第3話

文字数 876文字

 風呂上がり、そっと卒業アルバムを開く。
 何年ぶりだろ、これ開くの。
 少しカビくさくなってるような気もするくらいに忘れてた存在。
 クローゼットの奥から引っ張り出した。
 多分、クロくんは美術部かな?
 部活動紹介のページ、思ったとおりそこにいた。
 私が記憶していたように黒縁メガネの前髪多めくん。
 よーく見るとこの頃から可愛い顔してるんだからちゃんとしてたらモテてたのにね、高校時代も。
 会社帰りに見かけた、女の子たちに囲まれてるアイドルチックなあの姿に重ねてクスリと笑ってしまう。
 私は生徒会室、ど真ん中に座ってる。
 可愛げのない生徒会長、すましすぎじゃない?
 そして。
 バスケ部に目をやると。
 いた、ユウキ、だ。
 懐かしさに目を細める。
 今はもう胸が痛むことはないけれど。
 あの時は痛くて痛くて、もう胸が押しつぶされて死んじゃうんじゃないか、てくらいに苦しかったな。
 写真の中のユウキは一年生にしては大人びていて、身長も大きかったし顔もイケメンの部類で。
 あの時のまま懐かしい笑顔を浮かべている。

「彩未セーンパイっ!」

 2個下の知らない男の子に声をかけられたのは、高3の初夏。

「え、と?」

 誰だっけ?
 生徒会長をしていた私の周囲にはいないと思ったけれど。
 知り合いだったかな? と考え込む。

「オレ、牧田ユウキといいます、」

 ん、やはりハジメマシテだわ。

「突然ですが!! 彩未センパイって誰か付き合ってる人いますか?」

 付き合うとはアレですよね、つまり恋人とかそういう関係の人。

「いません」

 そんなもんに縁があればもうちょい私のスクール生活充実していて生徒会長なんていう面倒なもんやってません。

「やったー!! んじゃあ、考えて!オレと付き合うこと!」 
「は?!」
「取りあえず帰り、一緒に帰りましょう」
「え、ちょ、」 
「じゃ、また放課後にー!」

 人の話聞けないやつだわ!!
 嵐のような衝撃に呆然としていると最初からいたのかな?
 牧田ユウキくんを待っていたらしいそのお友達がペコリと私に一礼して彼を追いかけ去っていく。

―――あれ、思えばクロくんだったよなー。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み