危ないゲーム

文字数 1,474文字

うちの学校の冬の恒例行事がクラス対抗の合唱コンペです

課題曲と自由曲の二曲を歌って、順位を付けます

自由曲はわりと個性が出て、毎年これを楽しみにしてる先生も多いのです

この年のうちのクラスの自由曲は、かなりアップテンポでソロでのシャウトも入ると言う難易度激ムズな挑戦でした

一か月近い練習で、やっと形になりいよいよ明日は本番という日のことでした

「マジか!」

朝知らせを聞いたクラス全員が頭を押さえ叫びました

なんと、その自由曲のソロシャウトを担当していた玲子がインフルエンザで休んだのです

「か、代わり誰がやるんでしょう?」

委員長が真っ青な顔で皆を見回しながら言いました

すると、そこは活発で定評ある我がクラス、一気に6人が手をあげました

「うーん、確かにみんないい声してるけど、絞れなくね、この顔ぶれ」

音楽にうるさく、今回のコンペでも自称音楽監督をやってる千佳子が言いました

確かに、手をあげた人間はみんな歌が上手なので、誰がやっても問題なさそうな半面,一人を選ぶのは難しいとみんなも思いました

「本番明日だよ、すぐ決めなくちゃ!」

奈々が言いました

確かにその通りです

「じゃんけんで決める?」

あたしが言うと、千賀子がわざわざ飛んできて頭にゴツンを寄越しました

「あたしはこのコンペに命かけてるんだ、そんないいかげんな人選させないよ」

「命かけてるんだ」

曜子が目を真ん丸にして言いました

「じゃあ、どうするの?」

あたしが聞くと、千賀子が言いました

「それは、やっぱシャウトしてもらうんだから、声で勝負しかないじゃん」

みんな納得して頷きました

「じゃあ、一人ずつシャウトしてもらう?」

委員長が言いましたが、千賀子は腕組みして天井を見上げてから言いました

「いえ、ここは、歌ではなく純粋に声の勝負よ。あれやって決めましょう」

「あれ?」

皆が首を傾げました

で、翌日、コンペは開かれたのですが…

「さ、最下位…」

結果を前に全員がへなへなと膝を折り座り込みそうになりました

「まあ、しかたないんじゃね、げほげほ」

そう言ったのは、例のシャウトを担当した由奈でした

「うん、あたしも足引っ張った口だし、こりゃ仕方ないと思う」

昨日、手をあげた中の一人亜美がめっちゃかすれた声で言いました

そこに担任の先生が来て、ものすごく渋い顔で聞きました

「まあ結果は素直に受け止めるしかありません、実際聞くに堪えない合唱でした、でもなんであんなに声がかすれ切った人が何人もいたのですか?」

全員がうなだれたまま、ゆっくり千佳子を指さして言いました

「責任は音楽監督に…」

担任が顔をしかめて千佳子に聞きました

「なにがあったんです?」

千佳子が頭を掻きながら答えました

「き、昨日、ソロシャウト決めるのに、ゲームをやりまして…」

「ゲーム? 何故それで声が出なくなったの?」

先生が首を傾げます

「え、えと、モツァレラチーズゲームを、勝負つくまで2時間やったから…」

そうなのです、手をあげた全員が意地になってモツァレラチーズの絶叫をテンションどんどん上げながらやったものですから、見事に全員のどを痛めてしまったのでした

「何だか知りませんが、そのゲーム危険みたいですから、以後学校でやることを禁止します」

というわけで、わが校ではモツァレラチーズゲームは危険なゲームと認知されてしまったのでした

みんな、ゲームのやりすぎには気をつけようね!
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