第22話 エピローグ

文字数 713文字

 じゃあ、僕らはもう行くよ。元気でね。

 そう言って、2人は去って行った。
 結局、元の木阿弥になったけれど。でも、あの7日間は、確かに私の心に刻まれた。今も私は、キッチンで、庭で、あの時間のすべてをはっきりと思い出す。思い出せる。
 …記憶を、残しておいてくれたのね。

 「ありがとう」

         ***

 と、ここで終われば、まとまりがよかったのでしょうけれど。

 数日後。
 あの7日間のこと、お母さん、何か書き残してないかしら? そう思ってダメ元で、当時の日記を引っ張り出してみた。まあ、どうせ何も残ってないでしょうけど(だって、歴史が変わりかねないこと、あの2人が放置するとは思えなかったし)。

 その予想に違わず、私たちが一緒に過ごした日々のページは、当たり障りのないことばかり。ページの半分以上が空白だった。もしかしたら、ここらに、見知らぬ女の子のことが書かれていたのかもしれない。少し残念に思いながら日記を閉じようとしたとき、手が滑って取り落としてしまった。ばさっと床に落ちたのを慌てて拾い上げると、見返しの部分に、文字が書かれているのに気づいた。

 「何これ!?」

 お母さんの日記は、これまでも何度も手に取っている。けど、こんなところに文字があるなんて、初めて知った。いや、私が記憶しているかぎり(そしてそれは、まず正確なはず)、ここは、ただ白い紙だったはず。
 視線が吸い寄せられ、読んで、ふ、と泣きたいような笑いが漏れた。ハナさん、いえ、お母さん―! あの笑顔が、浮かんできた。





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