第6話
文字数 1,544文字
「知らなかった、会社の近くにこんなとこあるの」
「穴場でしょ」
あれから会社の近くの小さなイタリアンレストランに案内された。
「黒木くんが女の子連れなんて珍しいな、彼女?」
「ちょ、高山さん、失礼ですよ、オレにこんな美人な彼女できるわけない」
飲んでたサングリア鼻から出そうになる。
高山さんは、この店のオーナーシェフさん、クロくんは時々ここで夜バイトしてるそうで。
「彩未センパイ、好きなの注文してね」
来てくれたのとお土産のお礼とか、お返しのが大きすぎでしょー!!
私が困ってるとお酒のつまみになりそうなものを何点かクロくんが注文してくれて、そして。
「あ、これ、どうぞ!」
「え、!」
手渡されたのはあの絵を絵はがきにしたもの、受付のとこで売ってたような。
嬉しい、これ買おうか迷ってて、でもクロくん待ってる間にもう片付けられてたから。
「あ、ねえ、買うよ、買わせて」
美味しいものまでごちそうになるんだもん、せめてこれくらいは。
「ダメです!! あの絵は売れちゃってセンパイにはあげられなくなっちゃったんでこっちしかないんですが来てくれたお礼です!!」
「何かねだっちゃったみたいでごめんね」
「んなことないっス!! 気にいってくれてすげー嬉しかったから」
生ビールを飲み干してご機嫌になってるクロくん。
個展では結構絵も売れたようで初めてにしては成功だったと嬉しそうで。
「夢はもっと大きなところで個展を開くこと」
と饒舌 に語ってくれた。
「そういえば彩未センパイが昨日来てたらユウキと鉢合わせしてたかも」「え?!」
「東京出てきたついでに観に来たーって。ま、多分普通に観に来てくれただけなんだけどね」
そ、か。
そういうさりげなく優しいところは変わってないか、良かった。
ユウキは東京出て来なかったのね、それすらも知らなかったな。
元気そうならそれで良かった。
思わず微笑むと。
「センパイ、まだ気になります? ユウキのこと」
「ううん、それはないな」
それはない、昔々の話だ、例えば今彼が結婚してたとしてとも祝福できるほどの。
「良かった、ユウキの話しして彩未センパイが寂しそうな顔したらオレ妬いてた」
ハハッて普通に笑ってるから私もそのまんま流したけど。
ん? あれ?
「ありがとうね、あんなにご馳走になっちゃって」
「いいの、いいの、来月のオレのバイト代から引かれるだけだし」
「え?!」
「嘘です、高山さんからのお祝いがほとんどですって」
わ、お祝いに乗っかってしまった。
多分困った顔が出てしまってたんだろう私に。
「なら、今度仕事帰りに来てください、大体オレ月曜日と水曜日は必ずいるんで、あ火曜日が定休日ですからね? 時々は金曜日もいたりしますんで!」
オレがいる時に、ですよー! と念押しされて。
「お言葉に甘えてお邪魔します、でも次はちゃんとお金払うからね」
「はい」
信号が青に変わって歩き出そうとした瞬間に腕を引かれた。
その矢先私の目の前を自転車が勢いよく横切ってった。
「あ、ぶなっ、ありがと、」
振り返るとものすごい近距離にクロくんの顔があって。
その近さに心臓が早なる。
「ちゃんと見ないとダメっすよ、センパイ。酔っ払ってんじゃないすか?」
一瞬緊張してしまった私とは正反対にニヤリと笑ったと思ったら。
「はい、渡りますよー!」
と私の手を握り歩き出す。
「ひ、一人で歩けるから」
と、その手を離そうとしたら。
「ダメ、すか?」
眉尻下げて悲しげに見つめてくる、もうう、その犬みたいな顔やめてー!
「、駅までだからね!」
「はいっ!!」
さっきとは打って変わって嬉しそうにはしゃぎながらスキップするように。
「早い、早い、ってー」
焦る私をケラケラ笑いながら引っ張ってく、どっちが酔っ払ってんのよ!!
