夏休みデビュー
文字数 1,853文字
夏休みが終わると必ずあるのが、クラス内でのデビューチェックです
別に誰が誰とホテル行ってもいいんですけど、この話題はやらないと二学期が来ないとみんな思い込んでいるふしがあります
と言いますか、あたしもこの話題に絡まないと夏休みが終わった気がしませんのですけどね
おしいかな、あたしは夏休み中のロストは失敗というか未遂に終わりましたから、話題のセンターを取るのは不可能なのでした
そして、この年もっともクラスの注目を浴びたのが、茶道部の有希でした
「うそでしょ」
「信じられない」
みなが口をそろえて言いました
そう、地味子の代表みたいだった有希が、なんとベリショで登校してきて、しかも真っ黒に日焼けし、ピアスの穴もがっちり両耳にあいていたのです
「何があったの! 正直に言って!」
あまりの変貌ぶりに、委員長が真顔で有希に迫りました
「別に、なにもなかったけど」
「!」
委員長が片手で口を押え一歩後退しました
「違う、あなた有希じゃない。有希なら、ここは何もなかったですわと答えるはずよ!」
そこで、曜子が大きくため息をつきながら委員長の肩を叩きました
「決まってんじゃん、ご開通しちゃったから、人も変わったのよ、大人の階段のぼっちゃっただけよ」
すると、有希が曜子の方を見て言いました
「全部そういう方向にしか考えられないって、さかりのついた雌猫並みよね、そういうんじゃないから、あたしの場合」
「!」
今度は曜子が、三歩ほど後ろに退がりました
「うそ、有希が口ごたえした、この子不良化してる!」
そこに今度は、由奈が近づいて委員長と曜子の言いました
「家庭の事情とかってのもあるしさ、突っ込むのやめなよ、いいじゃん少しくらい悪ぶっても、まああたしに言わせたら半グレくらいにしか見えないけど」
そこで、有希がバンと机を叩いて大きな声で言いました
「あー、だから学校来たくなかったんだ! くそ、あの馬鹿姉貴のせいで!」
「?」
この謎の叫びにクラスにいた全員が首を傾げました
ここで、有希に質問をしたのはあたしでした
「ねえ、言える範囲で構わないからさ、事情説明してよ。いきなり肩まであった髪バッサリ切って、ピアスの穴まであけて登校したら、みんな何かあったと思うわよ」
有希が、大きくため息をついて言いました
「ちょっとさ、人間不信になっただけよ」
「?」
もちろんこれで理解できるはずありませんから、あたしは首をものすごく傾けました
その様子を見て、有希がしかたないと言った感じで話し始めました
「親父の田舎に帰ってたんだよ、そしたらさ村の行事とかで、海岸で障害物レースみたいのがあったのよ、二人一組で参加できるって聞いて、姉貴があたしと一緒に出たのよ」
「ほおほお」
いつの間にかとなりに来ていた奈々が、まるで探偵のように顎に手を当て有希の方に身を乗り出して言いました。いつもならだれかが突っ込むのですが、この時は全員有希の話が聞きたかったようで、奈々は無視されました
「そんでさ、なんかその障害ってのがむちゃくちゃで、あたし髪の毛思いっきりセメントくっついたままゴールさせられて、結局何やっても取れなかったから」
そこで、有希は右手でチョキを作り髪を切る仕草をしました
「ふむふむ、有希はその田舎のイベント主催者に怒ってグレちゃったと…」
奈々が言いましたが、有希はびしっと否定しました
「その程度で済めば良かったわよ」
「まだ続きがあるのね」
あたしが聞くと有希はうなずきました
「そんでさ、レース2着だったのよ。その賞品がね、ペアのピアス、それもスワロフスキーの」
「まじ、それやばくね、かなりの値段するんじゃね?」
由奈が目を丸くして言いました
「そうよ、高そうだったのよ、だからあたしは喜んで耳ピーの穴をすぐにあけたのよ」
一同が「おお」と頷きました
「そしたらさ、次の日に姉貴が、ピアス二組ともメルカリに出して売りやがったのよ! しかも、売り上げあたしに一銭も寄越さないんだよ! あんな奴家族じゃないわ!」
有希の周りにいた全員が、有希の肩に手を置き大きく頷きました
「お姉さんに天罰が下りますように」
委員長がそう言ったとき予鈴が鳴りました
こうして、二学期初日のヒロインの座は有希がさらっていったのですが、なにかみんな食い足りなさそうな顔をしていたのは、本人には内緒なのでした
