第10話

文字数 591文字

 それからというもの亨は仕事に邁進して、東京で単身頑張ったがなかなか軌道に乗らなかった。いつか笑って言った冗談、美しい梓をモデルにして写真集を出すということを梓は実行しようと梓は亨に提案した。
 天音が二歳の時に梓は亨と出会ってから三年が過ぎていた。
 出会いが二十五歳の時、それから三年の月日が過ぎて二十八歳の梓は人が振り返るほどの美しさであることを亨はそれを承知していたが、口にすることはなかった。亨は梓より五歳年上だったが、どことなく頼りない亨に梓は自分が何とかしなければと思ってしまった。
 このまま離れ離れになったままなのが嫌だったのかもしれない。
 京都だからこそ、取れる写真はなんだろうと思ったときに、着物とヌードを融合させた写真はどうかと梓は話してみた。
 亨は最後までだめだと聞き入れなかったが、梓はこのまま東京にいても仕事が軌道に乗らないときは離婚しますと言い放った時はさすがに亨もうなずくしかなかった。

 一見この話はうまくいくように思われなかったが、顔を仮面舞踏会のようなマスクで隠し、見せる見せないのギリギリのラインと京都の風景の中での撮影は限られた人数と場所でなされて、一年後には亨はコンテストで賞を取ることができた。これは神が二人を離れ離れにならないようにくれた幸運というなのご褒美だったのかもしれない。梓の美しさを世間が認めた瞬間、亨の才能が開花したときだった。
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