第10話 女の子、女の子の母親

文字数 525文字

 「お母さん、私もカルピス飲みたい。」お風呂から上がって、パジャマに着替えたユカリは母親に言った。
 「はい、どうぞ。後で歯をちゃんと磨いてね。」
 「ありがと。」
 「そう言えば、ヒロシ君、大学はどこへ行くって。」
 「ひょっとしたら、同じ大学になるかも。学部は違うけど。」
 「あら、良かった。未来が楽しみね。」
 「うん。」と答えた後、ユカリは急いで、「未来はいつだって楽しみだよ。」と付け加えた。
 「ふふ、そうね。本当にそうね。」と言って母親は微笑んだ。
 「でも、ヒロシ君、随分背が高くなったね。顔は可愛いままだけど。」
 「可愛くはないでしょ。」
 「変わっちゃってた?」
 「別に。あ、でも、そう言えば、ハッカが好きじゃなくなってた。」
 「ハッカが好きな小学生なんていないでしょ。」
 「でも、昔はハッカのドロップをあげると、好きだからいいよって言ってたもの。」
 「それは言葉が省略されてたんでしょ。」
 「省略?」
 「ハッカは嫌いだけど、君が「好きだから」もらってあげても「いいよ」」
 「…バカじゃないの。」
 「やーい。赤くなった。グーとでも言ってみろ。」
 「グー。」とユカリは素直に答えた。「…ってなんなの、これ。」
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