別に誰が誰とホテル行ってもいいんですけど、この話題はやらないと二学期が来ないとみんな思い込んでいるふしがあります
と言いますか、あたしもこの話題に絡まないと夏休みが終わった気がしませんのですけどね
おしいかな、あたしは夏休み中のロストは失敗というか未遂に終わりましたから、話題のセンターを取るのは不可能なのでした
そして、この年もっともクラスの注目を浴びたのが、茶道部の有希でした
「うそでしょ」
「信じられない」
みなが口をそろえて言いました
そう、地味子の代表みたいだった有希が、なんとベリショで登校してきて、しかも真っ黒に日焼けし、ピアスの穴もがっちり両耳にあいていたのです
「何があったの! 正直に言って!」
あまりの変貌ぶりに、委員長が真顔で有希に迫りました
「別に、なにもなかったけど」
「!」
委員長が片手で口を押え一歩後退しました
「違う、あなた有希じゃない。有希なら、ここは何もなかったですわと答えるはずよ!」
そこで、曜子が大きくため息をつきながら委員長の肩を叩きました
「決まってんじゃん、ご開通しちゃったから、人も変わったのよ、大人の階段のぼっちゃっただけよ」
すると、有希が曜子の方を見て言いました
「全部そういう方向にしか考えられないって、さかりのついた雌猫並みよね、そういうんじゃないから、あたしの場合」
「!」
今度は曜子が、三歩ほど後ろに退がりました
「うそ、有希が口ごたえした、この子不良化してる!」
そこに今度は、由奈が近づいて委員長と曜子の言いました
「家庭の事情とかってのもあるしさ、突っ込むのやめなよ、いいじゃん少しくらい悪ぶっても、まああたしに言わせたら半グレくらいにしか見えないけど」
そこで、有希がバンと机を叩いて大きな声で言いました
「あー、だから学校来たくなかったんだ! くそ、あの馬鹿姉貴のせいで!」
「?」
この謎の叫びにクラスにいた全員が首を傾げました
ここで、有希に質問をしたのはあたしでした
「ねえ、言える範囲で構わないからさ、事情説明してよ。いきなり肩まであった髪バッサリ切って、ピアスの穴まであけて登校したら、みんな何かあったと思うわよ」
有希が、大きくため息をついて言いました
「ちょっとさ、人間不信になっただけよ」
「?」
もちろんこれで理解できるはずありませんから、あたしは首をものすごく傾けました
その様子を見て、有希がしかたないと言った感じで話し始めました
「親父の田舎に帰ってたんだよ、そしたらさ村の行事とかで、海岸で障害物レースみたいのがあったのよ、二人一組で参加できるって聞いて、姉貴があたしと一緒に出たのよ」
「ほおほお」
いつの間にかとなりに来ていた奈々が、まるで探偵のように顎に手を当て有希の方に身を乗り出して言いました。いつもならだれかが突っ込むのですが、この時は全員有希の話が聞きたかったようで、奈々は無視されました
「そんでさ、なんかその障害ってのがむちゃくちゃで、あたし髪の毛思いっきりセメントくっついたままゴールさせられて、結局何やっても取れなかったから」
そこで、有希は右手でチョキを作り髪を切る仕草をしました
「ふむふむ、有希はその田舎のイベント主催者に怒ってグレちゃったと…」
奈々が言いましたが、有希はびしっと否定しました
「その程度で済めば良かったわよ」
「まだ続きがあるのね」
あたしが聞くと有希はうなずきました
「そんでさ、レース2着だったのよ。その賞品がね、ペアのピアス、それもスワロフスキーの」
「まじ、それやばくね、かなりの値段するんじゃね?」
由奈が目を丸くして言いました
「そうよ、高そうだったのよ、だからあたしは喜んで耳ピーの穴をすぐにあけたのよ」
一同が「おお」と頷きました
「そしたらさ、次の日に姉貴が、ピアス二組ともメルカリに出して売りやがったのよ! しかも、売り上げあたしに一銭も寄越さないんだよ! あんな奴家族じゃないわ!」
有希の周りにいた全員が、有希の肩に手を置き大きく頷きました
「お姉さんに天罰が下りますように」
委員長がそう言ったとき予鈴が鳴りました
こうして、二学期初日のヒロインの座は有希がさらっていったのですが、なにかみんな食い足りなさそうな顔をしていたのは、本人には内緒なのでした