第3話 石与瀬観光
文字数 1,966文字
翌朝、わたしは石与瀬の観光地を巡ることに決めた。目的地の探索が一段落し、スケジュールに余裕ができたからだ。清々しい朝の光が街を包み込み、鳥たちのさえずりが心地よく響く中、わたしはバスに乗り込んだ。
バスが町並みを抜け、海岸線に差し掛かると、青い空と海が一体となった壮大な景色が広がっていた。心が奪われるような美しさに、思わずため息が漏れた。
岬に到着すると、目の前に白く高くそびえる灯台が現れた。青空に映え、真っ白な壁面が太陽の光を反射して眩しく輝いていた。灯台の前に立ち、その威風堂々とした姿を見上げると、自然と期待感が胸に広がり、思わず壁面に抱きついてしまった。コンクリートのひんやりとした感触が、どこか心を落ち着けるような心地よさをもたらした。
らせん階段を一段一段登ると、吹き付ける海風が心地よく髪を揺らし、潮の香りが風に乗って漂ってきた。自然の美しさを全身で感じる瞬間だった。灯台の頂上にたどり着くと、果てしなく広がる青い海がキラキラと輝き、その景色がわたしの心をしっかりとつかんで離さなかった。
目を閉じて深呼吸をすると、胸に溜まっていた何かが、海風に乗って少しずつ消えていくような気がした。心が穏やかになり、日々の喧騒から解放されたような感覚に包まれた。
灯台からの眺望を楽しんだ後、わたしは再びバスに乗り、海岸線に沿って進んだ。やがて、バスは岬の北に位置する「銀華崎シーパラダイス」に到着した。
シーパラダイスは、周辺海域に生息する魚や生物を間近で観察できる水族館と、アザラシやアシカ、イルカの展示を中心としたエリアで構成されており、特にアシカとイルカのショーが人気を博していた。
わたしはワクワクしながらショーの会場に向かった。アシカたちが軽快にボールを投げ合ったり、飼育員と漫才のような滑稽なやりとりをしていて、笑いが絶えない。
そして、イルカたちが華麗に跳ね上がり、見事なチームワークでパフォーマンスを繰り広げると、観客のボルテージが最高潮に達する。跳ね上げられた水しぶきが服にかかってしまうアクシデントもあったけれど、心の底から楽しむことができた。
ショーを堪能した後、わたしはお腹が空いていると気づき、施設内のレストランへ足を運んだ。店員さんにおすすめを訊ねてみると、海鮮、穴子天ぷら、ウニとイクラとホタテの三種類のミニ丼が乗った豪華な御膳を勧められた。
「それっ、それにします!」
運ばれてきた料理を見て、わたしは鮮やかな色彩に目を見張った。刺し身は艶やかで、見るからに新鮮だ。口に運ぶと、滑らかな舌触りと共に甘みが広がり、思わず笑みがこぼれた。穴子の天ぷらは、衣がさくさくで、身はふわふわで絶品だった。
(おいしい……。これは大勝利!)
料理を味わいながら、心も体も満たされていくのを感じた。
食事を終えた後、わたしは再びバスに乗り、石与瀬駅へと向かった。夕方十八時ちょうどの列車に乗ってこの地を去る予定だった。
バスに揺られながら、わたしはただ景色を眺めていた。ふとした瞬間、昨日の出来事が頭をよぎった。脳裏には昨日の彼の姿と声が鮮烈に浮かび上がっていた。
(なんで気になるのかな? 昨日、あんなに酷いことを言われたのに……)
印象的で美しすぎる顔立ちと、その瞳の奥に宿る冷たい何か。処理できない意味不明な感情に戸惑い、振り払おうとするが、容易ではなかった。
駅に降り立ったわたしは、なぜか石御台公園へと向いていた。
(何を期待しているの? あんな人のことなんて、別にどうだっていいじゃない。もし、また会ったとしても、いったい何を話せばいいっていうの?)
