エンゼル達
文字数 4,053文字
「無事に帰還、といって良いのかね」
残す時間、僅か45分。
パイオニア号に、マリオンとガイが帰還した。出迎えたアズが最初に言った言葉がそれだ。
「ショウ・シャンがエンゼリアに取り残されている。歴史の教科書とやらはマリオンが持ってきたが」
ガイが険しい表情で、小型船からデッキに降り立つ。続いて青ざめたマリオンが飛び降り、バッグから分厚い教科書を取り出した。
「マリオン…」
気づかわしげに近づいてきたパイにそれを渡すと、マリオンは無言で歩き去る。
「エンゼリアから脱出して、いいんだよな」
ガイの広い肩に手を置いて、確認するようにアズが言った。
ゆっくりとガイは振り向く。茶の瞳に表情はない。
「脱出するからな」
きっぱりとアズが宣言した。
マリオン、と呼びかけながらパイが彼女の後を追ってゆく。
そのよく締まった健康的なお尻を見送りながら、ガイは吹っ切れない顔をする。
**
細い首筋を見上げて、ショウ・シャンは体を固くした。
片腕を軽く掴まれている。本当に軽くだ。ショウが逃げたりしないことを知っているかのように。
見覚えのある、マンションのエントランス。
「魔法でも何でもない。ここはエンゼリアだ。僕は思い通りに体を移動させることができる」
一瞬前まで、商店街の通りにいたのだ。
だが今、二人はマンションのエントランスに立っている。
行こう、と静かに言い、ショウから手を放してデューカはエレベーターのボタンを押した。すっと開いた扉の中に入り、ちらっとショウを振り向く。ショウはゆっくりと後から入った。そして、じっとデューカの目を見上げた。
「君がどうして僕の元に残ったのかは知らない」
デューカは言った。
「君はもうマリオンではない。だが、またマリオンにすべく記憶を与えることはできる」
ティン。
滑らかにエレベーターの扉が開く。4F。
優雅な動きでデューカはエレベーターを降りる。後ろからショウがついてこようがこまいが構わないとでも言うかのように、振り向きもせず。
その背中を追って、ショウは速足で歩く。
マンションの部屋に入る二人。
痩身の背中を見ながら、ショウが静かに言った。
「わたしは、あなたをずっと前から知っていたわ」
台所に入り、インスタントコーヒーを手に取ったまま、デューカは動きを止めた。
その横顔を見つめながらショウは続ける。
「ずっと、ずっと前に会ったことがあるの。あなたは、わたしの」
一息入れて、ショウは言った。微かな声だった。デューカに届いたかどうか分からない。
王子様。わたしの王子様、だったの。ずっと、ずっと前から。
無言で動きを止めていたデューカが、まるでスイッチを切り替えたかのようにまた動き出した。洗練された美しい動きでインスタントコーヒーをさじですくい、一つ目のマグに入れ、そして始めて振り向いた。
「飲む」
優し気な微笑みが口元に刻まれている。
テーブルをはさみ、コーヒーを飲んでいると軽い混乱に陥った。
マリオンと、優しくて賢いお兄ちゃん。どこに行っても輝いている。いつでも非の打ちどころのない笑顔で座っている。それがマリオンのお兄ちゃん。
デューカはくつろいでいる。
片手でマグを持ち、片手でエンゼリア新聞を読んでいる。細い黒縁の眼鏡を今だけつけている。
(お兄ちゃん。王子様。ああ……)
ショウは頭痛を覚えた。コーヒーの水面に映る自分はマリオンではない。ショウ・シャンの顔だ。
「しっかりしたまえ」
新聞から目を離さずに、デューカが言った。
はっと、ショウはデューカを見た。
「君はマリオンではない。僕にとって君は客人だ。夢から覚めたまえ。そして考えなさい」
ばさり、と新聞をテーブルに置き、デューカは眼鏡を外した。夜空の闇のような目がショウを見据えている。
「君に選択肢をあげよう」
マグを置き、デューカは立ち上がった。まだマグを手にしているショウを振り向き、言う。
「ついておいで」
でゅーか。
ナニヲシテイル、ノダ?
