俺以外全員死亡
文字数 1,318文字
くやしさをバネにして、目的の物である小型無線機を探す。
地図には表示されないので、コテージに入って、引き戸を開けていくしかない。
これさえ見つかれば、勝利する確率が上がる。
おもしろいと視聴者にアピールした理由は、ホラーゲーム開発会社ディザイヤと、ターゲルが組んで、定期的に開催されているイベントがあるからだ。
定員は百名までで、勝てばイベント参加資格であるアクセスコードが手に入る。
すでに七十名以上が決まっていて、残りはわずかしかない。
決定は遅いほうだった。
なかなか百名に達しない理由は、運営がパーフェクト・エネミーというベテランプレーヤーを投入しているからだ。
俺は五回目のチャレンジになる。
ターゲルが開発した、『自動翻訳機能』により、言語の壁は取り除かれている。
世界中からトッププレーヤーが集まる理由だ。
それで百名だけなのだから、競争率は厳しいが、エネミーが強すぎて、七十名程度で止まっている。
チャンスをつかむために、コテージに入り、必死で無線を探す。
エネミーワンは俺の得意ゲームだ。
やり込んでいて、ベテランプレーヤー気取りになり、実況で素人をなじっていた。
それが『井の中の蛙大海を知らず』を思い知る。
パーフェクト・エネミーは、殺すことができず、『スタン』という行動を停止させることしかできない。
下手するとプレーヤー全員皆殺しにされて終わりだ。
いかに知恵をしぼって逃げ切るかが、勝負の分かれ目になる。
「あった!」
引き出しの中で無線を発見。
マンパック型で周波数帯が幅広く、衛星通信にも利用可能と、ゲームのマニュアルに書いてあった。
使い方は押しボタンを押すだけだ。
無線で連絡すれば、NPCの歩兵部隊が助けにきてくれる。
彼らが到着すると、スマホから音楽が鳴り、部隊がいる場所を地図にアップロードしてくれるのだ。
エネミーが近づくと、銃撃して倒してくれるので、安全圏まで行けば俺の勝ちだ。
四回やって勝てなかったのは、この無線機が発見できなかったからだ。
ほかにも船で脱出したり、バイクを使ったりできるけど、エネミーに捕まる可能性が高い。
無線で軍を呼んだほうが、生存率が上がり、無難に脱出できる。
無線を見つけたのは運がいい証拠。
エネミーにも出会わなかった。
部隊到着の音楽は、ほかのプレーヤーにも通知される。
彼らがあらわれそうな場所を推測して行ってみようか。
スマートフォンでプレーヤーの動向を確認。
俺の目が丸くなった。
「んっ?」と、もういちど画面を見る。
――なんだこれ!
俺以外全員殺されている。
地図に、生命の緑の点灯が消えていた。
三つはあったはずだ!
エネミーに殺されたプレーヤーは、生存プレーヤーの視点で状況を鑑賞することができる。
ゲームが終わるまでの暇つぶしができるのだ。
ただ、今のゲームは運営によって制限がかかっており、強制退出となる。
動画の下にあるコメント欄や、ボイスチャットで敵の居場所を教えないための措置だった。
「まだゲーム開始十分だぞ!」
コテージの窓から外へ脱出。
無線連絡すると、通知がエネミーにいく仕組みになっているからだ。
確実に俺のほうへやってくる!