第11話 女の子、女の子の母親
文字数 792文字
「まだ、起きてるの?」と母親は、ドアの隙間から明かりが漏れているユカリの部屋をノックして小声で尋ねた。
返事は返ってこない。
母親はそっとドアを開けて、中を覗いた。
部屋の電気はついたままだったが、ユカリはパジャマ姿でベッドに横になって眠っていた。捲れたパジャマからおへそと下着が顔を覗かせている。
「雷様におへそとられるよ。」と母親は呟きながら、捲れたパジャマを直し、掛け布団をそっとかけた。そして、
「もう、レディの格好じゃないでしょ。」と笑いながら呟いた
「レディじゃないもん。」とユカリのか細い寝ぼけ声が聞こえた。どうやら、まだかろうじて意識はあるようだ。
「こんな格好をヒロシ君に見られたら、百年の恋も醒めるわよ、きっと。」と母親はからかうように言った。
「百年も生きてないもん。」とユカリの寝ぼけ声が答えた。
「さすが、ミス屁理屈。この辺じゃ敵なしね。じゃあ、十年の恋も醒めるわよ。」
少しの沈黙の後、「平気だもん。」とユカリの寝ぼけ声が答えた。
「明日、電話してくれるって言ってたもん。」
「あら、良かったわね。」と言って母親は微笑んだ。
「じゃあ、ヒロシ君によろしく伝えてね。それから、ちゃんと今日のお礼を言うのよ。」
その言葉への返答は無かった。どうやらユカリの意識は眠気に勝てず遂に力尽きたらしい。かすかな寝息が聞こえてきた。
「おやすみ。」と母親は娘にそっと声をかけて、部屋の明かりを消し、音を立てないようにそっと階段を降りていった。今日もちゃんと娘におやすみを言えた、よかったよかったと彼女は思った。神は天にいまし すべて世は事もなし。
暗くなった部屋の中には、ユカリの微かな寝息の音と窓の外から聞こえてくる虫の声が心地よいハーモニーを奏でていた。
遠くから聞こえる電車の音に紛れて、どこかで猫の鳴き声が聞こえたような気もしたが、それは気のせいかもしれない。
返事は返ってこない。
母親はそっとドアを開けて、中を覗いた。
部屋の電気はついたままだったが、ユカリはパジャマ姿でベッドに横になって眠っていた。捲れたパジャマからおへそと下着が顔を覗かせている。
「雷様におへそとられるよ。」と母親は呟きながら、捲れたパジャマを直し、掛け布団をそっとかけた。そして、
「もう、レディの格好じゃないでしょ。」と笑いながら呟いた
「レディじゃないもん。」とユカリのか細い寝ぼけ声が聞こえた。どうやら、まだかろうじて意識はあるようだ。
「こんな格好をヒロシ君に見られたら、百年の恋も醒めるわよ、きっと。」と母親はからかうように言った。
「百年も生きてないもん。」とユカリの寝ぼけ声が答えた。
「さすが、ミス屁理屈。この辺じゃ敵なしね。じゃあ、十年の恋も醒めるわよ。」
少しの沈黙の後、「平気だもん。」とユカリの寝ぼけ声が答えた。
「明日、電話してくれるって言ってたもん。」
「あら、良かったわね。」と言って母親は微笑んだ。
「じゃあ、ヒロシ君によろしく伝えてね。それから、ちゃんと今日のお礼を言うのよ。」
その言葉への返答は無かった。どうやらユカリの意識は眠気に勝てず遂に力尽きたらしい。かすかな寝息が聞こえてきた。
「おやすみ。」と母親は娘にそっと声をかけて、部屋の明かりを消し、音を立てないようにそっと階段を降りていった。今日もちゃんと娘におやすみを言えた、よかったよかったと彼女は思った。神は天にいまし すべて世は事もなし。
暗くなった部屋の中には、ユカリの微かな寝息の音と窓の外から聞こえてくる虫の声が心地よいハーモニーを奏でていた。
遠くから聞こえる電車の音に紛れて、どこかで猫の鳴き声が聞こえたような気もしたが、それは気のせいかもしれない。