でゅーか、ソノヒツヨウハ、ナイ。
一瞬、デューカは立ち止まり、額をおさえる仕草をした。
はっとしてショウは相手の前に回り、その表情を見上げる。
眉間にしわを寄せ、苦痛をこらえるような顔をしていたが、すぐにデューカはいつもの静かな様子を取り戻した。自分を心配してくれているショウを見て、微かに口元をゆがめる。
デューカがショウを招き入れたのは、彼の書斎だった。
落ち着いた茶で統一された家具。どっしりとした本棚にぎっしりと書物が詰まっており、使い勝手の良さそうな書き物机と安楽そうな椅子が見えた。
「入りたまえ」
ショウを中に入れると、デューカは扉を閉めた。すると部屋はほの暗くなり、茶のカーテンの隙間から入ってくる外の光が太いラインとなって細かい埃を照らした。
ショウはもの珍しそうにあちこち見回していたが、物音がしたので振り向いた。
重たそうな本棚が横にスライドし、ゆっくりと黒い扉が姿を現した。艶消しの黒を分厚く塗られたその扉は、奇妙に不気味で不吉に見える。完全に本棚が動きを止めると、デューカは扉に手をかざした。ゆるゆると音もなく扉はスライドして、ぽっかりとした暗黒の入り口が現われる。
細い階段になっているらしく、デューカは足を踏み込ませた。振り向かずに言う。
「ついておいで。エンゼリアの秘密を見せてあげる」
赤いランプに照らされて、彼女たちは、いた。
筒形の透明な棺に入れられて、一糸まとわぬ姿で瞳を閉じ、立ち尽くしている。
足がすくんで動けなくなったショウ・シャンをちらりと見ると、デューカは彼女たちの立つ円陣の中央に歩き出る。
コポコポコポ。水音が響く。
円筒形の棺の中は液体に満ちていた。彼女たちの生命活動に必要なものなのだろう。
棺の一つに手をかけると、独り言のようにデューカは言った。
「エンゼル」
ショウはがくがくする足で立ち続けている。
「エンゼル達。これが、歴代のマリオンだ」
わかったかい、とデューカは振り返る。どさり、とショウはその場に崩れた。流れ落ちる汗の間から、奇怪な部屋を眺めている。
まだ生きている、でも動かない少女たち。
「記憶を移植するのは、なかなか難しかった」
コツコツと少女たちの間を歩きぬけながらデューカは言う。教壇に立ち、生徒を教える教師のように。
「最初は壊れてしまった」
マリオンの精神が、と言ってデューカはまた別の棺に手をかける。
「うまくいったかと思ったら、また壊れてしまったりした。難しいことなんだよ、記憶を移植するのは」
眠っているかのように柔らかくまつげを伏せた、あどけない顔たち――。
「悲しかった。目の前で僕のマリオンが壊れてゆくんだ。その度に僕は次のマリオンを見つけなくてはならなかった」
涙をためた瞳でショウが見上げている。軽く頷いて見せる、デューカ。
赤毛の華奢な少女。
ブロンドの浅黒い肌の少女。
茶色い髪をカールさせた少女。
ふくよかな体をした少女、すらりと足の長い少女、褐色の肌の少女――。
「見た目はね、どうにでもなるんだ」
あとで変えることができるからね、と、何でもないことのようにデューカは言う。
憐れむように目の前の小柄で痩せた、そばかすの少女を眺め、デューカは微笑む。
「君だって、マリオンのような姿が欲しいはずだ。そうじゃないのか」
ものを言わずに体を震わせているショウに、デューカはちょっと苦笑する。
やがて彼は少女たちの中央に戻り、優雅な動きで両腕を広げて見せた。愛おしそうに彼女たちを見回し、歌うように滑らかな声で言った。
「彼女たちはね、エンゼルなんだ。エンゼリアを守る僕の大事な天使」
ひっ、とショウは悲鳴をあげた。
