第136話 安上がり

文字数 761文字

 東京駅で適当に入ったレストラン。ウェイトレスはひとりだけ。日本人ではない。
 身振りで説明された。
 携帯でQRコードから注文しろ、と。

 老夫婦には大変なこと。
 出て行きたくなった。
 が、時代に順応していかなきゃ。 
 時間がかかったが、スパゲティとグラタンを注文した。早く頼まなきゃ、と思ったからサラダも飲み物もなし。
 全部単品だし、高いから水で我慢。

 でも、量が少ない。グラタンのエビはプリプリでたくさん入っていておいしかったが。
 夫のミートソースは、香辛料が強くて苦手なんだとか。全部食べたが。
 若い時、レストランでアルバイトしていた夫が言った。
 賄いメニューがうまかった、と。
 

 表のメニューは量が少なく物足りない。
 デザートを見ていたら……
 夫が立ち上がった。会計は私だ。夫はいまだに現金主義。

 甘いもの、食べたかったのに。
 じゃあ買って帰ろう。
 いつも人にあげるだけ。自分の口には入らない500年の伝統の伝説たくさんの羊羹。

 夫は仕事でこの袋を印刷していた。
 高いのに店頭には客がいっぱい。
 これ、いただいたら、こんなに高いってわかるだろうか?
 
 ⚪︎⚪︎やの羊羹……
 高〜い。

 年金暮らしの老夫婦は店の前をうろうろし、どうしても買えなかった。

 家に帰っても、甘いものが食べた〜い。
 そうだ、餅米があるはず。
 肉団子の餅米蒸しに使った残りがたくさん。
 物皆値上がりしているが、安いと思うのが米。餅米もいつも買ってある。それを研いで水に1時間ひたす。おこわメニューで炊く。 
 スーパーの袋入りのつぶあんは安いが十勝産。袋の裏のメニューの簡単おはぎ。
 ごはんは潰さなくていいし、丸めてあんをラップに広げて包むだけ。

 市販のおはぎは小さくなっていくが、我が家のは大きい。上品に作りたいのだけど。


【お題】 伝説の裏メニュー
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