第4話

文字数 1,102文字

 何度も断った、毎日のように。
 私のが年上だし、といえばたかが2個じゃん!
 受験生だし、というと絶対邪魔しない!
 何度も何度もユウキのグイグイに押されて付き合ってみることにしたのは夏の終わり。
 何度振っても翌日にはケロリとまた近寄ってくる彼に。
 誘われて行った夏祭りの帰り道。
 ハジメテのキス、手を繋いで。
 ユウキは私と違って明るくて一緒にいるとただただ楽しくて。
 いつの間にか私もそんなユウキが大好きになってた。
 でもそうしてユウキとの時間を大切にすればするほど。
 ああ、受験生だというのにドンドン成績は堕ちていく。
 その内に関係は少しずつ悪くなっていった。
 最初から東京の大学を志望していることはユウキも知ってたはずなのに。

「彩、地元残ってよ」

 楽しいデートの後で最後には必ず寂しそうにそういう話になる。
 流されてしまえば楽しいままだったかもしれないけれど。
 
「2年だよ、ユウキも東京来るって言ってたでしょ」

 そう、関東であっても東京ではない私の地元の半分以上は東京へと出ていってるので、ここではユウキも私も普通だったし同じような考え方だったんだけど。

「でも、オレ離れてんの無理だよ」
「電車で2時間だよ?毎月帰ってくるよ、私」

 ユウキは口を尖らせて毎月って、毎週じゃないんだ、オレに会わなくても彩は平気なんだ、と不貞腐れてた。
 そんなことないのにな、多分私の方がユウキに会いたいのにな、とわかってもらえないことに悲しくなってきた。

 私が受験に没頭してる間に、ユウキが寂しさを埋めるように同級生の女の子と仲良くなってることに気づいたのはもう合格が決まった頃。
 街で偶然二人で歩いてる姿を見かけて。

「彩、」

 焦りまくって繋いでた手を離して彼女を後ろに隠したユウキに。
 心の中で湧き出てくる黒い感情。
 
「ごめん、オレ」

 言いかけたユウキの言葉を握りつぶすように声を重ねた。

「私卒業するし、丁度いいんじゃない? 寂しくないね」

 泣きたかった、何で、って問い詰めて別れたくないとごねたかった、けれど。
 諦めがそれを上回って出た言葉。
 
「、何か、他人事ぽい、キツイね」

 ユウキが泣き出しそうな顔で苦笑して私に一礼して彼女と手を繋いで去っていった。
 唇噛み締めて私は振り向くことなく歩き出す。
 振り向いたらだらしない泣き顔見られちゃうかもしれないもん。
 私可愛くないな、キツイよな。
 何となく自分の性格は自覚してたけど、今日ほどキツイなと感じたことはなかった。
 大好きだったんだよ、多分私の方がね。

 苦い味が蘇ってきてパタンとアルバム閉じてまたクローゼットの奥へとしまい込む。
 もうちょっと言い方があっただろうに。
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