「だけどもう失敗はしない。君はマリオンになれるだろう。このエンゼルたちが守る、エンゼリアの王女に」
よたよた、とショウは立ち上がった。壁にもたれながら、何とか体を起こす。
「ま、待って、待って、待っ」
泳ぐように手を突き出し、その手が壁の一部に触れた時、ショウは唐突に倒れた。
壁がくるりと回ったのである。
悲鳴を上げながらショウは、別の部屋に転がり込んでいた。
とても小さい、正方形の、奇妙な赤い部屋に。
「や」
その部屋の中央には、黄金の玉座がしつらえてあり、その上には透明な箱が乗っていた。
「いや、い、いや」
無数の線や管がつながれたその箱には、少女たちの棺と同じような液体がみっちりと詰め込まれている。
そして、その液体の中央に、線や管につながれた、奇怪なものが浮いていた。
様々な色、細さ、形状の線は部屋の天井につながっている。
部屋は静寂の中にあった。
こつん、と背後で音がしてショウは振り向いた。
エンゼル達の部屋の赤い照明を背後に浴び、デューカが立っている。その影は奇妙に伸びていた。
人間の脳と思わしき「それ」は、ただ静かにそこにある。
細い、冷たい、綺麗な指が伸びてきて、ショウの肩に触れた。
ショウの肩に手を乗せながら、デューカは言った。
「紹介しよう」
「え」
ショウはぎくりと体をこわばらせた。しかしデューカは抱き寄せた手に力を籠め、ショウの動きを封じた。
「お父さま。……父だよ」
ショウ・シャンはゆっくりを顔を上向け、美しいデューカの顎の線を見つめた。
父。レイ・ホワイト。これが。
「そんな………」
ショウは震える声で呟き、目をぎゅっと閉じて、デューカの体に身を寄せた。
残す時間、僅か45分。
パイオニア号に、マリオンとガイが帰還した。出迎えたアズが最初に言った言葉がそれだ。
「ショウ・シャンがエンゼリアに取り残されている。歴史の教科書とやらはマリオンが持ってきたが」
ガイが険しい表情で、小型船からデッキに降り立つ。続いて青ざめたマリオンが飛び降り、バッグから分厚い教科書を取り出した。
「マリオン…」
気づかわしげに近づいてきたパイにそれを渡すと、マリオンは無言で歩き去る。
「エンゼリアから脱出して、いいんだよな」
ガイの広い肩に手を置いて、確認するようにアズが言った。
ゆっくりとガイは振り向く。茶の瞳に表情はない。
「脱出するからな」
きっぱりとアズが宣言した。
マリオン、と呼びかけながらパイが彼女の後を追ってゆく。
そのよく締まった健康的なお尻を見送りながら、ガイは吹っ切れない顔をする。
**
細い首筋を見上げて、ショウ・シャンは体を固くした。
片腕を軽く掴まれている。本当に軽くだ。ショウが逃げたりしないことを知っているかのように。
見覚えのある、マンションのエントランス。
「魔法でも何でもない。ここはエンゼリアだ。僕は思い通りに体を移動させることができる」
一瞬前まで、商店街の通りにいたのだ。
だが今、二人はマンションのエントランスに立っている。
行こう、と静かに言い、ショウから手を放してデューカはエレベーターのボタンを押した。すっと開いた扉の中に入り、ちらっとショウを振り向く。ショウはゆっくりと後から入った。そして、じっとデューカの目を見上げた。
「君がどうして僕の元に残ったのかは知らない」
デューカは言った。
「君はもうマリオンではない。だが、またマリオンにすべく記憶を与えることはできる」
ティン。
滑らかにエレベーターの扉が開く。4F。
優雅な動きでデューカはエレベーターを降りる。後ろからショウがついてこようがこまいが構わないとでも言うかのように、振り向きもせず。
