第９話　女の子、女の子の母親

　「たーだいま。」ユカリは玄関のドアを開け、家の中の母親に声をかけた
　「お祭りどうだった？ちょっと雨降っちゃってたみたいだけど。」母親が玄関に出てきてユカリに声をかけた
　「うん、楽しかったよ」とユカリは答えた。
　「山車やお神輿は見た？」と母親が尋ねた。
　「ううん。見なかった。」
　「じゃあ、何か屋台のものを食べたの？」
　「あ、そう言えば特に食べなかったな。」
　「何にも食べなかったの？」
　「喫茶店でロイヤルミルクティーを飲んだ。」
　「ヒロシ君と？」
　「そう。」
　「それって、ただのデートじゃない。」と母親は笑いながら言った。
　「だから、違うって。お祭りに行っただけだもん。」とユカリは言った。
　「へえ。知らないなら教えてあげるけど、そういうのを世の中じゃデートっていうのよ。お風呂わかしてあるから、入っちゃいなさい。」
　「うん。」そう答えて、ユカリは2階の自分の部屋に上がっていった。リズミカルな足音が心地よく響いていった。
　「よっぽど、楽しかったのね。」と母親は小さく笑いながら呟いた。