「穴場でしょ」
あれから会社の近くの小さなイタリアンレストランに案内された。
「黒木くんが女の子連れなんて珍しいな、彼女?」
「ちょ、高山さん、失礼ですよ、オレにこんな美人な彼女できるわけない」
飲んでたサングリア鼻から出そうになる。
高山さんは、この店のオーナーシェフさん、クロくんは時々ここで夜バイトしてるそうで。
「彩未センパイ、好きなの注文してね」
来てくれたのとお土産のお礼とか、お返しのが大きすぎでしょー!!
私が困ってるとお酒のつまみになりそうなものを何点かクロくんが注文してくれて、そして。
「あ、これ、どうぞ!」
「え、!」
手渡されたのはあの絵を絵はがきにしたもの、受付のとこで売ってたような。
嬉しい、これ買おうか迷ってて、でもクロくん待ってる間にもう片付けられてたから。
「あ、ねえ、買うよ、買わせて」
美味しいものまでごちそうになるんだもん、せめてこれくらいは。
「ダメです!! あの絵は売れちゃってセンパイにはあげられなくなっちゃったんでこっちしかないんですが来てくれたお礼です!!」
「何かねだっちゃったみたいでごめんね」
「んなことないっス!! 気にいってくれてすげー嬉しかったから」
生ビールを飲み干してご機嫌になってるクロくん。
個展では結構絵も売れたようで初めてにしては成功だったと嬉しそうで。
「夢はもっと大きなところで個展を開くこと」
と
「そういえば彩未センパイが昨日来てたらユウキと鉢合わせしてたかも」「え?!」
「東京出てきたついでに観に来たーって。ま、多分普通に観に来てくれただけなんだけどね」
そ、か。
そういうさりげなく優しいところは変わってないか、良かった。
ユウキは東京出て来なかったのね、それすらも知らなかったな。
元気そうならそれで良かった。
思わず微笑むと。
「センパイ、まだ気になります? ユウキのこと」
「ううん、それはないな」
それはない、昔々の話だ、例えば今彼が結婚してたとしてとも祝福できるほどの。
「良かった、ユウキの話しして彩未センパイが寂しそうな顔したらオレ妬いてた」
ハハッて普通に笑ってるから私もそのまんま流したけど。
ん? あれ?
「ありがとうね、あんなにご馳走になっちゃって」
「いいの、いいの、来月のオレのバイト代から引かれるだけだし」
「え?!」
「嘘です、高山さんからのお祝いがほとんどですって」
わ、お祝いに乗っかってしまった。
多分困った顔が出てしまってたんだろう私に。
「なら、今度仕事帰りに来てください、大体オレ月曜日と水曜日は必ずいるんで、あ火曜日が定休日ですからね? 時々は金曜日もいたりしますんで!」
オレがいる時に、ですよー! と念押しされて。
「お言葉に甘えてお邪魔します、でも次はちゃんとお金払うからね」
「はい」
信号が青に変わって歩き出そうとした瞬間に腕を引かれた。
その矢先私の目の前を自転車が勢いよく横切ってった。
「あ、ぶなっ、ありがと、」
振り返るとものすごい近距離にクロくんの顔があって。
その近さに心臓が早なる。
「ちゃんと見ないとダメっすよ、センパイ。酔っ払ってんじゃないすか?」
一瞬緊張してしまった私とは正反対にニヤリと笑ったと思ったら。
「はい、渡りますよー!」
と私の手を握り歩き出す。
「ひ、一人で歩けるから」
と、その手を離そうとしたら。
「ダメ、すか?」
眉尻下げて悲しげに見つめてくる、もうう、その犬みたいな顔やめてー!
「、駅までだからね!」
「はいっ!!」
さっきとは打って変わって嬉しそうにはしゃぎながらスキップするように。
「早い、早い、ってー」
焦る私をケラケラ笑いながら引っ張ってく、どっちが酔っ払ってんのよ!!