その背中を追って、ショウは速足で歩く。
マンションの部屋に入る二人。
痩身の背中を見ながら、ショウが静かに言った。
「わたしは、あなたをずっと前から知っていたわ」
台所に入り、インスタントコーヒーを手に取ったまま、デューカは動きを止めた。
その横顔を見つめながらショウは続ける。
「ずっと、ずっと前に会ったことがあるの。あなたは、わたしの」
一息入れて、ショウは言った。微かな声だった。デューカに届いたかどうか分からない。
王子様。わたしの王子様、だったの。ずっと、ずっと前から。
無言で動きを止めていたデューカが、まるでスイッチを切り替えたかのようにまた動き出した。洗練された美しい動きでインスタントコーヒーをさじですくい、一つ目のマグに入れ、そして始めて振り向いた。
「飲む」
優し気な微笑みが口元に刻まれている。
テーブルをはさみ、コーヒーを飲んでいると軽い混乱に陥った。
マリオンと、優しくて賢いお兄ちゃん。どこに行っても輝いている。いつでも非の打ちどころのない笑顔で座っている。それがマリオンのお兄ちゃん。
デューカはくつろいでいる。
片手でマグを持ち、片手でエンゼリア新聞を読んでいる。細い黒縁の眼鏡を今だけつけている。
(お兄ちゃん。王子様。ああ……)
ショウは頭痛を覚えた。コーヒーの水面に映る自分はマリオンではない。ショウ・シャンの顔だ。
「しっかりしたまえ」
新聞から目を離さずに、デューカが言った。
はっと、ショウはデューカを見た。
「君はマリオンではない。僕にとって君は客人だ。夢から覚めたまえ。そして考えなさい」
ばさり、と新聞をテーブルに置き、デューカは眼鏡を外した。夜空の闇のような目がショウを見据えている。
「君に選択肢をあげよう」
マグを置き、デューカは立ち上がった。まだマグを手にしているショウを振り向き、言う。
「ついておいで」
でゅーか。
ナニヲシテイル、ノダ?
でゅーか、ソノヒツヨウハ、ナイ。
一瞬、デューカは立ち止まり、額をおさえる仕草をした。
はっとしてショウは相手の前に回り、その表情を見上げる。
眉間にしわを寄せ、苦痛をこらえるような顔をしていたが、すぐにデューカはいつもの静かな様子を取り戻した。自分を心配してくれているショウを見て、微かに口元をゆがめる。
デューカがショウを招き入れたのは、彼の書斎だった。
落ち着いた茶で統一された家具。どっしりとした本棚にぎっしりと書物が詰まっており、使い勝手の良さそうな書き物机と安楽そうな椅子が見えた。
「入りたまえ」
ショウを中に入れると、デューカは扉を閉めた。すると部屋はほの暗くなり、茶のカーテンの隙間から入ってくる外の光が太いラインとなって細かい埃を照らした。
ショウはもの珍しそうにあちこち見回していたが、物音がしたので振り向いた。
重たそうな本棚が横にスライドし、ゆっくりと黒い扉が姿を現した。艶消しの黒を分厚く塗られたその扉は、奇妙に不気味で不吉に見える。完全に本棚が動きを止めると、デューカは扉に手をかざした。ゆるゆると音もなく扉はスライドして、ぽっかりとした暗黒の入り口が現われる。
細い階段になっているらしく、デューカは足を踏み込ませた。振り向かずに言う。
「ついておいで。エンゼリアの秘密を見せてあげる」
赤いランプに照らされて、彼女たちは、いた。
筒形の透明な棺に入れられて、一糸まとわぬ姿で瞳を閉じ、立ち尽くしている。
足がすくんで動けなくなったショウ・シャンをちらりと見ると、デューカは彼女たちの立つ円陣の中央に歩き出る。
コポコポコポ。水音が響く。
