殺しようとしていた所を教授に止められた特待生の平民令嬢。

教授の知識を叩き込まれて徐々に成長していく。


教授に毒されそうで危険

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