卒業旅行 #和煦

文字数 344文字

「ぽかぽか陽気で良かったね」
 道端に残る僅かな雪を見ていたら季節が移ろう実感が湧いてくる。いつの日かきっとこの日を振り返るだろう。

 旅の始め、電車の窓から徐々に家々がまばらになっていく。そんな様子に感傷的になっていると突っ込みが入った。ふざけて変顔で写真を撮っては大笑いし、たわいもないことで盛り上がり、夜はこどものように枕投げをして はしゃいだ。
 女子四人の小旅行。

 あの日泣いたことも、あの日怒ったことも、あの日愚痴ったことも、振り返るのはもっと後でいい。
 新しい春にはそれぞれの道の扉を開く。簡単に会えなくなることも分かっているから、めいっぱい笑いあった。

「元気でね」と、お互い手を振りあう。
 ゆるやかに温かみを含んだ雪解けの匂いが立ち込める中、皆のあたたかな笑顔が春に咲いていた。
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