ノーカウント

文字数 1,147文字

お昼休み、あたしは仲良しの奈々と机を向かい合わせてお弁当を食べてました

あたしの今日のお弁当は、玉子焼きとミートボール、あとプチトマトがおかずです

奈々のお弁当は、サンドイッチでした

奈々があたしのお弁当を見て言いました

「いいなあ、ご飯だとおかずいっぱいで」

「えー、三種類しかないよ、手抜きだよ、おかあさん」

「あたしのサンドイッチ全部チーズとハムだもん、飽きるよ」

そこであたしは、ミートボールを一個箸に刺して、奈々の口の前に差し出しました

「じゃあ特別」

「やったー!」

奈々は、ぱくっと一口でそれを口に入れたのですが、口の端にトマトソースがくっついてしまいました

「あーあ、ちょっと待ってね、拭いてあげる」

あたしはティッシュを取り出して、奈々の口の端を拭こうと顔を近づけました

その時でした

「あはは、それでね委員長が~」

クラスメートの由美と曜子が何か話し込みながら教室に入って来たのですが、その左側にいた由美の腰が、中腰になったあたしの腰とぶつかったのです

「あ…」

バランスを崩したあたしの顔は、そのまま奈々に近付き…

「!」

目の前に真ん丸に見開かれた奈々の目がありました

そして、あたしの唇には、ふにゃっとした感触…

こ、これって、もしや…

ものすごいスピードで奈々が後ろに下がっていき、両手で口を押えました

その2秒後、奈々の目からポロポロと涙が落ち始めたのでした

「な、奈々、今あたしたち…」

あたしが言いかけると、奈々が泣きながら言いました

「初めてらったのにい~~」

少し舌が足りていないなとか思いながら、奈々の言葉でしっかり確認しました

やっぱり唇と唇が合わさっていたみたいです

二人の様子に驚いて由美と曜子がこっちをぽかんと見ています

あたしは慌てて奈々に近付き、ガシッとその身体を抱きしめました

「お、落ち着いて奈々、た、たぶん今のは…」

その時、自分がぶつかったせいで起きた事の重大さに気付いた由美が言いました

「ノーカウント! 今のキスじゃないから!」

あたしも、反射的にこくこくと頷きました

そしてその瞬間気付きました

あたしも初めてじゃん!

あたしは奈々の手を引き、水飲み場に小走りで行くと、いっせーのでジャバジャバ唇を洗い続けました

二人は口の中で「ノーカウント、ノーカウント」と呟きながら…

でも、その日の夜、ベッドに入ってから、あたしは自分の唇を触りながらこう言ったのです

「別に一回でもいいか…」

実はこの夜、奈々も同じようにお風呂の中でこう言ってそうです

「変な男の人とするより良かったかな、一回目…」

女子の心って、実は結構フレキシブルなのですよ、えへ
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