第22話 ようやく日常パート
文字数 2,721文字
俺が通う上北高校は、学力のみを重視した私立進学校である。札幌ひいては北海道におけるトップクラスの学力を誇り、偏差値は常に70越えのお勉強をするためだけに作られた学舎だ。
「す、すげーー。外国人じゃん」「でも日本語ペラペラだったよな」「読者モデルとかやってんのかな?」「ハゲ散らかすほど美人」
そんな学校にイリナは転入してきた。理由は簡単で俺に会いに来るためだ。…………正確に言えば正体を隠していた俺に会うためか。俺はイリナのパートナーであるカイを殺した張本人であることを隠し、いままでイリナに接していたのだ。イリナが俺に怒るのは当然だし、俺も最高にバツが悪い。俺は全力で顔を隠してイリナが自身の席に座るのを待っていた。
「それじゃあイリナさんは…………宏美(ひろみ)さんの隣の席に座ろうか。あそこは生徒会長や委員長が密集しているから何かとこの学校の話を聞きやすいだろう」
宏美の隣って………俺も宏美の隣の席なんですけど。宏美挟んで隣にいるんですけどイリナが。ストレスで死ぬよ俺。
「よろしくお願いしますね、宏美さん」
「よろしく!イリナちゃん!」
宏美は元気よく挨拶し、イリナもそれを見て笑っている。宏美は俺と違って社交スキルが高い。誰とでも楽しく会話するし、バカにするし、優しくするし………そして頭がいい。運動もできる。そんなスーパー人間が優しく楽しく話しかけてくるのだ、誰だって気分が良くなるよな。
「……………」
「……………」
むふーーっ。つむじに視線を感じる。助けて誰か。イリナのこのプレッシャーから俺を救い出してくれ。
「それじゃあ今日はこの他に特別なことはないから、ホームルーム終わりだ。みんな、イリナさんとは仲良くするように。以上!」
そして先生はこの教室から出て行き、イリナの周りに人だかりができるのはあっという間だった。
「こっちに来る前はどこに住んでたの?イギリス?」
「い、いや、東京です。親の仕事の都合でこっちに引っ越してきたんです」
「東京だって東京!都会だなぁ!」
俺は事前に席から離れていて、彼らがイリナに質問しまくる様を遠巻きに眺めていた。
「あれがイリナさんねぇ、確かに美人だ。人間離れした感じがなんとも…………」
「お人形みたいだろ?」
「うん、それを言いたかった」
遼鋭もあの場から離脱しており、俺達はノンビリと外から眺める。俺が炎帝だと暴露したあの日から俺とイリナは表面世界で一度も会っていない。つまり、今日が3日ぶりの再会となるわけだ。非常に気まずい。
「で、彼女は許してはいないね、あの感じだと」
「ああ、全力で拒絶された。まっ当然の話だ。そこに関しては特に問題ないんだけど………」
その状態で毎日学校で顔を合わせるなんてどんな地獄だよ。
「君が憂鬱っていった意味が分かったよ。まさかここまで行動力が高いとはねぇ」
「俺も驚いちゃったよ。そこまでは読めなかった」
転校までするかね普通。マジでヴァイタリティのバケモン。勇者最強なだけはあるわ。
「凄いなイリナちゃん!あっちでも進学校に通ってたの!?」
「は、はい………頑張ってました」
「すっげーー!頭良いじゃん!私達も頑張らないとな!」
持ち前のコミュ力によって宏美とイリナがドンドン仲良くなっていく。俺が気まずいことを除けば実に微笑ましい光景だ。こういうところが宏美の凄いところだよなぁ。彼女と話せば誰だってその場で脚光を得ることができる。盛り上げ上手で相手に花を持たせるのが上手い。
「そうそう、飯田さんと遼鋭君とは仲良くしといた方がいいよ。彼ら生徒会長と委員長だからさ」
遠巻きで眺めていた俺達に視線が集中する。俺は一歩、遼鋭に隠れるように下がった。
「まったく君は………委員長の岩村 遼鋭 です。みんなからは遼鋭やリョウって呼ばれてます。気軽に呼んでくださいね」
風が吹き抜けるような爽やかな笑顔で挨拶する遼鋭。こいつ身長が180cmあって脚が長くてイケメンだからモテんだよなぁ。しかもそれを自覚して振る舞ってるから尚更モテる。それ故についたあだ名は女キラーだ。俺にその身長、100cmぐらいくれないかな。
「………………」
俺に視線がそそがれる。………やんなきゃダメ?やっぱり?
