第2話 女の子、男の子
文字数 1,068文字
二人は踏切の前で立ち止まった。踏切を越え、駅を過ぎるとお祭りのメイン会場になる市の中心街に入っていく。カタンカタンとなる遮断機の音が夕暮れの空に吸い込まれていく。この音が夕焼けの色を更に濃くしていくかのように。
踏切の遮断機が上がり、二人は踏切を渡る。
「この店、古着屋になったんだね。」とヒロシは交差点の角のビルを指差してユカリに言った。
「えーと、ここは前、何のお店だったんだっけ。」とユカリが尋ねた。
「うーん、何だっけ。」
「何、覚えてないの。」
「ロッテリアだっけ。」
「ロッテリアがあったのは、あっちの通りでしょ。」
「レンタルビデオショップがあったのは…。」
「それは、だからロッテリアがあったところの隣。」
「え、そうだっけ。」
「何にも覚えてないのね。」ユカリは呆れた声で言った。
「それはさあ、久しぶりだからさあ。あ、ここの本屋も無くなったのか。」
聞いちゃいない。
混み合うメインストリートに二人は入り、歩いていった。人のざわめき声もより大きく濃くなっていく。
あ、そうだ。
「ねえ。」ユカリはずっと聞きたかったことを思い出してヒロシに尋ねることにした。
「もう、お話は作っていないの?」ユカリはヒロシに尋ねた
「え。」ヒロシはユカリに聞き返した。。
「もう、お話は作っていないの?昔はよくお話を作って登校中に私やみんなに話してくれたじゃない。」とユカリは声を大きくしてヒロシに再度尋ねた。
「うわ、懐かしいね。」
「もう作ってないの?」
「もう、作ってないけど、よくそんなこと覚えてたね。」
「だって、私、あなたの作るお話が好きだったもの。」
「そうだっけ。そんなことあるわけないじゃんとか結構言われた気がするけどなあ。」
「変な話とかそういうのはね。でも面白かった。」
「へえ、初めて聞いた。」
「覚えているのはねえ。」とユカリはすっかり懐かしくなって話し続けた。
「森の中で男の子が不思議な女の子に会う話。」
「ああ、車椅子の女の子の話。」
「そうそう、そうだった。男の子が夏休みに森で出会った車椅子の女の子の話。」
あの男の子と女の子は最後どうなったのだったかしら。
明るく派手派手しい、色取り取りの屋台が二人の歩く横を通り過ぎていく。それに合わせて漂ってくる様々な匂い。ベビーカステラの甘い匂い、お好み焼きのソースの香り。雑踏の喋り声に交じり聞こえてくる風鈴の音。遠くから微かに聞こえてくる山車を引く掛け声。それらが、心を高ぶらせる。
踏切の遮断機が上がり、二人は踏切を渡る。
「この店、古着屋になったんだね。」とヒロシは交差点の角のビルを指差してユカリに言った。
「えーと、ここは前、何のお店だったんだっけ。」とユカリが尋ねた。
「うーん、何だっけ。」
「何、覚えてないの。」
「ロッテリアだっけ。」
「ロッテリアがあったのは、あっちの通りでしょ。」
「レンタルビデオショップがあったのは…。」
「それは、だからロッテリアがあったところの隣。」
「え、そうだっけ。」
「何にも覚えてないのね。」ユカリは呆れた声で言った。
「それはさあ、久しぶりだからさあ。あ、ここの本屋も無くなったのか。」
聞いちゃいない。
混み合うメインストリートに二人は入り、歩いていった。人のざわめき声もより大きく濃くなっていく。
あ、そうだ。
「ねえ。」ユカリはずっと聞きたかったことを思い出してヒロシに尋ねることにした。
「もう、お話は作っていないの?」ユカリはヒロシに尋ねた
「え。」ヒロシはユカリに聞き返した。。
「もう、お話は作っていないの?昔はよくお話を作って登校中に私やみんなに話してくれたじゃない。」とユカリは声を大きくしてヒロシに再度尋ねた。
「うわ、懐かしいね。」
「もう作ってないの?」
「もう、作ってないけど、よくそんなこと覚えてたね。」
「だって、私、あなたの作るお話が好きだったもの。」
「そうだっけ。そんなことあるわけないじゃんとか結構言われた気がするけどなあ。」
「変な話とかそういうのはね。でも面白かった。」
「へえ、初めて聞いた。」
「覚えているのはねえ。」とユカリはすっかり懐かしくなって話し続けた。
「森の中で男の子が不思議な女の子に会う話。」
「ああ、車椅子の女の子の話。」
「そうそう、そうだった。男の子が夏休みに森で出会った車椅子の女の子の話。」
あの男の子と女の子は最後どうなったのだったかしら。
明るく派手派手しい、色取り取りの屋台が二人の歩く横を通り過ぎていく。それに合わせて漂ってくる様々な匂い。ベビーカステラの甘い匂い、お好み焼きのソースの香り。雑踏の喋り声に交じり聞こえてくる風鈴の音。遠くから微かに聞こえてくる山車を引く掛け声。それらが、心を高ぶらせる。