第1話 物語との邂逅
文字数 1,584文字
「それじゃあ君をその日に殺してあげるよ」
彼女は悲しそうな表情でそう言った。彼に対して、自分に対してか、それとももっと別の何かなのか………今の俺には分からない。そしてそれを聞いた俺は…………
「そうか、楽しみに待っているよ」
俺はそう返して目を伏せた。喜びと悲しみ、そして戸惑いを隠す為に…………
降り積もる灰塵によって増す夜の深みを突き抜け、閃光が高速で空を駆け抜ける!放たれる豪炎が夜空に無数に散らばり………爆発!半径3キロメートルを、まるで魔獣が空間を頬張るかのように飲み込み、灼口となって焼き溶かす!
ボッ!!!
その爆発を一本の伝説の剣、夜空を明るく照らす光剣が切り裂いた!夜の闇すらも退ける金色の長髪、全てを見抜く碧色の目。全身を黒色のドレスに包んだ勇者イリナは、この灼熱の主へと高速で詰め寄る!
ドンドンドンドン!!!!
しかしその進路に炎で作られた大剣が無数に降り注ぎ大爆発!!生まれた炎の壁すらも炎の弾丸が貫きイリナを追い詰めていく!!全身を赤色の鎧に包んだ灼熱の魔王、炎帝が腕を振るうたび世界は赤く燃え上がり、触れたもの全てを消滅させる!!
そして…………訪れるべき時が来た。
この世の全てが炎に包まれ、イリナの退路がなくなった瞬間、青色の炎が、イリナが出せる最高速度以上の速度で放たれた!!青色の炎が赤色の炎を飲み込み、喰らい、更なる火力となってイリナに襲いかかる!!
「………倒してください、炎帝を」
絶体絶命、必中不可避の一撃。全てのものに平等に死を与える攻撃が当たる瞬間、イリナを守るために彼女の相棒のカイが飛び出した。そして…………
この物語に炎の帷が下りた。
「…………こんなもんでいいだろ」
俺は小説を書き終えるとPCをシャットダウンし急いで居間へと向かった。
俺の名前は飯田狩虎 。普通の高校生だ。スポーツで全国大会に行っただとか、帰国子女だったりだとか、転生2回目で周りからチヤホヤされていたりする………なんてことはない普通の高校生。今俺が急いでいる理由だって、行きたくもない塾に遅刻気味だってだけだし。
スリッパを脱いで外靴に履き替えようとした時、スリッパがひっくり返っていることに気がつき直す。そして靴を履いた後に踵に違和感を覚えたから、カッカッとつま先で地面を蹴っていずい感じを直した。
唯一俺が他の人と違う点があるとすれば小説を書いていることだろう。その内容もとても凡庸で、ありきたりな剣と魔法のファンタジーだ。勇者である女主人公のイリナと、その相棒であるカイが活躍する英雄譚。まぁ、カイが魔王に殺されちゃって失意のままその小説は終わったのだけれども、ありきたりさ。誰だって思いつく。
俺は玄関を押して開くと………スッと引いて扉を閉めて唸った。
「………………」
そしてもう一回開き…………やっぱりもう一回閉めて、俺は玄関のタタキで唸った。タタキである。そうそうここに長居することってないよね。
なんか変なのいる。いや、ただ、その………不審者ってわけではない。この場にいちゃいけないっていうのは間違ってはいないんだけど、露出狂みたいに通報しないと犯罪が起きる類の人間ではないのだ。異質者ではあるが変質者ではない。俺はあいつをよく知っている。金色の長髪、碧眼、黒色のドレスを身にまとった女性。
そう、俺の小説の主人公が家の前で突っ立っているのだ。
「……………………」
ひとしきり唸った後このままでは埒があかないと思った俺は、リビングへと向かい、ガラス戸から外に出ると女性の元へと突っ走り………背後から飛び蹴りをかました!
ガコンッ!!
