お掃除の時間

文字数 1,399文字

うちの学校は大きな掃除は業者に頼んでます。校庭とか体育館なんかは、生徒はノータッチです。廊下もやってもらえます。そこは私学ですから、そういうところはちゃんとしてます

でも教室は自分たちで放課後に簡単に掃き掃除をやらされます

そして、週末金曜日だけ週末掃除と言う名目で、机を寄せてモップ掛けをします。中学でやってたのとここだけは同じなのです

この週の週末掃除当番にあたしは当たってしまいました

「すっかり忘れてた、あたし当番だって」

モップをかける前に箒でごみを寄せながら由美が言いました

「最後のコマが手芸だったから、やたら余ったビーズとか糸くずとか落ちてるし」

あたしも文句言いながら箒をかけます

その時、モップ用のバケツに水を汲みに行っていた曜子が戻りました

「あたし時間余ったから、こんなの作ってたよ」

そう言って曜子は、スカートのポッケからお手玉を一個とりだしました

「お手玉かあ、でも一個だけじゃ何もできないじゃん」

あたしが言うと、曜子がニコッと笑いました

「ふふん、これはボールよ、そしてバットはあんたと由美が持ってるし」

掃除当番の四人が顔を見あわせました

「野球か!」

そこで富美加と由美が同時に言いました

「ルール知らない」

曜子が由美に詰め寄りました

「あんた、この前うちのソフト部の試合見に来てたよね」

「あ、あれ曜子応援に行っただけだし」

曜子がため息はいて言いました

「基本玉打って塁に走るだけ。1チーム二人だから、1塁行ってホーム戻って1点だね、そうね1塁は教卓かな」

「キャッチャーいらないし、1塁の守備だけでいいし、できるんじゃね」

あたしは頷きました

と言うわけであたしと富美加チーム、曜子と由美チームの対戦になりました

先行は曜子チーム、バッターは由美です。あたしは、お手玉を思いっきり投げました

なんと運動神経いまいちの筈の由美の箒は、お手玉に当たりました! でも、お手玉ですからぼてぼてと前に転がっただけです

「あー、富美加お手玉拾って由美にタッチよ!」

あたしが指示を出すと、富美加が慌ててお手玉拾って由美にタッチしようとしました

「いやーん」

富美加の手から逃げようと由美は逆走を始めました

「あー、それルール違反!」

曜子が言った次の瞬間、由美は汲んであったモップ用のバケツに躓き、中身の水が床にダーッと広がりました

「やばい!」

全員慌ててモップとぞうきんを持って、水ふきを始めるしかありませんでした

「こりゃ試合は中止ね」

あたしが言うと由美がごめんと言ってから続けました

「この場合あれかな、水入りってやつ?」

「いや、それ相撲だから」

富美加が言いました

「じゃあ、コールドゲーム?」

あたしが言うと、曜子が首を振りました

「それも違うって、それ大差が付いた場合に使う言葉」

「じゃあ、今回は?」

「没収試合です!」

いきなり教室の入り口から大声が響きました。なんと、担任がそこに立ってました

「あなたたち、騒ぎ声が下の階の教員室まで聞こえてましたよ、あとで何か罰を与えますから覚悟してなさい」

肩をすぼめながらあたしは小声で言いました

「雨天中止、違うわ雷で中止が正解だね」

怒られているのに、みんなが納得の笑みを浮かべうなずきました


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