第5話 女の子、男の子、燕尾服の男(黒猫)
文字数 888文字
市街地に近づき、かなり込み合いだしたので、二人は裏通りに抜けることにした。
神社の階段を上ると、境内に一人の男がいて、二人の方を向いて立っていた。
男は黒い燕尾服に白い手袋をして、黒いシルクハットをかぶって、黒いステッキを持っていた。
その男はにこやかに笑ってシルクハットを脱いで二人に挨拶をした。
そして空を見上げ、鼻をピクピク動かして、こう続けた。
男は二人に言って、丁寧にお辞儀をした。そして、器用にシルクハットをくるりと回して頭に乗せた。
男は楽しそうにステッキをクルクル回しながら、神社の裏に歩いていった。
その時、二人のおでこに雨粒が当たった。二人は同時に空を見上げた。ポツリポツリと雨が降り出していた。