しかしまるで、彼女は背後が見えているかのように攻撃をかわすと、綺麗に右肘を俺のこめかみに叩き込んだ!
あっ、この戦闘能力はイリナ本人ですね、間違いない。
薄れゆく意識の中、俺は確信した。
彼女は悲しそうな表情でそう言った。彼に対して、自分に対してか、それとももっと別の何かなのか………今の俺には分からない。そしてそれを聞いた俺は…………
「そうか、楽しみに待っているよ」
俺はそう返して目を伏せた。喜びと悲しみ、そして戸惑いを隠す為に…………
降り積もる灰塵によって増す夜の深みを突き抜け、閃光が高速で空を駆け抜ける!放たれる豪炎が夜空に無数に散らばり………爆発!半径3キロメートルを、まるで魔獣が空間を頬張るかのように飲み込み、灼口となって焼き溶かす!
ボッ!!!
その爆発を一本の伝説の剣、夜空を明るく照らす光剣が切り裂いた!夜の闇すらも退ける金色の長髪、全てを見抜く碧色の目。全身を黒色のドレスに包んだ勇者イリナは、この灼熱の主へと高速で詰め寄る!
ドンドンドンドン!!!!
しかしその進路に炎で作られた大剣が無数に降り注ぎ大爆発!!生まれた炎の壁すらも炎の弾丸が貫きイリナを追い詰めていく!!全身を赤色の鎧に包んだ灼熱の魔王、炎帝が腕を振るうたび世界は赤く燃え上がり、触れたもの全てを消滅させる!!
そして…………訪れるべき時が来た。
この世の全てが炎に包まれ、イリナの退路がなくなった瞬間、青色の炎が、イリナが出せる最高速度以上の速度で放たれた!!青色の炎が赤色の炎を飲み込み、喰らい、更なる火力となってイリナに襲いかかる!!
「………倒してください、炎帝を」
絶体絶命、必中不可避の一撃。全てのものに平等に死を与える攻撃が当たる瞬間、イリナを守るために彼女の相棒のカイが飛び出した。そして…………
この物語に炎の帷が下りた。
「…………こんなもんでいいだろ」
俺は小説を書き終えるとPCをシャットダウンし急いで居間へと向かった。
俺の名前は
スリッパを脱いで外靴に履き替えようとした時、スリッパがひっくり返っていることに気がつき直す。そして靴を履いた後に踵に違和感を覚えたから、カッカッとつま先で地面を蹴っていずい感じを直した。
唯一俺が他の人と違う点があるとすれば小説を書いていることだろう。その内容もとても凡庸で、ありきたりな剣と魔法のファンタジーだ。勇者である女主人公のイリナと、その相棒であるカイが活躍する英雄譚。まぁ、カイが魔王に殺されちゃって失意のままその小説は終わったのだけれども、ありきたりさ。誰だって思いつく。
俺は玄関を押して開くと………スッと引いて扉を閉めて唸った。
「………………」
そしてもう一回開き…………やっぱりもう一回閉めて、俺は玄関のタタキで唸った。タタキである。そうそうここに長居することってないよね。
なんか変なのいる。いや、ただ、その………不審者ってわけではない。この場にいちゃいけないっていうのは間違ってはいないんだけど、露出狂みたいに通報しないと犯罪が起きる類の人間ではないのだ。異質者ではあるが変質者ではない。俺はあいつをよく知っている。金色の長髪、碧眼、黒色のドレスを身にまとった女性。
そう、俺の小説の主人公が家の前で突っ立っているのだ。
「……………………」
ひとしきり唸った後このままでは埒があかないと思った俺は、リビングへと向かい、ガラス戸から外に出ると女性の元へと突っ走り………背後から飛び蹴りをかました!
ガコンッ!!
しかしまるで、彼女は背後が見えているかのように攻撃をかわすと、綺麗に右肘を俺のこめかみに叩き込んだ!
あっ、この戦闘能力はイリナ本人ですね、間違いない。
薄れゆく意識の中、俺は確信した。