第7話
文字数 789文字
梓は亨と入籍して、北白川の教会で二人だけの式を挙げた後に母と二人で済んだ公団住宅の整理をして亨の古い洋館に引っ越しをした。同居してしばらくすると妊娠に気が付いたのは亨がカメラの仕事で海外へ撮影の行っている間のことだった。
亨の母の仏壇に庭に咲いている花を供えて、一人庭に出て空の蒼を見て亨の帰りを待った。初めての男、初めてのキス、そして愛という情熱で結婚してしまったことを思い出した。亨のなにもかもが好きで身もだえするほどの会いたさに一人で待つことのつらさを知った。男を愛することはこんなにも心が苦しいものかと梓は知った、これも初めてのこと。
だが、その一人で亨の家にいる間に、庭に来た野良猫を見つけて心が和んだ。一人じゃない、そう思えた。亨がよく新聞を丸めて追い回していたが、勝手に入り込んでいた。あの猫だった。白黒茶色の雑種の猫は、また我が物顔でダイニングに座っていた。
「ねえ、亨はまだ帰らないの。それまではいてもいいよ」
妊娠したことを知ってからは、二階に上がることも降りるときも慎重に猫がゆっくりと前を歩いてくれた。ある日、仏壇の花を変えているときに、猫のしっぽが邪魔で手を出した。花瓶の水をこぼしてしまった。マガホニーに染みが付くと思い、タオルで懸命に拭いて、小さな引き出しを開けて水が入っていないかと確認した。古い黄色く変色した写真が何枚も入っていた。
梓は亨が撮影したものではないと思っていたが、そっとその写真に手を伸ばした。いけないことだとは思っていなかった。結婚したのだから、ここは夫と自分の家なのだから、自由にしていいと言われている。
梓は自分の母の若いころの写真を見つけた。なぜここに、自分の母の写真が? 隣には亨にそっくりの男性がいる。そして、亨の母の若いころらしい女性と男の子の写真。亨なのだろうか、そこにも同じ男性がいる。
なぜ? 同じ男性が……。
亨の母の仏壇に庭に咲いている花を供えて、一人庭に出て空の蒼を見て亨の帰りを待った。初めての男、初めてのキス、そして愛という情熱で結婚してしまったことを思い出した。亨のなにもかもが好きで身もだえするほどの会いたさに一人で待つことのつらさを知った。男を愛することはこんなにも心が苦しいものかと梓は知った、これも初めてのこと。
だが、その一人で亨の家にいる間に、庭に来た野良猫を見つけて心が和んだ。一人じゃない、そう思えた。亨がよく新聞を丸めて追い回していたが、勝手に入り込んでいた。あの猫だった。白黒茶色の雑種の猫は、また我が物顔でダイニングに座っていた。
「ねえ、亨はまだ帰らないの。それまではいてもいいよ」
妊娠したことを知ってからは、二階に上がることも降りるときも慎重に猫がゆっくりと前を歩いてくれた。ある日、仏壇の花を変えているときに、猫のしっぽが邪魔で手を出した。花瓶の水をこぼしてしまった。マガホニーに染みが付くと思い、タオルで懸命に拭いて、小さな引き出しを開けて水が入っていないかと確認した。古い黄色く変色した写真が何枚も入っていた。
梓は亨が撮影したものではないと思っていたが、そっとその写真に手を伸ばした。いけないことだとは思っていなかった。結婚したのだから、ここは夫と自分の家なのだから、自由にしていいと言われている。
梓は自分の母の若いころの写真を見つけた。なぜここに、自分の母の写真が? 隣には亨にそっくりの男性がいる。そして、亨の母の若いころらしい女性と男の子の写真。亨なのだろうか、そこにも同じ男性がいる。
なぜ? 同じ男性が……。