第33話 必要なカード

文字数 1,362文字

【まえがき】

もう何も言いません。
ここから先は『ヤンマーニ♪』なBGMで脳内補完しながらお愉しみください。
っていっても、まだボーカルなしのインストです。



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「〝わたしのまえから消えなさい(糞喰らえ)っ〟‼」
 オレリーのセリフが通りを飛び越えラーキンズの耳に届くと、予想した通り、応えは銃撃という形で返ってきた。
 銃撃は先のそれをも上回る長さで浴びせられ、通りに開いた窓という窓の部材――ガラスと木枠――と、その周囲の外壁とを穿(うが)ち、あるいは(くだ)いた。

 その間、応接室は盛大な乱痴気騒ぎのような騒音に包まれることとなり、例えば部屋の主人(あるじ)である町長のような鉄火場を知らない者には生きた心地はしなかったろう。案の定、割れて飛び散った窓ガラスの破片やらを頭から被ることとなった町長は、心身ともに縮み上がって、膝を抱えて床の上に丸まってしまった。

「見事に〝状況〟は動きましたねー!」
 マルレーンが、部屋の中央で頭を低くしたままのバーニーに、少々〝宛て擦る〟ように言った。
 バーニーは動ずることなく、にっ、と笑ってみせる。
 そうして銃声がひと先ず鳴り止むと、その〝笑みを湛えたまま〟の法務官助手に、オレリーは訊いた。
「……それで、この〝状況〟を、いったいどうするつもり?」

「このゲームの〝ショーダウン(決着)〟で〝欲しい(ハンド)〟に必要なカードは三つ……」
 バーニーは傍目には自信に満ちた表情で、指折り数えて語り始めた。
「一つは〝町長を殺させない〟。二つ、〝俺たちが生き残る〟。そして三つめ……〝やつらを何とかする〟」
「その三つめは、いったいどうやって?」
 〝期待はしないが一応訊いてみる〟という口調のエミールが、ぼそりと口を挿んだ。
「まぁ、考え付くのは…――」
 話の腰を折られてもバーニーは笑って肩を竦めただけで、
「〝エンシーナスと保安官を黙らせる〟くらいか」 と、隊支給のSASSを握った両手を振って見せた。

 苦笑を返すばかりとなったエミールが()()すると、窓の外を窺っていたドクが割って入って言った。
「先ずは()()()()()()のために、一階に人員(ひと)配置した(おいた)方がいいんじゃないかな――」
 M2873ライフルのサイドハンマー(撃鉄)を起こすや、長大な銃身を割れた窓越しに向ける。
「仕掛けてきた」
 言って、引き金を引いた。狙いを定めるのに尋常な早さじゃない。躊躇など微塵もない。

 乾いた銃声が鳴り、窓外の、通りを突っ切ろうという二人組の保安官助手の先頭の方が(くずお)れた。後ろの一人は慌てて後退ってゆく。
 入れ替わりに、新手の数組が一階のエントランスに向けて前進してきた。
 そしてそれを援護する発砲が、再び暴風となって町長の家を襲った。ドクはすぐさま窓際を離れた。

 そんな銃撃の嵐の中、オレリーは窓際にすっくと立って、その手の(ウィーズリー)(ターナー)リボルバーで応射した。
 6発撃って三人の武器を弾き、三人の手足を貫く。
 尋常じゃない早さと精度だったが、それ以上に神懸っていたのは、乱れ飛ぶ銃弾の中でほとんど身動きすることなく、銃撃に爆ぜる窓際に立って()()を成したことだ…――。

 そんなものを目の当たりにしたバリーとバーニーは、口笛の一つも吹くことなく(……常の彼らならそうしたろう)、ただただ驚愕の目を見開くばかりとなっている。
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