「初めましてイリナさん!飯田狩虎です!いやー本当、お初にお目にかかりますね!なんていいますか、そう………初めての出会いとはドキドキするものでして、緊張しちゃうなぁ!初めてご挨拶頂きますがよろしくお願いします!」
「………………」
俺の言葉に苦い顔をするイリナと、謎の生命体を見つめるような顔のクラスメイト達。まるでジャングルの奥地で見つけた原住民の風習が理解できなかった時の探検家みたいな空気になってる。
「は、初めまして。よろしくお願いします2人とも」
そして苦笑いのイリナ。よし、ひとまずこれで今日はイリナから俺に話しかけてくることはないだろ。俺はまた遼鋭の影に隠れてイリナ達の動向を見守る。
「そ、その………イリナさんに緊張しちゃったのかな?ははははは、いつもはあんな感じじゃないんだけどね。落ち着いた感じでね!」
「狩虎がこんなにハキハキ挨拶してるところは見たことないな。内容は変だったけど」
ハキハキ挨拶してるのを見たことないだって?それじゃあまるで根暗じゃないか。言っとくけどハキハキ喋ってるからね。目が細いせいでちょっと眠たそうに見えるけれど、頑張ってるんだからねこんな俺でも!
宏美達とイリナの会話はどんどん進んでいき、次の休日に遊ぶ約束まで発展した。ショッピングやカラオケにでも行くのだろう。
イリナがこのクラスに馴染めそうならば、別に俺が気まずかろうがどうでも良いか。わざわざあっちの人間関係を絶ってまでこっちに引っ越してきたんだ、楽しんでくれなきゃ徒労でしかない。………イリナをもてなすためにも宏美には頑張ってもらおうか。
「そうそう、私は副生徒会長してるんだけどさ、色々と権限があるから放課後に学校を見て回ろうかイリナちゃん。普段は入れないところとか入れるぜ。なぁ狩虎!」
「ああそうだな。マスターキー貸してやるから好きなところ探検してこいよ」
「はぁ?お前も一緒に行くんだよ。生徒会長だろうが」
やなんだけど。イリナと少人数で行動するとか最高にやなんだけど。しかし宏美が最高に笑顔である。宏美がこの笑顔の時はキレる一歩手前なのだ。俺がイリナに対して付き合いの悪い行動を繰り返していたから、俺に対してキレ気味なのだろう。
「…………一緒に行こう?遼鋭」
「僕は用事あるからちょっと無理かなー。頑張ってねー」
むふーーん。俺は唸った。
「す、すげーー。外国人じゃん」「でも日本語ペラペラだったよな」「読者モデルとかやってんのかな?」「ハゲ散らかすほど美人」
そんな学校にイリナは転入してきた。理由は簡単で俺に会いに来るためだ。…………正確に言えば正体を隠していた俺に会うためか。俺はイリナのパートナーであるカイを殺した張本人であることを隠し、いままでイリナに接していたのだ。イリナが俺に怒るのは当然だし、俺も最高にバツが悪い。俺は全力で顔を隠してイリナが自身の席に座るのを待っていた。
「それじゃあイリナさんは…………宏美(ひろみ)さんの隣の席に座ろうか。あそこは生徒会長や委員長が密集しているから何かとこの学校の話を聞きやすいだろう」
宏美の隣って………俺も宏美の隣の席なんですけど。宏美挟んで隣にいるんですけどイリナが。ストレスで死ぬよ俺。
「よろしくお願いしますね、宏美さん」
「よろしく!イリナちゃん!」
宏美は元気よく挨拶し、イリナもそれを見て笑っている。宏美は俺と違って社交スキルが高い。誰とでも楽しく会話するし、バカにするし、優しくするし………そして頭がいい。運動もできる。そんなスーパー人間が優しく楽しく話しかけてくるのだ、誰だって気分が良くなるよな。
「……………」
「……………」
むふーーっ。つむじに視線を感じる。助けて誰か。イリナのこのプレッシャーから俺を救い出してくれ。
「それじゃあ今日はこの他に特別なことはないから、ホームルーム終わりだ。みんな、イリナさんとは仲良くするように。以上!」
そして先生はこの教室から出て行き、イリナの周りに人だかりができるのはあっという間だった。
「こっちに来る前はどこに住んでたの?イギリス?」
「い、いや、東京です。親の仕事の都合でこっちに引っ越してきたんです」
「東京だって東京!都会だなぁ!」
俺は事前に席から離れていて、彼らがイリナに質問しまくる様を遠巻きに眺めていた。
