第2話 初めての話。
文字数 1,501文字
人の出している色が感情とイコールしていると気づいたのは、中学生のころだった。
それまでは視ているだけで、何色がどうこう……なんて考えもしなかったから。
「木村くんが好きです。私とつき合ってください」
二年生のバレンタインの日、そう言ったクラスメイトの吉住 愛華 さんが出していた色は、桜の花のようなピンク色で、淡くてキレイな色に惹かれてつき合うことにした。
もちろん、色だけじゃなくて、吉住さんは誰にでも優しくて可愛らしい人だったから。
しばらくは毎日が楽しかったし、淡いピンクを視るたびに、ほんわかと暖かい気持ちになっていた。
それが、三年生になった四月から急に吉住さんの色が変わった。
幼なじみの一条 匡史 と仙崎 萌美 と一緒のときに、それに気づいた。淡かったピンクが一瞬で真っ赤に染まった。鮮やかな赤色じゃあなく、黒の混じったようなくすんだ赤だった。
オレが匡史と萌美と、仲良くするのが嫌だと言われ、嫉妬の色だと理解した。だからと言って、二人とは家も近くて幼馴染。親しいのは昔からで、今さらそんなことを言われても……。
「じゃあ、弘樹くんは愛華とあの二人のどっちが大切なの!」
そんなふうに詰め寄られて、正直「……えっ?」って思ったよね。だってそんなもの、比べられっこないし、どっちも大事だし。だからそう答えたら、吉住さんは泣き出してしまった。色はまた変わって、くすみ切った灰色をしていた。
ここからが辛かった。こんな場合、たいてい悪いのは男のほうで。まあ……確かにオレも悪かったとは思う。だけど普通はこんなとき、みんな彼女を選ぶのか?
友だちを捨てるような真似をしてまでも。オレにはそれはできなかった。
もう別れると言って泣いている吉住さんを見て集まってきたのはクラスの女子で、オレは寄ってたかって責められ、匡史と萌美までとばっちりを喰らい、教室内は澱 んだ色であふれた。
そこで初めて感情を表す色に当てられ、目眩を起こして倒れた。そのまま保健室に担ぎ込まれ、放課後になって匡史と萌美に支えられるようにして家に帰ったけれど、翌日からはクラス中に総スカンにされた。
「二人ともゴメンな……」
「別にいいじゃん。どうせすぐ飽きるだろ」
「けどさ、ただでさえ受験でストレスたまるのに、余計なストレスになっちゃうだろ?」
「私ら、そんなの気にしないじゃん。ってかさ、弘樹さぁ、吉住のどこが良かったワケ?」
「どこって……色がキレイだったから……?」
「出たよ! 色!」
萌美に聞かれて答えたオレに、匡史が呆れたように言う。
この二人には色が視えることを話してある。理解はしてないだろうけど、わかろうとしてくれた。いつも話しを聞いてくれて、なにかと手助けしてくれる。だからこそ、とても大切で大事にしたい友だちなのであって、急に疎遠になんかなれるわけがない。
「でも! それだけじゃないから! 普通にカワイイしさ……優しかったし……」
「まあ確かに、顔はね。だけどメンドクサイ性格ダダもれじゃん。わかんなかったの?」
「……全然」
「見えてんだろ? 色。その色でさ、ちょっとはわかるんじゃねーの? 相手の考えてることとかさ」
匡史にそう聞かれ、目からウロコだったよ。これも考えてみればすぐわかることなのに、全然まったく思いもしなかった。
この二人は一緒にいるときは大体いつもオレンジっぽい色だ。両親にしろ兄にしろ、それぞれの色は基本変わらないから、これまではスルーしていた。
この日からオレは、他人の色を視て感情を測るようになった。
そうやって過ごしているうちに、だんだんと表の態度と色の表す感情が違うヤツがいることに気づいていった。
それまでは視ているだけで、何色がどうこう……なんて考えもしなかったから。
「木村くんが好きです。私とつき合ってください」
二年生のバレンタインの日、そう言ったクラスメイトの
もちろん、色だけじゃなくて、吉住さんは誰にでも優しくて可愛らしい人だったから。
しばらくは毎日が楽しかったし、淡いピンクを視るたびに、ほんわかと暖かい気持ちになっていた。
それが、三年生になった四月から急に吉住さんの色が変わった。
幼なじみの
オレが匡史と萌美と、仲良くするのが嫌だと言われ、嫉妬の色だと理解した。だからと言って、二人とは家も近くて幼馴染。親しいのは昔からで、今さらそんなことを言われても……。
「じゃあ、弘樹くんは愛華とあの二人のどっちが大切なの!」
そんなふうに詰め寄られて、正直「……えっ?」って思ったよね。だってそんなもの、比べられっこないし、どっちも大事だし。だからそう答えたら、吉住さんは泣き出してしまった。色はまた変わって、くすみ切った灰色をしていた。
ここからが辛かった。こんな場合、たいてい悪いのは男のほうで。まあ……確かにオレも悪かったとは思う。だけど普通はこんなとき、みんな彼女を選ぶのか?
友だちを捨てるような真似をしてまでも。オレにはそれはできなかった。
もう別れると言って泣いている吉住さんを見て集まってきたのはクラスの女子で、オレは寄ってたかって責められ、匡史と萌美までとばっちりを喰らい、教室内は
そこで初めて感情を表す色に当てられ、目眩を起こして倒れた。そのまま保健室に担ぎ込まれ、放課後になって匡史と萌美に支えられるようにして家に帰ったけれど、翌日からはクラス中に総スカンにされた。
「二人ともゴメンな……」
「別にいいじゃん。どうせすぐ飽きるだろ」
「けどさ、ただでさえ受験でストレスたまるのに、余計なストレスになっちゃうだろ?」
「私ら、そんなの気にしないじゃん。ってかさ、弘樹さぁ、吉住のどこが良かったワケ?」
「どこって……色がキレイだったから……?」
「出たよ! 色!」
萌美に聞かれて答えたオレに、匡史が呆れたように言う。
この二人には色が視えることを話してある。理解はしてないだろうけど、わかろうとしてくれた。いつも話しを聞いてくれて、なにかと手助けしてくれる。だからこそ、とても大切で大事にしたい友だちなのであって、急に疎遠になんかなれるわけがない。
「でも! それだけじゃないから! 普通にカワイイしさ……優しかったし……」
「まあ確かに、顔はね。だけどメンドクサイ性格ダダもれじゃん。わかんなかったの?」
「……全然」
「見えてんだろ? 色。その色でさ、ちょっとはわかるんじゃねーの? 相手の考えてることとかさ」
匡史にそう聞かれ、目からウロコだったよ。これも考えてみればすぐわかることなのに、全然まったく思いもしなかった。
この二人は一緒にいるときは大体いつもオレンジっぽい色だ。両親にしろ兄にしろ、それぞれの色は基本変わらないから、これまではスルーしていた。
この日からオレは、他人の色を視て感情を測るようになった。
そうやって過ごしているうちに、だんだんと表の態度と色の表す感情が違うヤツがいることに気づいていった。