ネトラレ王国

文字数 1,310文字

アメリカにかつて存在した、ダンナも妻も貸し借りできまくるカルト教『オナイダ・コミュニティ』。かつて日本にも似たようなカルト宗教があったはずだ。今はどちらも存続していない。

誰の子であっても平等に愛せよ、と言いたいんだろうが、あいにく母のほうは子供のことを、目隠ししようと、その匂いだけで100パーセント嗅ぎ分けることができると言う(デズモンド・モリス著:『ウーマン・ウォッチング』p109より)。そのサインを、果たして母は無視し続けることができるのか?

わが子にこそ肩入れするのが親の心情。そのコミュニティーが存続していたところで、けっきょく『親の欲目』によって平等は崩れ去り、すべてのカルト同様、ひどい腐敗組織へと変貌していただろう。













以下引用元。

『性と暴力のアメリカ 理念先行国家の矛盾と苦悶』 鈴木 透著 中公新書 2006 p23,24


《≪これは、ジョン・ハンフリー・ノイズ(一八一一~八六)が、一八四八年にニューヨーク州北部に創った実験的共同体である。ノイズ自身は牧師であったが、次第にユニテリアニズム(キリスト教の父・子・聖霊の三位一体説、とりわけイエスの神性を否定し、神は単一であるとする考え)の合理主義や信仰復興運動、社会主義思想などから影響を受けるようになる。原罪を否定し、人間は完全たりうるとする、「パーフェクショニズム」(Perfectionism)なる思想を説きはじめ、五〇人ほどの仲間とともにこのコミュニティを設立する。
ここでは、自給自足の共同生活が営まれ、世間の常識からかけ離れた規範が導入された。多夫多妻制というべき複合婚である。オナイダ・コミュニティでは、男女の合意があれば不特定の相手との性交渉が許された。これが認められたのは、ノイズが性行為を純然たる子孫繁栄のための道具とはみなさず、人間同士の絆を高めると考えたからである。楽園を建設するなら、それは、自然な性的衝動が踏みにじられない、性の楽園でなければならないというわけだ。
また、ノイズは、「汝の隣人を愛せよ」というキリスト教の教えを忠実に実践するならば、すべての男女が互いに愛し合い、いわばあらゆる男性があらゆる女性と結婚しているような、また共同体全体が一つの家族であるような状態こそ、理想の社会であると考えていた。
オナイダ・コミュニティに対しては、当初激しい非難が浴びせられたが、人びとは計画的に出産したり、子育てを分担するなど、子孫繁栄と性的衝動の擁護とを両立させようとした。
その子の父親が誰かということは問題にされず、自分の子どもに対する独占欲を放棄することがメンバーには求められた。その点、オナイダ・コミュニティは決してフリー・ラブの実践の場ではなく、むしろ、「性の共産主義」の舞台であった(藤本茂生『アメリカ史のなかの子ども』)。
性交渉の相手を選ぶ際には、年長で、より信心深い相手が奨励されるなど、オナイダ・コミュニティでは、性交渉もまた、より完全な社会を実現する手段であった。現にオナイダ・コミュニティでは、より信心深いもの同士から、より完全な子孫をつくり上げるという、ある意味で"優生学的"な実験にまで取り組んでいる。≫》

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

あいうえお

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み