心には得体のしれない何かが渦巻いていた。わたしは自分の中の不可思議な感情と向き合おうとしていた。
公園に辿り着いたわたしの視線は、無意識に彼の姿を求めてさまよっていた。木漏れ日の下、ベンチに腰掛ける人々や楽しそうに話す家族連れも、わたしの目には入っていなかった。
やがて歩き疲れたわたしは、展望台のベンチに腰掛け、それからずっと海を眺め続けた。夕方の柔らかな光が海面をオレンジ色に染め、その輝きが心に染み込んでくる。
(どうしてこんなに気になるのだろう……)
考えることさえままならないほど、わたしの頭は彼のことでいっぱいになっていた。そんな自分が理解できなくて、答えのない迷路に迷い込んでいるような気分だった。
どれほど時間が過ぎただろう。日は傾き、空が紅く色づき始める。周囲の人の気配も少なくなり、夕暮れ時が近づいていた。
静かな空間で、わたしは胸の中に広がる寂しさを感じながら、ただ夕陽に染まる海を見つめ続けた。その時、ふとした瞬間に、わたしは彼の姿を見つけることができるかもしれないと思いながら、海の輝きをじっと見つめ続けた。
そんな時だった。
バスが町並みを抜け、海岸線に差し掛かると、青い空と海が一体となった壮大な景色が広がっていた。心が奪われるような美しさに、思わずため息が漏れた。
岬に到着すると、目の前に白く高くそびえる灯台が現れた。青空に映え、真っ白な壁面が太陽の光を反射して眩しく輝いていた。灯台の前に立ち、その威風堂々とした姿を見上げると、自然と期待感が胸に広がり、思わず壁面に抱きついてしまった。コンクリートのひんやりとした感触が、どこか心を落ち着けるような心地よさをもたらした。
らせん階段を一段一段登ると、吹き付ける海風が心地よく髪を揺らし、潮の香りが風に乗って漂ってきた。自然の美しさを全身で感じる瞬間だった。灯台の頂上にたどり着くと、果てしなく広がる青い海がキラキラと輝き、その景色がわたしの心をしっかりとつかんで離さなかった。
目を閉じて深呼吸をすると、胸に溜まっていた何かが、海風に乗って少しずつ消えていくような気がした。心が穏やかになり、日々の喧騒から解放されたような感覚に包まれた。
灯台からの眺望を楽しんだ後、わたしは再びバスに乗り、海岸線に沿って進んだ。やがて、バスは岬の北に位置する「銀華崎シーパラダイス」に到着した。
シーパラダイスは、周辺海域に生息する魚や生物を間近で観察できる水族館と、アザラシやアシカ、イルカの展示を中心としたエリアで構成されており、特にアシカとイルカのショーが人気を博していた。
わたしはワクワクしながらショーの会場に向かった。アシカたちが軽快にボールを投げ合ったり、飼育員と漫才のような滑稽なやりとりをしていて、笑いが絶えない。
そして、イルカたちが華麗に跳ね上がり、見事なチームワークでパフォーマンスを繰り広げると、観客のボルテージが最高潮に達する。跳ね上げられた水しぶきが服にかかってしまうアクシデントもあったけれど、心の底から楽しむことができた。
ショーを堪能した後、わたしはお腹が空いていると気づき、施設内のレストランへ足を運んだ。店員さんにおすすめを訊ねてみると、海鮮、穴子天ぷら、ウニとイクラとホタテの三種類のミニ丼が乗った豪華な御膳を勧められた。
「それっ、それにします!」
運ばれてきた料理を見て、わたしは鮮やかな色彩に目を見張った。刺し身は艶やかで、見るからに新鮮だ。口に運ぶと、滑らかな舌触りと共に甘みが広がり、思わず笑みがこぼれた。穴子の天ぷらは、衣がさくさくで、身はふわふわで絶品だった。
(おいしい……。これは大勝利!)
料理を味わいながら、心も体も満たされていくのを感じた。
食事を終えた後、わたしは再びバスに乗り、石与瀬駅へと向かった。夕方十八時ちょうどの列車に乗ってこの地を去る予定だった。
バスに揺られながら、わたしはただ景色を眺めていた。ふとした瞬間、昨日の出来事が頭をよぎった。脳裏には昨日の彼の姿と声が鮮烈に浮かび上がっていた。
(なんで気になるのかな? 昨日、あんなに酷いことを言われたのに……)
印象的で美しすぎる顔立ちと、その瞳の奥に宿る冷たい何か。処理できない意味不明な感情に戸惑い、振り払おうとするが、容易ではなかった。
駅に降り立ったわたしは、なぜか石御台公園へと向いていた。
(何を期待しているの? あんな人のことなんて、別にどうだっていいじゃない。もし、また会ったとしても、いったい何を話せばいいっていうの?)
心には得体のしれない何かが渦巻いていた。わたしは自分の中の不可思議な感情と向き合おうとしていた。
公園に辿り着いたわたしの視線は、無意識に彼の姿を求めてさまよっていた。木漏れ日の下、ベンチに腰掛ける人々や楽しそうに話す家族連れも、わたしの目には入っていなかった。
やがて歩き疲れたわたしは、展望台のベンチに腰掛け、それからずっと海を眺め続けた。夕方の柔らかな光が海面をオレンジ色に染め、その輝きが心に染み込んでくる。
(どうしてこんなに気になるのだろう……)
考えることさえままならないほど、わたしの頭は彼のことでいっぱいになっていた。そんな自分が理解できなくて、答えのない迷路に迷い込んでいるような気分だった。
どれほど時間が過ぎただろう。日は傾き、空が紅く色づき始める。周囲の人の気配も少なくなり、夕暮れ時が近づいていた。
静かな空間で、わたしは胸の中に広がる寂しさを感じながら、ただ夕陽に染まる海を見つめ続けた。その時、ふとした瞬間に、わたしは彼の姿を見つけることができるかもしれないと思いながら、海の輝きをじっと見つめ続けた。
そんな時だった。