「あれがイリナさんねぇ、確かに美人だ。人間離れした感じがなんとも…………」
「お人形みたいだろ?」
「うん、それを言いたかった」
遼鋭もあの場から離脱しており、俺達はノンビリと外から眺める。俺が炎帝だと暴露したあの日から俺とイリナは表面世界で一度も会っていない。つまり、今日が3日ぶりの再会となるわけだ。非常に気まずい。
「で、彼女は許してはいないね、あの感じだと」
「ああ、全力で拒絶された。まっ当然の話だ。そこに関しては特に問題ないんだけど………」
その状態で毎日学校で顔を合わせるなんてどんな地獄だよ。
「君が憂鬱っていった意味が分かったよ。まさかここまで行動力が高いとはねぇ」
「俺も驚いちゃったよ。そこまでは読めなかった」
転校までするかね普通。マジでヴァイタリティのバケモン。勇者最強なだけはあるわ。
「凄いなイリナちゃん!あっちでも進学校に通ってたの!?」
「は、はい………頑張ってました」
「すっげーー!頭良いじゃん!私達も頑張らないとな!」
持ち前のコミュ力によって宏美とイリナがドンドン仲良くなっていく。俺が気まずいことを除けば実に微笑ましい光景だ。こういうところが宏美の凄いところだよなぁ。彼女と話せば誰だってその場で脚光を得ることができる。盛り上げ上手で相手に花を持たせるのが上手い。
「そうそう、飯田さんと遼鋭君とは仲良くしといた方がいいよ。彼ら生徒会長と委員長だからさ」
遠巻きで眺めていた俺達に視線が集中する。俺は一歩、遼鋭に隠れるように下がった。
「まったく君は………委員長の
風が吹き抜けるような爽やかな笑顔で挨拶する遼鋭。こいつ身長が180cmあって脚が長くてイケメンだからモテんだよなぁ。しかもそれを自覚して振る舞ってるから尚更モテる。それ故についたあだ名は女キラーだ。俺にその身長、100cmぐらいくれないかな。
「………………」
俺に視線がそそがれる。………やんなきゃダメ?やっぱり?
「初めましてイリナさん!飯田狩虎です!いやー本当、お初にお目にかかりますね!なんていいますか、そう………初めての出会いとはドキドキするものでして、緊張しちゃうなぁ!初めてご挨拶頂きますがよろしくお願いします!」
「………………」
俺の言葉に苦い顔をするイリナと、謎の生命体を見つめるような顔のクラスメイト達。まるでジャングルの奥地で見つけた原住民の風習が理解できなかった時の探検家みたいな空気になってる。
「は、初めまして。よろしくお願いします2人とも」
そして苦笑いのイリナ。よし、ひとまずこれで今日はイリナから俺に話しかけてくることはないだろ。俺はまた遼鋭の影に隠れてイリナ達の動向を見守る。
「そ、その………イリナさんに緊張しちゃったのかな?ははははは、いつもはあんな感じじゃないんだけどね。落ち着いた感じでね!」
「狩虎がこんなにハキハキ挨拶してるところは見たことないな。内容は変だったけど」
ハキハキ挨拶してるのを見たことないだって?それじゃあまるで根暗じゃないか。言っとくけどハキハキ喋ってるからね。目が細いせいでちょっと眠たそうに見えるけれど、頑張ってるんだからねこんな俺でも!
宏美達とイリナの会話はどんどん進んでいき、次の休日に遊ぶ約束まで発展した。ショッピングやカラオケにでも行くのだろう。
イリナがこのクラスに馴染めそうならば、別に俺が気まずかろうがどうでも良いか。わざわざあっちの人間関係を絶ってまでこっちに引っ越してきたんだ、楽しんでくれなきゃ徒労でしかない。………イリナをもてなすためにも宏美には頑張ってもらおうか。
「そうそう、私は副生徒会長してるんだけどさ、色々と権限があるから放課後に学校を見て回ろうかイリナちゃん。普段は入れないところとか入れるぜ。なぁ狩虎!」
「ああそうだな。マスターキー貸してやるから好きなところ探検してこいよ」
「はぁ?お前も一緒に行くんだよ。生徒会長だろうが」
やなんだけど。イリナと少人数で行動するとか最高にやなんだけど。しかし宏美が最高に笑顔である。宏美がこの笑顔の時はキレる一歩手前なのだ。俺がイリナに対して付き合いの悪い行動を繰り返していたから、俺に対してキレ気味なのだろう。
「…………一緒に行こう?遼鋭」
「僕は用事あるからちょっと無理かなー。頑張ってねー」
むふーーん。俺は唸った。