第7話 女の子、男の子
文字数 1,487文字
「2学期の終業式の日の帰り道、あの時はインフルエンザが流行っていて、ユカリちゃんも含めてクラスの半分くらいが休んでいたでしょ。
いつも一緒に帰る友達もみんな休んでいて、その日の帰り道は一人だった。
途中に公園のところを通った時、ほら、夏休みにラジオ体操をやったあの神社。
そこで、僕の名前を呼ぶ声がしたんだ。「ヒロシ君」って。
声がした方を見ると、ひとりの男の人が神社の境内に立っていた。
黒い服に、黒いシルクハットに、黒いステッキ、まるでマジシャンのようだった。
「メリークリスマス。」とその人は笑顔で言った。
いやいや、格好が違うでしょと僕は思った。今日は赤い服でしょ。サンタクロースでしょ。
見たことがない人だったが、とりあえず僕は頭を下げてこんにちはと挨拶をした。
その男の人は笑顔で僕を見つめていた。そのまま行きすぎようとすると、その男の人が僕にこう話しかけた。
「君のお話は面白いね。」
意外な話をされて僕は戸惑った。お話を作っているのを知っているのは、学校に登校するときの班のメンバーのユカリちゃんとセイジとヤヨイちゃん、それから同じクラスの何人かしか知らないはずだから。
両親は知っていたから、両親から聞いたのかもしれないなとは思ったけれど。
「いつも小学校に登校するときに君が班のメンバーにお話をしてあげているだろう。その話がとても面白いから、いつか君と話をしたいと思っていたんだよ。」とその人が言った。
それはありがとうございます、と僕はお礼を言った。毎朝、聞いているなんて言われて、どう考えてもおかしいんだけれど、その時は何故だか気にならなくて、お話が面白いと言われたことが嬉しかったんだ。そして男の人はこう言った。
「面白いお話を聞かせてくれたお礼に願い事をひとつ叶えてあげよう。」
おかしな話だと思ったが、頭に浮かんだことをお願いしてみた。
男の人はにっこり笑って、「了解、それでは、またいつか会いましょう。」と言った。
僕はさようならと言って神社を後にしたのさ。」
「変な話。」とユカリは言った。
「多分、あの男の人だと思うんだけど。」とヒロシは言った。
「あんな格好をしている人は確かにそんなにいないわね。」
「うん、そう思う。」
「その時、あなたが何をお願いしたか当ててあげようか。」
「ああ、その時に頼んだこと?」
「どうせ、ゲームソフトが欲しい、でしょ。」
「もしクリスマスに両親からプレゼントされることが決まっていなかったから、そうお願いしたかもね。」
「なんだ。違うの。」
「何をお願いしたか教えようか。」
「何?」
「ユカリちゃんの風邪が早く治るようにって。」
ユカリは黙ってヒロシを見つめた。
ヒロシも黙ってユカリを見つめた。
そのうち、ヒロシの口角が上がり、笑いだした。
「感動した?」
「なーんだ、嘘なの。」
「嘘ではないけど。」とヒロシは答え、「さっき、お話してほしいというから、お話をしてみたんですけど。面白かった?」
「何なの、それ。結局、あの人は誰なの。」
「うーん、神社にいる変なマジシャンかな。」
「そのまんまじゃん。」
「謎は深まるばかりなのであった。」とヒロシが真面目な顔で言った。
その言い方が面白く、思わずユカリは吹き出した。そしてしばらくクツクツと笑っていた。
ヒロシはそんなユカリを嬉しそうに見たあと、窓の外に目を移し、「雨、止んだね。」と言った。
ユカリも窓の外を見た。雨は止み、綺麗な月が顔を覗かせていた
いつも一緒に帰る友達もみんな休んでいて、その日の帰り道は一人だった。
途中に公園のところを通った時、ほら、夏休みにラジオ体操をやったあの神社。
そこで、僕の名前を呼ぶ声がしたんだ。「ヒロシ君」って。
声がした方を見ると、ひとりの男の人が神社の境内に立っていた。
黒い服に、黒いシルクハットに、黒いステッキ、まるでマジシャンのようだった。
「メリークリスマス。」とその人は笑顔で言った。
いやいや、格好が違うでしょと僕は思った。今日は赤い服でしょ。サンタクロースでしょ。
見たことがない人だったが、とりあえず僕は頭を下げてこんにちはと挨拶をした。
その男の人は笑顔で僕を見つめていた。そのまま行きすぎようとすると、その男の人が僕にこう話しかけた。
「君のお話は面白いね。」
意外な話をされて僕は戸惑った。お話を作っているのを知っているのは、学校に登校するときの班のメンバーのユカリちゃんとセイジとヤヨイちゃん、それから同じクラスの何人かしか知らないはずだから。
両親は知っていたから、両親から聞いたのかもしれないなとは思ったけれど。
「いつも小学校に登校するときに君が班のメンバーにお話をしてあげているだろう。その話がとても面白いから、いつか君と話をしたいと思っていたんだよ。」とその人が言った。
それはありがとうございます、と僕はお礼を言った。毎朝、聞いているなんて言われて、どう考えてもおかしいんだけれど、その時は何故だか気にならなくて、お話が面白いと言われたことが嬉しかったんだ。そして男の人はこう言った。
「面白いお話を聞かせてくれたお礼に願い事をひとつ叶えてあげよう。」
おかしな話だと思ったが、頭に浮かんだことをお願いしてみた。
男の人はにっこり笑って、「了解、それでは、またいつか会いましょう。」と言った。
僕はさようならと言って神社を後にしたのさ。」
「変な話。」とユカリは言った。
「多分、あの男の人だと思うんだけど。」とヒロシは言った。
「あんな格好をしている人は確かにそんなにいないわね。」
「うん、そう思う。」
「その時、あなたが何をお願いしたか当ててあげようか。」
「ああ、その時に頼んだこと?」
「どうせ、ゲームソフトが欲しい、でしょ。」
「もしクリスマスに両親からプレゼントされることが決まっていなかったから、そうお願いしたかもね。」
「なんだ。違うの。」
「何をお願いしたか教えようか。」
「何?」
「ユカリちゃんの風邪が早く治るようにって。」
ユカリは黙ってヒロシを見つめた。
ヒロシも黙ってユカリを見つめた。
そのうち、ヒロシの口角が上がり、笑いだした。
「感動した?」
「なーんだ、嘘なの。」
「嘘ではないけど。」とヒロシは答え、「さっき、お話してほしいというから、お話をしてみたんですけど。面白かった?」
「何なの、それ。結局、あの人は誰なの。」
「うーん、神社にいる変なマジシャンかな。」
「そのまんまじゃん。」
「謎は深まるばかりなのであった。」とヒロシが真面目な顔で言った。
その言い方が面白く、思わずユカリは吹き出した。そしてしばらくクツクツと笑っていた。
ヒロシはそんなユカリを嬉しそうに見たあと、窓の外に目を移し、「雨、止んだね。」と言った。
ユカリも窓の外を見た。雨は止み、綺麗な月が顔を覗かせていた