円筒形の棺の中は液体に満ちていた。彼女たちの生命活動に必要なものなのだろう。
棺の一つに手をかけると、独り言のようにデューカは言った。
「エンゼル」
ショウはがくがくする足で立ち続けている。
「エンゼル達。これが、歴代のマリオンだ」
わかったかい、とデューカは振り返る。どさり、とショウはその場に崩れた。流れ落ちる汗の間から、奇怪な部屋を眺めている。
まだ生きている、でも動かない少女たち。
「記憶を移植するのは、なかなか難しかった」
コツコツと少女たちの間を歩きぬけながらデューカは言う。教壇に立ち、生徒を教える教師のように。
「最初は壊れてしまった」
マリオンの精神が、と言ってデューカはまた別の棺に手をかける。
「うまくいったかと思ったら、また壊れてしまったりした。難しいことなんだよ、記憶を移植するのは」
眠っているかのように柔らかくまつげを伏せた、あどけない顔たち――。
「悲しかった。目の前で僕のマリオンが壊れてゆくんだ。その度に僕は次のマリオンを見つけなくてはならなかった」
涙をためた瞳でショウが見上げている。軽く頷いて見せる、デューカ。
赤毛の華奢な少女。
ブロンドの浅黒い肌の少女。
茶色い髪をカールさせた少女。
ふくよかな体をした少女、すらりと足の長い少女、褐色の肌の少女――。
「見た目はね、どうにでもなるんだ」
あとで変えることができるからね、と、何でもないことのようにデューカは言う。
憐れむように目の前の小柄で痩せた、そばかすの少女を眺め、デューカは微笑む。
「君だって、マリオンのような姿が欲しいはずだ。そうじゃないのか」
ものを言わずに体を震わせているショウに、デューカはちょっと苦笑する。
やがて彼は少女たちの中央に戻り、優雅な動きで両腕を広げて見せた。愛おしそうに彼女たちを見回し、歌うように滑らかな声で言った。
「彼女たちはね、エンゼルなんだ。エンゼリアを守る僕の大事な天使」
ひっ、とショウは悲鳴をあげた。
「だけどもう失敗はしない。君はマリオンになれるだろう。このエンゼルたちが守る、エンゼリアの王女に」
よたよた、とショウは立ち上がった。壁にもたれながら、何とか体を起こす。
「ま、待って、待って、待っ」
泳ぐように手を突き出し、その手が壁の一部に触れた時、ショウは唐突に倒れた。
壁がくるりと回ったのである。
悲鳴を上げながらショウは、別の部屋に転がり込んでいた。
とても小さい、正方形の、奇妙な赤い部屋に。
「や」
その部屋の中央には、黄金の玉座がしつらえてあり、その上には透明な箱が乗っていた。
「いや、い、いや」
無数の線や管がつながれたその箱には、少女たちの棺と同じような液体がみっちりと詰め込まれている。
そして、その液体の中央に、線や管につながれた、奇怪なものが浮いていた。
様々な色、細さ、形状の線は部屋の天井につながっている。
部屋は静寂の中にあった。
こつん、と背後で音がしてショウは振り向いた。
エンゼル達の部屋の赤い照明を背後に浴び、デューカが立っている。その影は奇妙に伸びていた。
人間の脳と思わしき「それ」は、ただ静かにそこにある。
細い、冷たい、綺麗な指が伸びてきて、ショウの肩に触れた。
ショウの肩に手を乗せながら、デューカは言った。
「紹介しよう」
「え」
ショウはぎくりと体をこわばらせた。しかしデューカは抱き寄せた手に力を籠め、ショウの動きを封じた。
「お父さま。……父だよ」
ショウ・シャンはゆっくりを顔を上向け、美しいデューカの顎の線を見つめた。
父。レイ・ホワイト。これが。
「そんな………」
ショウは震える声で呟き、目をぎゅっと閉じて、デューカの体に身を寄せた。